7月に入り、本格的な夏の暑さが続く時期となりました。冷房などの光熱費が膨らみやすいこの季節や、夏のボーナス支給を経たタイミングは、現在の貯蓄額と今後の老後資金のバランスを客観的に見直す適期といえます。
定年や年金生活が視野に入る60歳代は、貯蓄の「答え合わせ」が気になる年代です。最新調査によると、金融資産保有額は単身世帯で1364万円、二人以上世帯で2683万円となっています。
ただし平均は一部の高資産世帯に引き上げられやすい数値のため、中央値や分布とあわせて確認しましょう。本記事では世帯別データを整理し、「長く働く」という老後不安への対策も掘り下げます。
1. 【60歳代・単身世帯】平均1364万円、中央値300万円
金融経済教育推進機構(J-FLEC)の調査によると、金融資産を保有していない世帯を含む60歳代単身世帯の金融資産保有額は平均値で1364万円、中央値で300万円でした。
- 金融資産非保有:30.4%
- 100万円未満:9.1%
- 2000万円~3000万円未満:5.5%
- 3000万円以上:15.6%
約3割が将来に備える金融資産を保有していない一方、3000万円以上を持つ人も15%を超えており、資産状況のばらつきが大きいことが分かります。
2. 【60歳代・二人以上世帯】平均2683万円、中央値1400万円
同じ調査では、金融資産を保有していない世帯を含む60歳代二人以上世帯の金融資産保有額は平均値で2683万円、中央値で1400万円でした。
- 金融資産非保有:12.8%
- 1000万円~1500万円未満:8.9%
- 1500万円~2000万円未満:8.0%
- 2000万円~3000万円未満:12.4%
- 3000万円以上:27.2%
二人以上世帯には夫婦のみの世帯以外も含まれますが、複数人の老後生活を支えると考えると、中央値1400万円は決して余裕のある金額とはいえない可能性があります。
2000万円以上を保有する世帯は、単身で21.1%、二人以上で39.6%でした。二人以上世帯では約4割に達する一方、単身では5人に1人程度にとどまります。「老後2000万円」は、多くの世帯にとってなお高いハードルだとわかります。
3. 貯蓄不安をやわらげる現実的なアプローチ。シニアの「長く働く」選択肢
貯蓄額に不安があるほど「できるだけ長く働く」選択が効いてきます。貯蓄を増やす効果と、取り崩し期間を短くする効果の両方が得られるからです。
理由は、老後の必要資金が「年間支出×老後の年数」で決まる点にあります。65歳でリタイアすれば老後は20年以上ですが、70歳まで働けば、その期間は5年分も縮みます。
たとえば年間の生活費の不足分が50万円の世帯なら、リタイアを5年遅らせるだけで、取り崩すべき資金を250万円も減らせる計算です。収入を得ながら資産の寿命も延ばせるわけです。
なお、雇用形態は正社員にこだわる必要はありません。パートや業務委託、短時間勤務など、無理なく続けられる形で問題ありません。重要なのは収入の多寡より「長く続けられるか」です。
実際に、総務省の統計では、2024年の65歳以上の就業者数は930万人と過去最多でした。65歳以上の就業率も25.7%となり、「65~69歳」「70~74歳」「75歳以上」の各年齢階級で過去最高となっています。
その意味で、自分の好きな仕事や、これまでの経験・強みを活かせる仕事を選ぶ視点が大切になります。やりがいを感じられる仕事であれば、結果的に就労期間が延び、老後の安心につながるでしょう。
4. まとめにかえて
60歳代の貯蓄は、単身で平均1364万円(中央値300万円)、二人以上で平均2683万円(中央値1400万円)でした。2000万円以上を貯めた世帯は限られ、不安を抱える人は少なくありません。
そこで効くのが「長く働く」という発想です。収入の確保と老後期間の短縮を同時に実現できるため、貯蓄額そのものへの不安をやわらげる現実的な一手になります。これまでの経験や知識を活かしつつ、無理のない範囲で働く選択肢を探してみてはいかがでしょうか。
5. 【監修者のコメント】この記事の総括とこれからの実務上の注意点
本記事で解説されている60代の貯蓄データは、ご自身のライフプランを検討するうえで有益な参考資料となります。
ニュースで報じられる『平均貯蓄額』や『老後2000万円』という特定の数字にとらわれ、現状を過度に悲観してしまう方もいるのではないでしょうか。
統計上の平均値は、一部の富裕層のデータによって実態より高く算出される傾向があります。
そのため、平均に届いていないからといって無理な節約に走ったり、内容を理解していない投資商品に手を出したりするのは避けるべきです。
老後の家計管理において優先すべきは、手元にある貯蓄額の多寡よりも、ご自身のペースで『長く働く』選択肢を持ち、毎月の赤字額を減らす工夫をすることです。
世間の数字に一喜一憂せず、手取りの範囲内に基本の生活費を収めるという基本を淡々と実践することが、将来のキャッシュフローを安定させる防衛策となります。
参考資料
柴田 充輝