老後資金への備えが気になり始める50歳代こそ、限られた時間のなかで非課税制度をどう活用するかが重要なテーマになっているといえるでしょう。

新NISAには2つの非課税枠があり、積立を中心に着実な資産形成を目指す方法もあれば、投資対象を広げて運用の幅を持たせる方法もあります。

本記事では、新NISAの2つの非課税枠の特徴とメリットをおさらいしたうえで、50歳から65歳まで積立投資を続けた場合の資産額の目安を紹介します。

あわせて、50歳代からの資産形成で押さえておきたい視点も確認していきましょう。

加藤 聖人
「50歳代からNISAを始めても遅くないか」というお悩みは意外と多いもの。実際にはこの世代こそ、口座数のデータからも資産形成に前向きな年代だとわかります。ご自身の状況と照らし合わせながら、今回の内容を読み進めていただければと思います。

1. 【新NISA】この記事の3つのポイント

  •  新NISAには「つみたて投資枠」「成長投資枠」の2つがあり、併用も可能
  •  50歳から65歳まで積立を続けた場合、利回り5%なら毎月5万円で1324万円に
  •  NISA口座数がもっとも多いのは実は50歳代。元証券マンが伝える活用のポイント

2. NISA、実は"50歳代"が主役?口座数の実態から見る資産形成のリアル

「NISAは20歳代・30歳代の若い世代が中心の制度」というイメージを持っている人は少なくないかもしれません。しかし、実際の口座数データを見ると、印象とは異なる実態が見えてきます。

金融庁「NISA口座の利用状況調査」によると、新NISA口座数を世代別に見た場合、もっとも多いのは50歳代です(2025年12月末時点)。

ちなみに、日本証券業協会「新NISA白書2024」によると、NISA制度がスタートした2014年当初は60歳代以上が口座数の過半数を占めていましたが、年々現役世代の利用が広がってきました。

では、なぜ現役世代のなかでも、特に50歳代の口座数が多いのでしょうか。

団塊ジュニア世代を含む50歳代は、他の世代よりも人口自体が多いという構造的な要因に加え、定年や老後資金への意識が高まりやすい年代であることも影響していると考えられます。

60歳代になると、退職金の受け取りをきっかけに投資余力が一時的に高まる一方、70歳代・80歳代以上になると、資産形成よりも資産の維持・取り崩しの段階に入るため、新たに口座を開設する動きは相対的に落ち着いていきます。

つまり、50歳代は「資産形成を積極的に行える、実質的に最後のタイミング」ともいえる年代です。

本記事のテーマである「50歳から65歳までの15年間の積立投資」は、まさにこの世代の実態に即したテーマといえるでしょう。

次の章から、新NISAの制度概要と、実際にどの程度の資産を準備できるのかを確認していきます。

3. 【新NISA】2つの非課税枠の特徴をおさらい

2024年1月に新設された「新NISA」では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの非課税枠が設けられています。

加藤 聖人
つみたて投資枠と成長投資枠、どちらを使うべきか悩む方は多いですが、まずはそれぞれの特徴を理解したうえで、ご自身の目的に合わせて使い分けることが大切です。

3.1 つみたて投資枠

  • 投資対象商品:金融庁の基準を満たした投資信託(手数料が低く、長期投資に適したもの)
  • 年間投資枠:120万円まで
  • 投資方法:積立

つみたて投資枠は、長期・分散・積立を前提とした非課税枠です。

投資対象は、金融庁の基準を満たした投資信託に限定されており、信託報酬などの手数料が低く、長期保有に適した商品が中心となっています。

年間の投資上限は120万円で、毎月コツコツ積み立てる運用が基本です。

価格変動を平準化しながら投資できるため、投資経験が浅い方や、老後資金づくりを目的とした資産形成に向いています。

相場のタイミングを細かく判断する必要がない点も、大きなメリットといえるでしょう。

同じ毎月積立でも、銀行預金と比べてどれくらい差が出るのか気になる方は、こちらの記事もご参考ください。
【新NISA】月3万円を20年続けたら将来いくらになる?「利回り5%で積立投資 VS 金利0.3%の銀行預金」で比較

3.2 成長投資枠

  • 投資対象商品:上場株式、投資信託、ETF、REITなど(投資信託はつみたて投資枠対象外の商品も含む)
  • 年間投資枠:240万円まで
  • 投資方法:一括・積立

成長投資枠は、より幅広い商品に投資できる非課税枠です。上場株式やETF、REITに加え、つみたて投資枠の対象外となる投資信託も購入できます。

年間の投資上限は240万円と大きく、一括投資と積立投資のどちらも選択可能です。

個別株に投資したい方や、相場環境を見ながら柔軟に投資したい方にとって使い勝手のよい枠といえます。

つみたて投資枠と比べると価格変動の影響が大きくなりやすいため、リスク管理を意識した運用が求められます。

3.3 2つの非課税枠は併用可能

新しいNISAでは、つみたて投資枠と成長投資枠を同時に併用できます。

年間では合計360万円(つみたて投資枠120万円+成長投資枠240万円)まで非課税で投資が可能です。

さらに、生涯にわたって投資できる非課税保有限度額は1800万円とされており、そのうち成長投資枠は最大1200万円まで利用できます。

「少額投資非課税制度」という名称ではあるものの、長期的に活用すれば、まとまった資産形成を目指すことも期待できます。

積立で安定的に資産を増やしつつ、成長投資枠で運用の幅を広げるなど、自身の投資経験や目的に応じた組み合わせを考えていきましょう。

4. 新NISAのメリットを確認

前章で確認した2つの非課税枠を踏まえて、新NISA全体のメリットを整理しておきましょう。

4.1 メリット①運用益が非課税になる

通常、株式や投資信託を売却して得た利益や、受け取った配当金・分配金には、20.315%(所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%)の税金がかかります。

NISA口座内での運用であれば、これらの利益がすべて非課税になります。同じ運用成果でも、税金が引かれない分、手元に残る金額が大きくなる点は、新NISA最大のメリットといえるでしょう。

4.2 メリット②非課税保有期間が無期限化された

旧制度の一般NISAは非課税期間が5年間、つみたてNISAは20年間と、期限が設けられていました。新NISAでは、この非課税保有期間が無期限化されています。

期限を気にせず長期で保有し続けられるようになったことで、相場の変動に慌てて売却する必要がなくなり、じっくりと資産を育てやすくなった点も大きな変化です。

4.3 メリット③非課税枠が再利用できる

新NISAでは、生涯非課税限度額(1800万円)のうち、商品を売却した分の枠は翌年以降に再利用できる仕組みになっています。

たとえば、まとまったお金が必要になって一部を売却した場合でも、その売却分の非課税枠は復活し、翌年以降に再び非課税で投資できます。

ライフイベントに応じて資産を活用しながら、非課税というメリットを長く維持できる点は、旧制度にはなかった利便性です。

4.4 メリット④いつでも売却・引き出しができる

iDeCo(個人型確定拠出年金)は原則60歳まで資産を引き出せませんが、NISAにはそうした制限がありません。必要なタイミングで、いつでも売却して資金化できます。

そのため、老後資金だけでなく、教育費や住宅費など、ライフイベントに応じた資金づくりにも活用しやすい制度といえます。

4.5 メリット⑤口座開設・維持にコストがかからない

NISA口座の開設や維持に、口座管理料などのコストはかかりません。投資信託の購入時手数料が無料になる商品も多く(つみたて投資枠はすべて無料)、コストを抑えながら資産形成を進めやすい環境が整っています。

これらのメリットを踏まえると、新NISAは「非課税で運用しながら、必要なときには柔軟に資金を活用できる」制度だといえます。

次の章では、実際に50歳から65歳まで積立投資を続けた場合、どの程度の資産を準備できるのかを具体的に見ていきましょう。

5. 50歳→65歳まで積立投資|定年までいくら準備できる?

NISAの非課税メリットを活かし、実際に50歳から65歳までの15年間、毎月一定額を積み立てた場合、どのくらいの資産を準備できるのかを試算してみましょう。

なお、想定利回りは「3%・5%・7%」の3パターンでシミュレーションします。

※金融庁「つみたてシミュレーター」を使用
※本シミュレーションは、実際の運用結果を保証するものではありません。

5.1 運用利回り3%の場合

  • 積立額1万円:226万円
  • 積立額2万円:452万円
  • 積立額3万円:679万円
  • 積立額4万円:905万円
  • 積立額5万円:1131万円

比較的保守的な想定でも、毎月5万円の積立で1000万円超が見えてきます。

大きく増やすというより、着実に資産を積み上げるイメージです。

5.2 運用利回り5%の場合

  • 積立額1万円:265万円
  • 積立額2万円:530万円
  • 積立額3万円:794万円
  • 積立額4万円:1059万円
  • 積立額5万円:1324万円

現実的なリターンを想定すると、同じ積立額でも差が広がります。

毎月3万円でも約800万円に届く点は一つの目安になるでしょう。

5.3 運用利回り7%の場合

  • 積立額1万円:311万円
  • 積立額2万円:622万円
  • 積立額3万円:933万円
  • 積立額4万円:1244万円
  • 積立額5万円:1556万円

高い利回りが続いた場合、資産の伸びは大きくなります。ただし変動も大きくなるため、リスクを踏まえたうえで現実的な前提を置くことが大切です。

50歳代は定年までの残り時間が限られているからこそ、無理のない金額で早めに積立を始め、非課税のメリットを最大限に活用したいところです。