8月の年金支給日では、65歳から受け取れる老齢年金のほかに、障害認定時に受け取れる障害年金、親族を亡くした人が受け取れる遺族年金も支給されます。

厚生年金保険の被保険者が亡くなったときなどに受け取れる遺族厚生年金については、2028年4月から制度改正が予定されています。制度の見直しにともない、一部の人は改正の影響を受けることになります。

石上 ユウキ
今回の見直しは対象範囲が大きく変わるため、ご自身やご家族に関わるかどうか、順を追って確認していきましょう。

遺族厚生年金の見直しでは、どういった人が影響を受けるのでしょうか。この記事では、遺族厚生年金の見直しポイントや影響を受ける人・受けない人について解説します。

1. この記事の3つのポイント

  •  2028年4月から遺族厚生年金は原則、男女とも60歳未満なら5年間の有期給付に
  •  新たに対象となるのは子どものいない30歳代女性(年間推計約250人)と60歳未満の男性(年間推計約1万6000人)
  •  有期給付では年金額が現行の約1.3倍に増額、「死亡分割」という新しい仕組みも導入される

2. 2028年4月の遺族厚生年金の見直しポイント

遺族厚生年金は、厚生年金の被保険者や受給権者が亡くなった場合に、所定の要件を満たす遺族に支給される年金です。年金を受け取れる遺族は以下のとおりです。

  1. 子のある配偶者
  2. 子(18歳になった年度の3月31日までの間にある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)
  3. 子のない配偶者
  4. 父母
  5. 孫(18歳になった年度の3月31日までの間にある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある方。)
  6. 祖父母
    ※上記の順番は年金受給時の優先順位にもなる。

ただし、子のない30歳未満の妻は、原則5年間の有期給付です。また、子のない夫は55歳以上で受給権が発生し、原則60歳から受給開始となります。

2028年4月の改正では、この男女による受給格差の解消を行う予定です。具体的には、以下のような改正が実施されます。

  • 子どものいない人は男女ともに、60歳未満までは原則5年給付(配慮が必要な場合は5年目以降も給付を継続)
  • 有期給付の収入要件(年収850万円未満)を廃止
  • 年金額の増額(有期給付加算・死亡分割)

子どものいない人で60歳未満の場合は、2028年4月から原則5年の有期給付になります。ただし、女性は2028年4月から20年かけて段階的に実施していくため、2028年度時点では、その年度末で40歳未満の人が有期給付の対象になります。また、所得が不十分な人や障害状態にある人は、5年目以降も継続して給付される見込みです。

有期給付への移行にともない、収入要件の撤廃や年金額の増額が行われます。2028年4月からの有期給付では、現在の遺族厚生年金の額の約1.3倍の金額が支給される予定です。また、収入要件が撤廃されたことで、年収が高い人でも有期給付としてであれば遺族厚生年金の受給が可能になります。

それでは、どのような人が遺族厚生年金の改正の影響を受けるのでしょうか。次章で見ていきましょう。

石上 ユウキ
これまで「子のない夫」は55歳以上でないと受給権すら発生しない仕組みでしたが、この年齢要件そのものが撤廃される点は見落とされがちです。

3. 遺族厚生年金見直しで影響を受けるのはどんな人?

遺族厚生年金の見直しで影響を受けるのは、以下に該当する人です。

  • 子どもがおらず、2028年度末時点で40歳未満の女性
  • 子どものいない60歳未満の男性

前述のとおり、今回の遺族厚生年金の改正では、これまで子のない30歳未満の妻に限られていた有期給付の対象者が大幅に拡大されました。とくに、女性は2028年度末時点で30歳代の場合、遺族厚生年金は原則5年給付になります。厚生労働省によれば、新たに対象となる30歳代の女性は、推計で毎年約250人程度いるとのことです。該当する人は、給付終了後の収入をどう確保するか、早いうちから考えておきたいところです。

一方、男性はこれまで55歳以上で受給権が発生し、実際の受給は60歳以上からとなっていました。しかし、今回の改正で、60歳未満であっても5年間の年金給付を受けられるようになりました。厚生労働省によれば、新たに給付対象となる男性は、推計で年間1万6000人とのことです。

今回の改正は、働き方や家庭の在り方が多様化していることに対応するものとなっています。男女が公平に年金給付を受けられるようになりますが、給付終了後のライフプランはあらかじめ考えておく必要が出てくるでしょう。

次章では、見直しによる影響を受けない人について解説します。

石上 ユウキ
年間1万6000人という男性の対象者数は、女性の約250人と比べて非常に多い数字です。これまで男性側の受給要件がいかに厳しかったかが、この数字の差からも読み取れます。

4. 遺族厚生年金見直しで影響を受けない人もいる?

遺族厚生年金の改正では、その影響を受けない人も存在します。具体的には、以下のとおりです。

  • 60歳以上で死別した人
  • 子ども(18歳になった年度の3月31日までの間にある方、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある子)がいる人
  • 改正前から遺族厚生年金を受け取っていた人
  • 2028年度に40歳以上になる女性

60歳以上で死別した人や、18歳になるまでの子どもがいる人は、基本的に現行制度と変わらず無期給付になります。ただし、子どもがいる人は、子どもが18歳年度末を迎えた後は、原則5年の加算によって増額された有期給付+継続給付の対象となります。

また、すでに遺族厚生年金を受給している人や、2028年度に40歳になる女性も、現行制度と変わらず無期給付です。すでに遺族厚生年金を受給している人が突然5年の有期給付に切り替わることはないため、安心してよいでしょう。

「遺族厚生年金は全員5年間の有期給付になる」というわけではないため、もし受給要件を満たす場合は、受給者の年齢や子どもの有無、死別した年齢などを確かめておきましょう。

次章では、年金額増額の仕組みを解説します。

石上 ユウキ
「もう受給が始まっているから急に打ち切られるのでは」という不安の声は、制度改正のたびに窓口でよく聞かれました。今回の見直しでも、既受給者への経過措置がきちんと用意されている点は安心材料です。