6月17日に日本年金機構が更新した「令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項」では、個人住民税が非課税となる限度額の目安が示されており、単身・65歳以上の場合で155万円(1級地)などと定められています。
こうした非課税水準の収入で暮らす高齢者の実態に触れる機会がある中、生活保護制度というと、働けない人や子育て世帯を支援する制度というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし実際には、高齢者世帯が受給世帯の大きな割合を占めています。
とくに一人暮らしの高齢者は、年金収入だけでは生活費をまかなうことが難しいケースも少なくありません。
筆者がかつて日本郵便でリテール営業に従事し、地域のお客さまの家計に寄り添ってきた経験からも、生活を守るためのセーフティネットの実態を知ることは非常に大切だと実感しています。
本記事では、生活保護受給世帯の実態や高齢単身世帯の家計状況を確認するとともに、生活保護制度における支援内容や生活扶助の支給額について見ていきます。
1. 生活保護受給世帯の半数超は「単身高齢者世帯」という現実
厚生労働省の「生活保護の被保護者調査(令和8年3月分概数)」によると、2026年3月時点の生活保護受給者数は約198万人(1,980,808人)でした。
これは、人口100人あたり1.61人が生活保護を利用している計算になります。
全体としては、被保護実人員数、被保護世帯数ともに前年同月から減少しています。
しかし、新規申請件数や保護開始世帯数は前年を上回って増加している点に注意が必要です。
- 保護の申請件数:2万3636件 前年同月比1,201件増加(5.4%増)
- 保護開始世帯数:2万711世帯 前年同月比371世帯増加(1.8%増)
続いて、受給世帯の構成を見てみましょう。
【世帯類型別世帯数及び割合(保護停止中を含まない)】
- 高齢者世帯:55.3%
- 単身世帯:51.7%
- 二人以上世帯:3.6%
- 高齢者以外世帯(高齢者世帯を除く世帯):44.7%
- 母子世帯:3.4%
- 障害者・傷病者世帯:25.4%
- その他の世帯:15.8%
特徴的なのは、単身の高齢者世帯が全体の51.7%を占めている点です。生活保護制度が、年金収入だけでは生活が難しい高齢単身者を支える役割を果たしていることがうかがえます。
また、障害者・傷病者世帯の割合は25.4%となっており、前年同月と比べてわずかに(3,600世帯・0.9%)増加しています。
2. 【生活保護】年金受給中でも利用できる?生活保護の基本
前述のとおり、生活保護受給世帯の半数以上を高齢者世帯が占めており、その多くは単身世帯です。
生活保護は、生活に困窮した人の最低限度の生活を保障し、自立を支援するための制度ですが「年金を受給していると利用できない」「持ち家があると対象にならない」といったイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし実際には、公的年金を受給している場合でも、それだけでは最低生活費を満たせないときは、不足分を補う形で生活保護を利用できる場合があります。
また、住居を持たない場合でも申請は可能であり、居住用の持ち家についても、資産価値や生活状況などを踏まえたうえで保有が認められるケースがあります。
このように、生活保護は働けない人だけを対象とした制度ではありません。
収入や資産などを活用しても最低限度の生活を維持することが難しい場合に利用できる制度です。
では実際に、高齢単身世帯の家計はどのような状況なのでしょうか。
3. 単身高齢者世帯の家計収支はどのような状況か
総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、65歳以上の単身無職世帯の平均的な家計収支は次のとおりです。

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
【65歳以上 単身無職世帯】
- 実収入:13万1456円
- 可処分所得(手取り収入):11万8465円
- 消費支出:14万8445円
- 毎月の赤字額:2万9980円
平均的なケースでは、毎月およそ3万円の赤字が発生しています。
また、厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受給している高齢者世帯のうち、総所得のすべてを公的年金・恩給が占める世帯は43.4%です。
多くの高齢者が、年金以外の収入源を必要としている状況が読み取れます。
さらに、この家計収支には医療費や介護費、葬儀費用などの臨時支出は含まれていません。
こうした事情を踏まえると、生活保護受給世帯の半数以上を単身高齢者世帯が占めていることも理解できるでしょう。
では、生活保護では実際にどのような支援が行われているのでしょうか。
4. 生活保護の「生活扶助」はいくら支給される?
生活保護は一律の金額が支給される制度ではありません。
世帯の収入や必要な支出に応じて、不足分を補う仕組みとなっており、支援内容は8つの扶助に分かれています。
- 生活扶助:日常生活に必要な費用(食費・被服費・光熱水費等)
- 住宅扶助:アパート等の家賃等 定められた範囲内で実費を支給
- 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費等
- 医療扶助:医療サービスの費用。費用は直接医療機関へ支払(本人負担なし)
- 介護扶助:介護サービスの費用。費用は直接介護事業者へ支払(本人負担なし)
- 出産扶助:出産費用。定められた範囲内で実費を支給
- 生業扶助:就労に必要な技能の修得等にかかる費用(高等学校等に就学するための費用を含む。)定められた範囲内で実費(高等学校等に就学するための費用の一部は定められた基準額)を支給
- 葬祭扶助:葬祭費用。定められた範囲内で実費を支給
この中でも、日常生活を支える「生活扶助」の支給額に関心を持つ人は多いでしょう。
生活扶助額は、地域や世帯人数、年齢構成などによって異なります。
世帯構成:東京都区部等/地方郡部等
- 3人世帯(33歳、29歳、4歳): 16万4860円/14万5870円
- 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万6450円
- 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
- 母子世帯(30歳、4歳、2歳): 19万6220円/17万4800円
これに加えて、住宅扶助など対象となる扶助が上乗せされます。
同じ生活保護制度であっても、居住地域や世帯構成によって支給額が異なることが分かります。
5. 生活保護は高齢単身世帯を支える重要な制度
本記事では、生活保護受給世帯の実態や高齢単身世帯の家計状況を確認するとともに、生活保護制度における支援内容や生活扶助の支給額について解説しました。
厚生労働省の調査によると、生活保護受給世帯のうち半数以上を単身高齢者世帯が占めており、その背景には、高齢単身世帯の厳しい家計状況があります。
生活保護制度では、生活扶助をはじめ住宅扶助や医療扶助、介護扶助など複数の支援が設けられており、世帯の状況に応じて必要な支援が行われています。
支給額は地域や世帯構成によって異なりますが、最低限度の生活を保障するための重要な役割を担っています。
生活保護の実態を理解することは、高齢化が進む社会における課題や社会保障制度のあり方を考えるうえでも大切といえるでしょう。

