梅雨明けが待ち遠しい6月下旬、本格的な夏の訪れとともに、電気代などの値上がりが気になる季節になりました。

物価の上昇は依然として続いており、日々の家計管理に苦心されている方も少なくないでしょう。

特に公的年金で暮らしている方々にとっては、少しでも収入を増やしたいという思いは切実なものかもしれません。

実は、公的年金を受給している方で、特定の条件を満たす場合に年金額に加えて給付金が支給される「年金生活者支援給付金」という制度があります。

再来月、8月14日は年金支給日ですが、支給要件を満たし請求手続きを完了した方を対象に「年金生活者支援給付金」が年金に上乗せして支給されます。

この記事では、この制度の対象者や受給できる金額、そして申請手続きの方法について、わかりやすく解説していきます。

1. 年金に上乗せされる「年金生活者支援給付金」とは?制度の概要を解説

年金生活者支援給付金制度は、年金を受給している方々の生活を支援する目的で2019年に始まりました。

この制度は、受給要件を満たす対象者に対し、2カ月に一度、公的年金の支給日に合わせて給付金が支給される仕組みです。

年金生活者支援給付金制度について1/11

年金生活者支援給付金制度について

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」

年金生活者支援給付金は3つの種類に分かれており、受給している基礎年金に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」が設定されています。

つまり、それぞれの所得要件を満たしている基礎年金の受給者が、この給付金の対象となります。

2. 【種類別】年金生活者支援給付金を受け取れる人の条件とは?

基礎年金を受け取っている方の中で、年金などの収入や所得の合計が一定の基準を下回る場合に「年金生活者支援給付金」を受給できる可能性があることがわかりました。

ここでは、「年金生活者支援給付金」の具体的な支給要件を3つの種類に分けて確認していきます。

2.1 老齢基礎年金を受給している方の支給要件

老齢年金生活者支援給付金の支給要件2/11

支給要件

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、以下の支給要件をすべて満たす方です。

  • 65歳以上で老齢基礎年金を受給していること
  • 同じ世帯の全員が市町村民税非課税であること
  • 前年の公的年金などの収入金額(※1)とその他の所得を合わせた額が、昭和31年4月2日以降に生まれた方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれた方は80万6700円以下であること(※2)

※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 昭和31年4月2日以降に生まれた方で合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の場合、また昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の場合は、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。

2.2 障害基礎年金を受給している方の支給要件

以下の支給要件をすべて満たすと、障害年金生活者支援給付金の支給対象となります。

  • 障害基礎年金を受給していること
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族などの数によって増額されます)

※ 障害年金などの非課税収入は所得に含まれません。

2.3 遺族基礎年金を受給している方の支給要件

以下の支給要件をすべて満たすと、遺族年金生活者支援給付金の支給対象となります。

  • 遺族基礎年金を受給していること
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下であること(扶養親族などの数によって増額されます)

※ 遺族年金などの非課税収入は所得に含まれません。

3. 年金生活者支援給付金はいくらもらえる?平均月額と金額別の件数データ

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、実際に支給された年金生活者支援給付金の平均月額を確認してみましょう。

2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金で4146円、障害年金生活者支援給付金で5727円、遺族年金生活者支援給付金で5228円となっています。

※2025年3月時点で認定されている平均給付額です。

給付金額ごとの給付件数は、以下のようになっています。

3.1 老齢年金生活者支援給付金の給付金額別件数

  • 1000円未満:7万5101件
  • 1000円以上2000円未満:31万4450件
  • 2000円以上3000円未満:59万9166件
  • 3000円以上4000円未満:108万2177件
  • 4000円以上5000円未満:103万4357件
  • 5000円以上6000円未満:104万5423件
  • 6000円以上7000円未満:18万5291件
  • 7000円以上8000円未満:9万3265件
  • 8000円以上9000円未満:4万4796件
  • 9000円以上1万円未満:1万9891件
  • 1万円以上:1万524件

3.2 障害年金生活者支援給付金の給付金額別件数

  • 5000円以上6000円未満:149万3700件
  • 6000円以上7000円未満:68万3466件

3.3 遺族年金生活者支援給付金の給付金額別件数

  • 1000円未満:ー
  • 1000円以上2000円未満:607件
  • 2000円以上3000円未満:1569件
  • 3000円以上4000円未満:ー
  • 4000円以上5000円未満:ー
  • 5000円以上:7万5531件

4. 年金生活者支援給付金を受け取るための手続き方法

それでは、給付金を受け取るためにはどのような手続きが必要になるのでしょうか。

年金生活者支援給付金6/11

年金生活者支援給付金

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金」

「手続きを忘れてしまいそうで不安」と感じる方もいるかもしれませんが、年金生活者支援給付金の支給対象と判断された方には、日本年金機構から請求書が送付されます。

基本的には、その書類に必要事項を記入して返送すれば手続きは完了するため、心配はいりません。

ただし、対象者の年金受給状況によって書類の形式や手続きのタイミングが異なる点には注意が必要です。

ここでは3つのケースに分けて、手続きの方法を見ていきましょう。

4.1 ケース1:これから老齢年金の受給を始める場合

これから老齢年金の受給を始める場合7/11

これから老齢年金の受給を始める場合

出所:日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」

まだ年金を受給していない方には、受給開始の3カ月前に、年金を受け取るために必要な「年金請求書(事前送付用)」が届きます。

この請求書に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。

必要事項を記入したら、年金の請求書と一緒に「年金生活者支援給付金請求書」を提出します。

ただし、この請求書は年金の受給開始年齢に達する誕生日の前日以降でないと提出できない点に注意してください。

4.2 ケース2:すでに年金を受給している場合

年金生活者支援給付金請求書の封筒8/11

年金生活者支援給付金請求書の封筒

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)送付用封筒」

すでに基礎年金を受給している方でも、所得の変動によって新たに年金生活者支援給付金の対象となる場合があります。

そうした対象者には、毎年9月1日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)9/11

令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)

出所:日本年金機構「令和7年度の年金生活者支援給付金請求書(はがき型)の送付について」

必要事項を記入後、同封されている目隠しシールを貼り付け、差出人欄に自身の住所と氏名を書いて切手を貼り、ポストに投函すれば手続きは完了です。

※支給要件に該当するかどうか確認ができない方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と、所得情報を確認するための「所得状況届」が送付されます。

4.3 ケース3:老齢基礎年金を繰上げ受給している場合

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用10/11

年金生活者支援給付金の請求書封筒、繰上げ受給中の人用

出所:日本年金機構「65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方」

最後に、老齢基礎年金を繰上げ受給している方のケースを見ていきましょう。

年金生活者支援給付金の受給資格が発生すると見込まれる方には、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの場合は前月の初旬)に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されます。

書類が届いたら、必要事項を記入し、同封の目隠しシールを貼ってから切手を貼り、ポストに投函してください。

※支給要件に該当するかどうか確認ができない方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と、所得情報を確認するための「所得状況届」が送付されます。

初回の手続きさえ済ませれば、その後は支給要件を満たしている限り、継続して給付金を受け取ることが可能です。

もし支給要件を満たさなくなった際には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、給付金の支給が停止されます。

なお、2025年1月以降に65歳になり、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき)」が送付された方は、「電子申請」での提出も選択できます。

電子申請で提出した場合、郵送での提出は不要です。

5. 高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と回答、データで見る生活意識

ある調査によると、高齢者世帯の半数以上が「生活が苦しい」と感じているという実態が明らかになっています。

ここでは、高齢者の生活意識を調査した厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」を参考に、その詳細を見ていきます。

この調査結果から、高齢者世帯の生活意識は以下のようになっていることがわかります。

5.1 高齢者世帯の生活意識

  • 大変苦しい:25.2%
  • やや苦しい:30.6%
  • 普通:40.1%
  • ややゆとりがある:3.6%
  • 大変ゆとりがある:0.6%

「大変苦しい」と「やや苦しい」を合計した「苦しい」と感じている世帯の割合は、55.8%にのぼります。

この結果は、「普通」と回答した世帯よりも「苦しい」と感じている世帯の方が多い状況を示しています。

6. まとめ

物価の上昇が続く中で、多くの高齢者世帯が経済的な困難に直面しています。

このような状況では、国や自治体が提供する支援策をしっかりと活用することが重要になります。

今回解説した「年金生活者支援給付金」は、年金やその他の所得が一定基準以下の方を対象とした支援制度です。

ただし、この給付金は自分自身で申請手続きを行わないと支給されないため、その点には注意が必要です。

このほかにも、お住まいの自治体が独自に実施している支援策など、利用できる制度があるかもしれません。

最新の情報については、自治体の公式サイトなどで確認してみることをおすすめします。

※当記事は再編集記事です。

参考資料

橋本 優理