本格的な夏を前に、いよいよ「夏のボーナス」支給が本格化する季節を迎えました。一方で、長引く物価高による生活費への負担増も懸念されており、家計への不安を感じる方は少なくないでしょう。

また、先日6月15日は、令和8年度(2026年度)の新しい年金額が反映された初めての年金支給日でした。

今年度は厚生年金が2.0%、国民年金が1.9%のプラス改定となったものの、昨年の物価上昇率(3.2%)には追いついておらず、将来の年金生活に不安を抱く現役世代も多いのではないでしょうか。

特に女性は、結婚や出産・育児、親の介護などライフステージの変化に伴って働き方を変えるケースが少なくありません。

これは現役時代の収入だけでなく、将来受け取る「年金」にも直結する重要な選択となります。

そこで今回は、日本の年金制度が女性に与える影響に触れながら、最新データをもとに女性の年金受給額の実態や、ライフコースによる違いについてくわしくみていきたいと思います。

1. 日本の女性を取り巻く「仕事」と「老齢年金」の関係

日本の年金制度は、日本に住む20歳以上のすべての人に加入義務がありますが、働き方により対象となる年金制度が変わります。

国民年金の被保険者は「第1号被保険者~第3号被保険者」に区分されています。

【図解】2階建ての年金制度1/4

【図解】2階建ての年金制度

出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」、厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとに、LIMO編集部作成

一般的には20歳以降の学生時代は第1号被保険者として国民年金に加入し、社会人として企業に就職し厚生年金の対象となる人が多いでしょう。

その後、結婚や出産・育児、親族の介護などライフステージに変化があった時、働き方を変えるのはまだまだ女性が多いというのが現状です。

結果的に女性が専業主婦または扶養内パートなどで働く場合、国民年金の対象ということになります。厚生年金の対象となる働き方を続けた場合とでは、老後の年金にどのくらいの差が生まれるのでしょうか。

2. 【女性の年金収入】平均は国民年金5.7万円・厚生年金11.1万円!受給額のリアルな分布

厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、現在年金を受給している人の状況は以下のようになっています。

  • 国民年金受給権者数(男女計):3345万4617人
  • 厚生年金受給権者数(女性):540万5752人

時代の流れもあり今のシニア世代よりも厚生年金の対象となる女性は増えていくと考えられますが、それぞれ受給している年金額をみてみましょう。

2.1 【年金収入】国民年金の平均と個人差を見る

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

国民年金に加入する女性の平均年金月額は、5万7582円です。

※参考までに、国民年金受給者 全体(男女計)の受給額分布を見てみましょう。

【女性の国民年金】受給額分布から見る個人差

【男女別グラフ】国民年金の受給額分布2/4

【男女別グラフ】国民年金の受給額分布

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 1万円未満:5万1828人
  • 1万円以上~2万円未満:21万3583人
  • 2万円以上~3万円未満:68万4559人
  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 4万円以上~5万円未満:388万83人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
  • 7万円以上~:299万7738人

1万円ごとのレンジでみた場合、6万円以上~7万円未満がボリュームゾーンとなっています。

ただし、女性の通算25年未満受給権者の平均年金月額は2万374円ですから、あまりに加入期間が短くなると老後の生活を支えることができません。

満額受給できた場合でも国民年金だけで生活するのは厳しいといえますから、別途貯蓄などで備えておく必要があるでしょう。

2.2 【年金収入】厚生年金の平均と個人差を見る

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

厚生年金の場合、女性の平均年金月額は11万1413円です。

平均年金月額でみると、国民年金と比べ約2倍の年金収入を見込むことができます。ただし、厚生年金の受給額は現役時代の年収と年金加入期間をもとに算出されるため、実際の受給額は人によってピンキリです。

【女性の厚生年金】受給額分布から見る個人差

【男女別グラフ】厚生年金の受給額分布3/4

【男女別グラフ】厚生年金の受給額分布

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • ~1万円未満:1万2953人
  • 1万円以上~2万円未満:3880人
  • 2万円以上~3万円未満:2万9993人
  • 3万円以上~4万円未満:6万3025人
  • 4万円以上~5万円未満:6万1945人
  • 5万円以上~6万円未満:6万9313人
  • 6万円以上~7万円未満:18万892人
  • 7万円以上~8万円未満:34万8764人
  • 8万円以上~9万円未満:54万1901人
  • 9万円以上~10万円未満:75万1358人
  • 10万円以上~11万円未満:81万3990人
  • 11万円以上~12万円未満:69万5128人
  • 12万円以上~13万円未満:52万2466人
  • 13万円以上~14万円未満:37万4169人
  • 14万円以上~15万円未満:27万1489人
  • 15万円以上~16万円未満:20万322人
  • 16万円以上~17万円未満:14万7604人
  • 17万円以上~18万円未満:10万5489人
  • 18万円以上~19万円未満:7万1561人
  • 19万円以上~20万円未満:4万8617人
  • 20万円以上~21万円未満:3万3387人
  • 21万円以上~22万円未満:2万1931人
  • 22万円以上~23万円未満:1万4116人
  • 23万円以上~24万円未満:8813人
  • 24万円以上~25万円未満:5491人
  • 25万円以上~26万円未満:3233人
  • 26万円以上~27万円未満:1811人
  • 27万円以上~28万円未満:927人
  • 28万円以上~29万円未満:479人
  • 29万円以上~30万円未満:223人
  • 30万円以上~:482人

受給額の分布幅も大きいため、厚生年金だからという理由で安易に構えず、自分の年収だといくらの年金額になりそうかをシミュレーションした上でマネープランを立てましょう。

なお、加入期間が短くなったり、パートなどで収入が下がったりした場合は将来の受給額にも影響するため、働き方を変えるタイミングが訪れた場合は先々のこともふまえて検討するのも一つです。

3. 【専業主婦・会社員・自営業】3つのモデルケースで見る「女性の年金」と男女格差

厚生労働省が公表した「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」をもとに、より現実に即した女性の働き方別の年金受給額目安を見ていきます。

ご自身の経歴に近いモデルケースを確認してみましょう。

3.1 【女性の3つのライフコース別】年金月額の目安

ライフコース別《65歳以降の年金めやす》5つのパターン4/4

ライフコース別《65歳以降の年金めやす》5つのパターン

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(色枠はLIMO編集部で加筆)

① キャリアを重ねた女性(厚生年金が中心)

  • 想定: 平均年収約427万円で33年間就業
  • 年金月額の目安: 13万4640円

② 自営業として働いた女性(国民年金が中心)

  • 想定: 厚生年金加入期間約6.5年
  • 年金月額の目安: 6万1771円

③ 専業主婦の期間が長い女性(第3号被保険者が中心)

  • 想定:厚生年金加入期間約6.7年
  • 年金月額の目安: 7万8249円

3.2 男性のモデルケースと比べると?

現役時代の働き方によって将来の年金額には数万円規模の差が生じることがわかります。

また、同資料における男性のモデルケースと比較することで、男女間の受給額の違いも浮き彫りになりました。

男性の場合、「会社員経験が長い(厚生年金が中心)」ケースの、平均収入50.9万円(年収約610万円)で39.8年就業したパターンでは、年金月額の目安は17万6793円と試算されています。

キャリアを重ねた女性のモデル(13万4640円)と比較すると、月額で約4万2000円の差があります。

これは、就業期間の長さ(男性約40年、女性33年)や、現役時代の平均年収の差が影響していると考えられるでしょう。

一方で、「自営業・フリーランス(国民年金が中心)」の男性の目安は6万3513円であり、同じく国民年金中心の女性(6万1771円)との間に大きな金額差はありません。

国民年金は加入期間によって定額で計算されるため男女差が出にくいものの、報酬比例である厚生年金においては、就業期間や収入の差がダイレクトに老後の受給額に直結します。

女性の場合は出産や育児などのライフイベントによって就業期間が短くなったり、働き方をセーブせざるを得ない期間が生じやすいことが、男女の厚生年金受給額に差がつく要因であると言えるでしょう。

同じ世代でも働き方によって受給額は大きく異なるため、公的年金以外の収入源を確保するなど、ご自身の年金加入経歴に合わせた資金計画が大切です。

4. まとめにかえて

厚生労働省の「簡易生命表」によると、平均寿命は依然として長寿化の傾向が続いています。

一方で、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる「健康寿命」と平均寿命の間には一定の開きがあるのが現状です。

老後の期間が長くなるにつれて、生活資金として蓄えておくべき金額も増加します。

人の助けが必要な期間や、要介護状態の期間が長く続く可能性を加味すると、日々の生活費だけでなく介護費用の備えもぜひ意識しておきたいものです。

近年では核家族化や単身世帯の増加により、次世代に介護を頼りにくいケースも増えています。

また、高齢の配偶者どうしで介護をする「老老介護」や、認知症の傾向が出ている配偶者どうしで介護をする「認認介護」なども社会的な課題です。

今年の夏にボーナスを受け取った方や、家計に見直しの余地がある方は、その一部を老後資金や介護への備えに充てるなど、今できることから準備を始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料