7月7日に内閣府経済社会総合研究所が公表した「景気動向指数(令和8(2026)年5月分速報)」によると、景気の現状を示す一致指数は118.5となり、前月に比べて0.4ポイント上昇しました。
マクロな景気動向に改善の兆しが見られる一方で、物価の上昇が続くなかで、日々の生活費について頭を悩ませている方もいらっしゃるかもしれません。
私自身も日々のインフレに対抗するため、生命保険や投資信託、個別株を組み合わせた資産運用を積極的に行い、将来に向けた対策を心がけています。
かつて保険代理店で数多くのライフプランニングを行い、現在は保険の比較・見積サイトの責任者を務める立場からも、老後を見据えた家計の防衛策は重要だとお伝えしています。
特に年金で生活されている方にとっては、少しでも暮らしの助けになる制度があれば知っておきたいものでしょう。
この記事では、公的年金に上乗せして支給される「年金生活者支援給付金」について、どのような方が対象になるのか、いくら受け取れるのか、そして手続きはどのように進めるのかを詳しく解説します。
ご自身が対象になるかを確認するきっかけとして、ぜひ最後までお読みください。
1. 年金生活者支援給付金の概要について
年金生活者支援給付金制度は、年金を受給している方の生活を支援する目的で2019年に始まりました。
支給の条件を満たす対象者には、2カ月に一度、公的年金の支給日に合わせて給付金が支給されます。
この給付金は3種類に分かれており、受給している基礎年金に応じて「老齢年金生活者支援給付金」「障害年金生活者支援給付金」「遺族年金生活者支援給付金」が設定されています。
それぞれの基礎年金受給者で、定められた所得要件を満たす方が給付の対象となります。
2. 年金生活者支援給付金の支給対象となる条件
ここでは、年金生活者支援給付金を受け取るための具体的な支給要件について、詳しく見ていきましょう。
2.1 障害・遺族年金生活者支援給付金の対象者
「障害年金生活者支援給付金」と「遺族年金生活者支援給付金」は、それぞれ障害基礎年金または遺族基礎年金を受給していることが前提です。
加えて、前年の所得が479万4000円以下であることが条件となります。
ここで重要なのは、所得の計算に障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれないという点です。
また、扶養親族の人数に応じて所得の基準額が引き上げられることも覚えておくとよいでしょう。
2.2 老齢年金生活者支援給付金の対象者
一方で、老齢年金生活者支援給付金の対象となるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同じ世帯の全員が市町村民税非課税である
- 前年の公的年金などの収入金額と、給与所得や利子所得といったその他の所得の合計額が、昭和31年4月2日以降生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は80万6700円以下である
「老齢年金生活者支援給付金」では、ご本人の所得だけでなく世帯全体の状況も要件に含まれる点に注意が必要です。こちらの判定においても、障害年金や遺族年金などの非課税収入は合計額に含まれません。
また、基準額をわずかに超えたために給付対象から外れる方との公平性を保つため、「補足的老齢年金生活者支援給付金」という制度も設けられています。
この対象となるのは、昭和31年4月2日以降に生まれた方で所得合計額が80万9000円を超え90万9000円以下の方、また昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下の方です。
3. 【2025年3月時点】年金生活者支援給付金の給付額と件数
厚生労働省が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」を基に、実際に支給された年金生活者支援給付金の平均月額を確認します。
2025年3月時点での平均給付月額(※)は、老齢年金生活者支援給付金で4146円、障害年金生活者支援給付金で5727円、遺族年金生活者支援給付金で5228円という結果でした。
※2025年3月時点で認定されている方の平均給付額です。
給付金額ごとの給付件数は、以下のようになっています。
3.1 老齢年金生活者支援給付金:給付額ごとの件数
- 1000円未満:7万5101件
- 1000円以上2000円未満:31万4450件
- 2000円以上3000円未満:59万9166件
- 3000円以上4000円未満:108万2177件
- 4000円以上5000円未満:103万4357件
- 5000円以上6000円未満:104万5423件
- 6000円以上7000円未満:18万5291件
- 7000円以上8000円未満:9万3265件
- 8000円以上9000円未満:4万4796件
- 9000円以上1万円未満:1万9891件
- 1万円以上:1万524件
3.2 障害年金生活者支援給付金:給付額ごとの件数
- 5000円以上6000円未満:149万3700件
- 6000円以上7000円未満:68万3466件
3.3 遺族年金生活者支援給付金:給付額ごとの件数
- 1000円未満:ー
- 1000円以上2000円未満:607件
- 2000円以上3000円未満:1569件
- 3000円以上4000円未満:ー
- 4000円以上5000円未満:ー
- 5000円以上:7万5531件
4. 年金生活者支援給付金の申請手続き
給付金を受け取るためには、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
「手続きを忘れてしまいそうで不安」と感じる方もいるかもしれませんが、給付金の支給対象と判断された方には、日本年金機構から請求書が郵送されます。
基本的には、その書類に必要事項を記入して返送すれば手続きは完了するため、過度な心配は不要です。
ただし、対象者の年金受給状況によって書類の形式や手続きのタイミングが変わります。ここでは3つのケースに分けて、手続きの流れを見ていきましょう。
4.1 ケース1:これから老齢年金の受給を開始する方
まだ年金を一度も受給していない方には、受給が始まる3カ月前に、年金の受給手続きに必要な「年金請求書(事前送付用)」が届きます。
その際に「年金生活者支援給付金請求書」が同封されています。
必要事項を記入し、年金の請求書と一緒に提出しましょう。ただし、この請求書は年金の受給開始年齢に達する誕生日の前日以降でないと提出できない点には注意が必要です。
4.2 ケース2:すでに年金を受給中の方
すでに基礎年金を受給している方でも、所得の変動などによって新たに給付金の対象となる場合があります。
そうした方々を対象に、毎年9月1日から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。
必要事項を記入後、同封されている目隠しシールを貼り、差出人欄に自身の住所と氏名を書いて切手を貼付し、ポストへ投函します。
※支給要件に該当するかどうか確認できない方には、A4サイズの年金生活者支援給付金請求書と、所得情報を確認するための所得状況届が送付されます。
4.3 ケース3:老齢基礎年金を繰上げ受給している方
最後に、老齢基礎年金を繰上げ受給している方のケースです。
給付金の受給権が発生すると見込まれる場合、65歳になる誕生月の初旬(1日生まれの方は前月初旬)に「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届きます。
書類が届いたら、必要事項を記入し、同封の目隠しシールを貼ってから切手を貼り、ポストに投函してください。
※支給要件に該当するか確認できない方には、A4サイズの年金生活者支援給付金請求書と、所得情報を確認するための所得状況届が送付されます。
一度手続きを行えば、その後は支給要件を満たし続ける限り、継続して給付金を受け取ることができます。
もし途中で支給要件を満たさなくなった場合には、「年金生活者支援給付金不該当通知書」が届き、給付金の支給は停止されます。
なお、2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき)」が届いた方は、電子申請での提出も可能になっています。
電子申請を利用した場合、郵送での提出は不要です。
5. 参考:国民年金・厚生年金の平均受給月額
参考として、現在のシニア世代が受け取っている公的年金の平均額はどのくらいなのでしょうか。
厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、国民年金と厚生年金の平均的な月額を見てみましょう。
5.1 国民年金の平均月額
- 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
- 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
- 〈女性〉平均年金月額:5万7582円
5.2 厚生年金の平均月額(国民年金を含む)
- 〈全体〉平均年金月額:15万289円
- 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
- 〈女性〉平均年金月額:11万1413円
現役時代の働き方や加入期間によって受給額は決まるため、個人による差が大きいのが実情です。
6. まとめ
今回は、年金生活者支援給付金の仕組みと給付額、申請手続きの方法までを詳しく解説しました。
年金を含む収入の全額が一定以下の場合、年金に上乗せして給付金を受け取ることができる可能性があります。
対象の方は、自宅に届いた案内を確認し、早めに申請手続きを行いましょう。
年金額や年金生活者支援給付金の額は、経済状況を踏まえて毎年改定されます。
2026年は引き上げられましたが、来年以降も同じように引き上げられるかは不透明です。
年金収入を管理し、家計の支出を細かく把握しながら、毎月の生活にゆとりが持てるよう工夫をしてみましょう。
7. 監修者コメント:ゆとりあるセカンドライフに向けた3つのアクション
昨今、物価上昇が続く中で日々のやりくりに頭を悩ませ、年金生活に不安を感じる方は少なくありません。本記事で解説した「年金生活者支援給付金」は、そうした方々の暮らしを直接的に支える大切なセーフティネットの一つです。
給付額は月額数千円程度であっても、年間を通せば家計の確かな助けとなります。対象となる可能性が高い方には日本年金機構から事前に請求書が届く仕組みになっているため、「お知らせを見落とさないこと」、そして「届いたら期限内に必ず手続きをすること」が何より重要です。近年は電子申請も可能になり、手続きのハードルはさらに下がっています。
制度を正しく理解し、もれなく活用することは家計防衛の基本です。給付金の申請をきっかけとして、ぜひ以下の視点でご自身のライフプランを前向きに見直してみましょう。
- 家計の収支を「見える化」する
- 公的な支援制度を味方につける
- 「小さな見直し」を積み重ねる
マクロな経済状況や年金支給額の変動を私たち自身でコントロールすることはできませんが、「自身の家計を管理し、制度を活用すること」は今すぐ誰にでもできます。できる対策を一つずつ実行していくことが、将来の大きな安心へとつながるはずです。
参考資料
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度について」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金」
- 日本年金機構「65歳の誕生日を迎え、老齢基礎年金を新規に請求する方」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)送付用封筒」
- 日本年金機構「65歳の誕生日を迎えた方で、老齢基礎年金を繰上げ受給している方」
- 内閣府経済社会総合研究所「景気動向指数(令和8(2026)年5月分速報)」
橋本 優理
