7月に入り、本格的な夏の暑さが続く時期となりました。夏のボーナス支給や、6月の年金改定を経たこの時期は、世帯の収支バランスや今後の老後資金を客観的に見直す適期といえます。

定年や年金生活が視野に入る60歳代は、貯蓄の「答え合わせ」が気になる年代です。最新調査によると、60歳代の平均金融資産保有額は単身世帯で1364万円、二人以上世帯で2683万円となっています。

ただし、平均は一部の富裕層に引き上げられやすい数値です。実態に近い中央値とあわせて確認していきましょう。本記事では世帯別のデータを一覧で整理し、「老後2000万円」を達成した人の割合や、2000万円でも足りない可能性についても解説します。

1. 【60歳代・単身世帯】平均貯蓄額は1364万円、中央値は300万円

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、60歳代単身世帯の金融資産保有額は平均1364万円、中央値は300万円でした。なお、同調査の「金融資産」は、運用や将来に備えて蓄えている部分を指し、日常的な出し入れや引落しに備える預貯金などは除かれています。

主な分布は以下のとおりです。

  • 金融資産非保有:30.4%
  • 100万円未満:9.1%
  • 2000万円~3000万円未満:5.5%
  • 3000万円以上:15.6%

単身世帯の金融資産保有額1/2

単身世帯・金融資産保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

平均と中央値の差は1000万円以上にのぼります。約3割が運用や将来への備えとしての金融資産を保有していない一方、3000万円以上を保有する人も15%を超えており、二極化が鮮明です。

2. 【60歳代・二人以上世帯】平均貯蓄額は2683万円、中央値は1400万円

同じ調査によると、60歳代二人以上世帯の金融資産保有額は平均2683万円、中央値は1400万円でした。

  • 金融資産非保有:12.8%
  • 100万円未満:4.7%
  • 500万円~700万円未満:6.2%
  • 1000万円~1500万円未満:8.9%
  • 1500万円~2000万円未満:8.0%
  • 2000万円~3000万円未満:12.4%
  • 3000万円以上:27.2%

二人以上世帯の金融資産保有額2/2

二人以上世帯の金融資産保有額

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」をもとにLIMO編集部作成

単身世帯より水準は高いものの、夫婦2人の老後を支えると考えると、中央値1400万円は決して余裕のある金額とはいえないでしょう。

調査内容をまとめると、金融資産を2000万円以上保有する世帯の割合は単身世帯で21.1%、二人以上世帯で39.6%でした。二人以上世帯では約4割に達する一方、単身世帯では5人に1人にとどまります。

「老後2000万円」に相当する金融資産を準備することは、多くの世帯にとって依然として高いハードルだとわかります。

3. 「老後2000万円」でも足りない可能性が

注意したいのは、金融資産を2000万円以上保有していても安心とは限らない点です。不足する可能性がある理由は、主に2つあります。

3.1 インフレが続いている

総務省の消費者物価指数をみると、2022年以降は前年比2~3%台の物価上昇が続いています。仮に年2%のインフレが20年間続くと、お金の実質的な価値は約3分の2に目減りする計算です。2000万円の購買力が、20年後には約1350万円相当まで下がってしまいます。

現金や預金だけで持ち続けるほど、インフレの影響を直接受ける点には注意が必要です。

3.2 平均余命が伸びている

厚生労働省の簡易生命表によると、65歳時点の平均余命は男性が約19年、女性が約24年です。「人生100年時代」といわれるとおり、老後の期間は従来の想定より長くなっています。長生きするほど、生活費や医療・介護費の総額も膨らみます。

こうした背景を踏まえると、計画的な資産形成と「できるだけ長く働く」というアプローチが欠かせません。新NISAを中心に、iDeCoを利用できる人は税制優遇制度も活用しながら資産の寿命を延ばしつつ、就労収入で取り崩しの開始を遅らせる。この両輪で備えるのが現実的でしょう。

4. まとめにかえて

60歳代の金融資産保有額は、単身世帯で平均1364万円(中央値300万円)、二人以上世帯で平均2683万円(中央値1400万円)でした。金融資産を2000万円以上保有する世帯は単身で約2割、二人以上で約4割にとどまります。

インフレと長寿化が進むいま、目標額に届いた人も油断はできません。運用と就労を組み合わせ、資産と健康の両方を長持ちさせる視点を持ちたいところです。

5. 【監修者のコメント】この記事の総括とこれからの実務上の注意点

齊藤 慧

本記事で解説されている60代の貯蓄データは、ご自身のライフプランを検討するうえで有益な参考資料となります。

ニュースで報じられる『平均貯蓄額』や『2000万円』という特定の数字にとらわれ、現状を過度に悲観してしまう必要はありません。

統計上の平均値は、一部の富裕層のデータによって実態より高く算出される傾向があります。そのため、平均に届いていないからといって無理な節約に走ったり、内容を理解していない投資商品に手を出したりするのは避けるべきです。

老後の家計管理において第一に優先すべきは、手元にある貯蓄額の多寡よりも、毎月の年金等の収入(手取り額)の範囲内に基本の生活費を収める工夫をすることです。

世間の数字に一喜一憂せず、ご自身の収支バランスを整えるという基本セオリーを淡々と実践することが、将来のキャッシュフローを安定させる確実な防衛策となります。

参考資料

柴田 充輝