好調な会社の株価が、好調な決算で下げることがある。売られたのは業績ではなく、業績の伸び方のほうだ、という局面である。

サンリオ(8136)の直近1カ月には、まさにその形が出た。増収率は20%を超えているのに、利益の伸びはそこに追いついていない。

※本記事中の株価は、過去の株式分割の影響を調整した値を使用しています。

ココがポイント
  • 2027年3月期1Qの売上高は520億円で前年同期比+20.7%、営業利益は224億円で+11.1%。営業利益率は前年同期の46.9%から43.1%へ低下
  • 直近1カ月の終値は8月10日の1,455円から8月12日の1,191円へ。8月17日は1,212円で、PERは23.03倍、PBRは9.01倍
  • ロイヤリティ売上高は268億円で+23.0%。卸売業に分類されながら、粗利率は業種の中央値とはまるで別の水準にある

1カ月で最も高い水準を付けた翌営業日に、2割近い下げ

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出所:各種資料をもとに筆者作成

出所:各種資料をもとに筆者作成

直近1カ月の終値をたどると、7月16日の1,217円から7月22日の1,132円まで下げたあと、7月30日には1,354円まで水準を上げている。

8月に入っても上昇は続き、8月10日には1,455円を付けた。ここが直近1カ月で最も高い終値である。

ところが、その翌営業日の8月12日は1,191円。1営業日で18%下げた計算になる。1Q決算を挟んだタイミングであり、内容が意識された可能性がある。

その後は8月13日1,227円、8月14日1,283円と戻したものの、8月17日は1,212円で終えた。1カ月を通してみれば、起点の1,217円とほぼ同じ位置に戻っている。

8月17日時点のPER(株価収益率)は23.03倍、PBR(株価純資産倍率)は9.01倍だ。PBRが9倍を超える銘柄では、利益の伸び方がわずかに鈍るだけでも株価の反応は大きくなりやすい。

増収20.7%、営業増益11.1%。この差はどこで生まれたのか

2027年3月期1Qの売上高は520億円で前年同期比+20.7%、営業利益は224億円で+11.1%、経常利益は226億円で+12.0%だった。親会社株主に帰属する四半期純利益は155億円で+9.3%である。

増収率と増益率の差は、そのまま利益率に出ている。営業利益率は前年同期の46.9%から43.1%へ低下した。

費用の内訳を見ると理由は分かりやすい。売上原価は83億円から113億円へ、販売費及び一般管理費は145億円から182億円へと、いずれも売上高の伸びを上回るペースで増えている。

会社の説明はこうだ。日本ではキャラクターの人気が広がり、ピューロランドの来場者数が1Q累計として過去最高となった。一方、北米ではマーケティング費用等の増加により営業利益が減益となり、アジアでも販売費及び一般管理費の増加が利益を押し下げたとしている。

2027年3月期の通期予想は据え置かれており、売上高2,298億円(+18.4%)、営業利益895億円(+15.0%)、当期純利益638億円(+16.8%)である。1Qの売上高はこの予想に対して22.6%、営業利益は25.1%の進捗となる。

数字の上では通期予想の線に乗っている。ただし、増収率が通期計画を上回る一方で増益率は下回っており、伸びの質が前期までとは変わり始めているようにみえる。

卸売業に分類された、粗利率78%の会社

ここで一度、この会社の稼ぎ方に戻ってみよう。1Qの売上高520億円のうち、ロイヤリティ売上高は268億円で+23.0%、物販その他は251億円で+18.5%だった。伸びが速いのはロイヤリティのほうである。

ロイヤリティ収入は、キャラクターの使用許諾に対する対価だ。商品を仕入れて売る取引と違い、追加の売上に対して直接かかる原価はごく小さい。

その結果として、1Qの粗利率は78%に達している。同社が属する卸売業の粗利率の中央値は16.9%であり、まるで別の商売の数字だ。営業利益率の中央値3.1%と比べても、43.1%という水準は桁が違う。

業種分類は事業の実態を必ずしも映さない。卸売業という区分に置かれてはいるが、実際に見るべきは商品を動かす力ではなく、キャラクターという資産をどれだけ多くの相手に貸し出せているかだ。

だからこそ、費用の増え方が効いてくる。原価がほとんどかからない収益構造では、利益率の変動要因は売上原価ではなく販売費及び一般管理費の側に寄る。今回の1Qは、その部分が先に動いた四半期だったと読み取れる。

増収は続いている。利益も伸びている。それでも利益率が下がるという形が、株価の反応を大きくしたのではないだろうか。

筆者コメント

前年同期と当1Qの費用を並べると、この四半期の性格が見えてくる。売上高が89億円増えたのに対し、売上原価と販売費及び一般管理費の合計は67億円増えている。

増えた売上の大半が費用に吸われた、という言い方もできる。もっとも、そこには来場者数を伸ばすための投入や、海外でのマーケティングも含まれている。

使った費用が次の売上に変わるのか、それとも利益率の恒常的な低下として残るのか。次の四半期は、そこを見る決算になるだろう。