2025年4月の高年齢者雇用安定法改正によって、企業は希望する従業員全員を65歳まで雇用する環境を整えることが義務付けられました。
多くの人にとって「老後の始まり」が事実上65歳となった一方、平均寿命は男性が81歳、女性が87歳と長寿化が続いています。65歳から老後が始まるとすれば、およそ20年にわたる生活費を自分で賄わなければなりません。
では、現実の貯蓄状況はどのようになっているのでしょうか。
ここでは、金融経済教育推進機構(J-FLEC)の調査結果をもとに年代別の貯蓄状況についてくわしく解説します。
1. 【みんなの貯蓄】60歳代「平均2683万円」は本当?「中央値」との驚きの格差
J-FLECの「家計の金融行動に関する世論調査2025年」によると、2人以上世帯の年代別平均貯蓄額(金融資産保有額)は以下のとおりです。
<金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)平均>
- 40歳代:1486万円
- 50歳代:1908万円
- 60歳代:2683万円
- 70歳代:2416万円
40歳代ですでに約1500万円、60歳代では約2700万円の貯蓄があり、老後への備えとして十分のように感じられます。しかし、中央値を見るとその実態は変化します。
<金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む)中央値>
- 40歳代:500万円
- 50歳代:700万円
- 60歳代:1400万円
- 70歳代:1178万円
中央値では老後を迎える60歳代でも1400万円となっており、平均額とは大きな乖離がある状況です。これは、多くの資産を持つ一部の世帯が平均値を引き上げている影響と考えられます。
中央値とは調査結果のちょうど半分に位置する数値ですので、より実態に近い結果といえるでしょう。
2. 【みんなの貯蓄】40代でも54.0%が貯蓄ゼロ?「貯められない世帯」の意外な実態
次に、年間手取り収入から金融資産へ振り分ける割合を年代別に確認してみます。
<手取り収入から金融資産へ振り分けた割合>
- 40歳代:37%
- 50歳代:34%
- 60歳代:30%
- 70歳代:32%
40歳代では、手取り収入の37%を金融資産へ振り分けています。たとえば年間の手取り収入が500万円の場合、185万円を金融資産へ振り分ける計算ですので、毎月約15万円も金融資産へ充てていることとなります。
しかし、注目すべきは「まったく振り分けを行わなかった世帯」の割合です。
<金融資産へまったく振り分けを行わなかった世帯>
- 40歳代:54.0%
- 50歳代:58.1%
- 60歳代:67.0%
- 70歳代:76.0%
働き盛りの40~50歳代でも、半数以上がまったく貯蓄ができていない状況となっています。安心して老後を迎えるためには、どのような取り組みを行えばいいのでしょうか。
次の章では、家計管理で今やるべきことを年代別に紹介していきましょう。
3. 【みんなの貯蓄】元銀行員が解説!家計管理で今やるべきこと
3.1 40歳代は「支出の最大化」を乗り越える
40歳代は、住宅ローンの返済や子どもの教育費が重なり、支出が最も膨らみやすい時期です。収入がある程度増えていても手元に残りにくく、「貯蓄ができていない」と感じる世帯が多くなります。
そんな40歳代では、まず固定費の見直しに取り組むことが重要です。通信費や保険料、サブスクリプションサービスなどを定期的に確認し、「削減できる支出はないか」ということを点検しましょう。
また、支出がひと段落する50歳代に向けて、先取り貯蓄の仕組みを小さくでも整えておくと、その後の貯蓄ペースが大きく変わります。
3.2 50歳代は老後資金準備のラストスパート
いよいよセカンドライフが近づく50歳代では、老後資金を準備するラストスパートに入ります。子育てがひと段落して、貯蓄に回す余裕が増えてくる方もいるかもしれません。
この時期に取り組みたいのが、老後資金の具体的な算出です。セカンドライフの暮らし方や収入の変化などを踏まえたうえで、「65歳時点で老後資金がいくら必要か」ということを細かく計算してみましょう。
それにより、「現在の貯蓄からどれくらい足りないか」「そのためには毎月いくら貯蓄に回す必要があるか」ということが明確になります。
3.3 60歳代は「守りながら使う」への転換期
60歳代では、退職金や保険の満期金などまとまった金額を受け取ることが多くなる時期です。その一方、定年退職を迎えて資産の取り崩しが始まるタイミングでもあります。
60歳代で大切なのは、「これまで貯めた資産をいかに長持ちさせるか」ということです。まずは家計がどのように変化するかをきちんと把握し、なるべく取り崩し額を最低限に抑えることを意識してください。
また、これまで株式や投資信託などで運用に取り組んでいた場合は、ポートフォリオを守りの構成へ変えることも検討してみましょう。
3.4 70歳代は収入と支出を正しく把握する
60歳代では仕事を続ける人も多い一方、70歳代になると公的年金だけで暮らす世帯も増えてきます。
この世代で大切なのは、毎月の収入と支出を正しく把握することです。「年金だけで生活費を賄えているのか」「賄えない場合、毎月どれくらいの赤字が出ているのか」ということを可視化できるようにしましょう。
赤字が出る場合は、今ある貯蓄で何年間取り崩しができるのかシミュレーションすることも重要です。
4. 【みんなの貯蓄】毎月の貯蓄割合を見直してみよう
一般的に、貯蓄の目安は「手取り収入の20~30%」といわれています。ただし、ライフステージや家族構成などによって適切な貯蓄割合は異なります。
大切なのは、きちんとライフプランを描いたうえで貯蓄の目標額を設定することです。人生100年時代といわれる現在、豊かなセカンドライフを送るためにもまずは毎月の貯蓄への取り組み方を見直してみましょう。
参考資料
椿 慧理