6月を迎え、自動車税や固定資産税、そして「住民税決定通知書」など、税金の納付書が次々と届く時期になりました。

長引く物価高の中で、まとまった出費が重なることに、頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。

特に、主な収入源が年金となるシニア世代にとって、家計のやりくりは現役世代以上に切実な問題です。

しかし、すべての高齢者世帯が経済的に厳しいわけではなく、計画的な資産形成によって4000万円以上の資産を築いている世帯も存在します。老後の経済状況には、大きな格差が生まれているのが現実です。

「老後資金の準備が大切」と分かっていても、日々の生活費や税金の支払いに追われ、なかなか貯蓄にまで手が回らないという方もいるかもしれません。

本記事では、公的なデータを基に、シニア世代の生活実感や貯蓄の現状に迫り、これからの暮らしとお金について考えていきます。

1. 70歳代の約3割が「年金だけでは生活困難」と回答。シニアのリアルな生活意識とは

年金収入を主な生活の糧とするシニア世代は、現在の暮らしをどのように感じているのでしょうか。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)が公表した「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとに、60歳代と70歳代の年金に対する意識や、生活にゆとりを持てない理由について見ていきましょう。

1.1 年金暮らしへの意識調査:世帯構成・年代別の結果

「年金に対する意識と、年金にゆとりがない理由」1/6

「年金に対する意識と、年金にゆとりがない理由」

出所:J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」をもとにLIMO編集部作成

【二人以上世帯】

60歳代

  • 年金で特に不自由なく生活できる:12.9%
  • ゆとりはないが、日々の生活費はまかなえる:53.5%
  • 日々の生活費をまかなうのも難しい:33.6%

70歳代

  • 年金で特に不自由なく生活できる:12.3%
  • ゆとりはないが、日々の生活費はまかなえる:61.2%
  • 日々の生活費をまかなうのも難しい:26.5%

【単身世帯】

60歳代

  • 年金で特に不自由なく生活できる:8.6%
  • ゆとりはないが、日々の生活費はまかなえる:40.7%
  • 日々の生活費をまかなうのも難しい:50.7%

70歳代

  • 年金で特に不自由なく生活できる:12.3%
  • ゆとりはないが、日々の生活費はまかなえる:52.2%
  • 日々の生活費をまかなうのも難しい:35.5%

この調査結果から、世帯の形や年代にかかわらず、「年金で特に不自由なく生活できる」と回答した層は1割程度にとどまることがわかります。

中でも注目されるのは60歳代の単身世帯で、「日々の生活費をまかなうのも難しい」という回答が50.7%と半数に達しており、シニアの家計が厳しい現実に直面していることを示しています。

1.2 生活のゆとりを失わせる最大の要因は「物価の上昇」

さらに、年金生活でゆとりを感じられない理由を尋ねたところ、すべての世帯・年代で最も多かった回答は「物価上昇等」(51.0%〜57.9%)でした。

次いで「医療費の個人負担増」や「年金支給額の切り下げ」が挙がっており、長期化するインフレが年金暮らしの家計を直撃している様子がうかがえます。

年金収入のみでゆとりある生活を送るのは簡単ではなく、暮らしの安心感は、現役時代にどれだけの貯蓄を準備できたかに左右されるといっても過言ではありません。

次の章では、高齢者世帯のリアルな貯蓄額について掘り下げていきます。

2. 65歳以上の二人以上世帯、貯蓄4000万円超は約2割。平均値と中央値のリアル

総務省統計局の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、「世帯主が65歳以上」の二人以上世帯の貯蓄額はどのくらいなのでしょうか。

平均値と中央値、そして詳しい分布状況を見ていきましょう。

二人以上世帯のうち「世帯主が65歳以上のシニア世帯」貯蓄額の平均・中央値2/6

二人以上世帯のうち「世帯主が65歳以上のシニア世帯」貯蓄額の平均・中央値はいくら?

出所:総務省統計局「家計調査報告(貯蓄・負債編)-2025年(令和7年)平均結果-(二人以上の世帯)貯蓄の状況」

二人以上世帯のうち「世帯主が65歳以上のシニア世帯」の貯蓄額

平均値と中央値

  • 平均値:2564万円
  • 貯蓄保有世帯の中央値:1777万円

平均貯蓄額は「2564万円」と、一見すると十分な金額に感じられます。

しかし、平均値は一部の富裕層が持つ極端に大きな金額に影響され、全体の数値を押し上げる傾向があります。

より実態に近い数値を把握するためには、データを金額順に並べたときの中央に位置する「中央値(1777万円)」を見ることが大切です。

では、貯蓄が4000万円を超える世帯は、具体的にどのくらいの割合で存在するのでしょうか。貯蓄額の分布から詳しく確認します。

2.1 【一覧】貯蓄額別の世帯割合。二極化の実態が明らかに

貯蓄額のより詳細な分布は、どのようになっているのでしょうか。

「貯蓄4000万円以上」の世帯割合を含め、全体像を確認していきましょう。

  • 100万円未満:7.7%
  • 100万円~200万円未満:3.7%
  • 200万円~300万円未満:3.4%
  • 300万円~400万円未満:2.8%
  • 400万円~500万円未満:3.2%
  • 500万円~600万円未満:3.4%
  • 600万円~700万円未満:2.6%
  • 700万円~800万円未満:2.9%
  • 800万円~900万円未満:3.0%
  • 900万円~1000万円未満:2.3%
  • 1000万円~1200万円未満:5.6%
  • 1200万円~1400万円未満:3.9%
  • 1400万円~1600万円未満:4.4%
  • 1600万円~1800万円未満:3.1%
  • 1800万円~2000万円未満:3.3%
  • 2000万円~2500万円未満:8.2%
  • 2500万円~3000万円未満:6.2%
  • 3000万円~4000万円未満:9.0%
  • 4000万円以上:21.1%

データを見ると、「4000万円以上」の貯蓄を持つ世帯は21.1%を占め、これは約5世帯に1世帯という計算になります。

十分な資産を築けた世帯は、老後の経済的な不安も大きく軽減されるでしょう。

しかし、貯蓄額が少ない世帯も相当数存在しており、シニア世代の資産状況が二極化している実態が浮かび上がります。

もし老後資金が不足したり、物価高で想定より早く貯蓄が減ってしまったりした場合、最も現実的な対策は「定年後も働き続ける」ことかもしれません。

2021年4月に施行された改正高年齢者雇用安定法により、企業には70歳までの就業機会確保が努力義務として課されるなど、シニアが働きやすい環境も整いつつあります。

では、現在のシニアは実際に何歳くらいまで働いているのでしょうか。次の章で就業状況を確認します。

3. 働くシニアの現状:高齢者の就業率は年々高まる傾向に

内閣府が公表した「令和7年版高齢社会白書」によれば、高齢者の就業率は全体として上昇傾向にあることがわかります。

年齢階級別就業者数及び就業率の推移3/6

年齢階級別就業者数及び就業率の推移

出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書」

75歳以上では目立った変化はないものの、65~69歳では前年比1.6ポイント増の53.6%、70~74歳でも同1.1ポイント増の35.1%と、それぞれ就業率が上がっています。

また、「何歳ごろまで収入のある仕事をしたいか」という質問に対しては、「65歳くらいまで」が23.7%で最多となり、僅差で「働けるうちはいつまでも」が22.4%と続いています。

何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか(択一回答)4/6

何歳ごろまで収入を伴う仕事をしたいか(択一回答)

出所:内閣府「令和7年版高齢社会白書」

現在仕事で収入を得ている人に限定すると、「働けるうちはいつまでも」と答えた人の割合は33.5%まで上昇します。

働く動機は様々ですが、今後もシニア世代の就業率は高まっていくと考えられます。

次に、高齢者世帯の生活に直結する「年金の受給額」について見ていきましょう。

4. 厚生年金と国民年金の平均受給月額は?リアルな年金額を解説

日本の公的年金は、国民年金と厚生年金の2階建て構造で、老後の生活を支える重要な収入源です。

しかし、年金収入だけで生活を成り立たせている世帯は、決して多くありません。

現在のシニア世代は、毎月どのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。

4.1 厚生年金の平均受給額(月額)

厚生年金《平均月額の男女差・個人差に着目》5/6

厚生年金《平均月額の男女差・個人差に着目》

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

〈全体〉平均年金月額:15万289円

  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※上記の金額には国民年金部分が含まれます。

受給額は月1万円未満から30万円以上までと幅広く分布しており、個人差が大きいのが特徴です。

では、国民年金のみを受給している場合はどうでしょうか。

4.2 国民年金の平均受給額(月額)

国民年金《平均月額の男女差・個人差に着目》6/6

国民年金《平均月額の男女差・個人差に着目》

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

〈全体〉平均年金月額:5万9310円

  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

国民年金の受給額で最も多いのは「月額6万円以上7万円未満」の層です。

受給額は月1万円未満から7万円以上まで幅がありますが、保険料が原則として一律であるため、厚生年金と比較すると受給額の個人差は小さい傾向にあります。

5. まとめ:老後の安心感は「計画的な資産形成」と「健康維持」から

今回は「生活意識」「貯蓄額」「就業率」「年金額」という4つの公的データから、シニア世代の暮らしの現状を紐解きました。

調査からは、物価高の影響で「年金だけではゆとりある生活は難しい」と感じる世帯が多い現実が浮き彫りになりました。

その一方で、4000万円以上の資産を持つ世帯が2割以上存在するなど、現役時代の備えが老後の安心度に直結していることも事実です。

年金の受給額は人それぞれであり、年金だけで生活費が不足する場合は、貯蓄を取り崩すか、働き続けて収入を得るかで補うことになります。

実際に65歳以降も働き続けるシニアは年々増加しており、「長く働く」という選択肢は、老後の家計を支える上で一般的になりつつあります。

しかし、健康上の理由などから、誰もが希望通りに働き続けられるとは限りません。

安心して老後を迎えるためには、現役時代から計画的に資産形成に取り組むこと、そして長く活躍するための健康を維持すること、この「両輪」で準備を進めることが不可欠です。

参考資料

マネー編集部貯蓄班