75歳になると、それまで加入していた健康保険から後期高齢者医療制度へ自動で切り替わります。医療機関の窓口負担は1割・2割・3割の3区分に分かれ、判定は前年の所得をもとに毎年8月1日に切り替わる仕組みです。
今回は、最新の調査結果をもとに、2割負担の判定基準や配慮措置終了後の注意点について解説します。
1. 【後期高齢者医療】被保険者数「2073万人超」1人あたり年間98万円の医療費
厚生労働省が2026年6月15日に公表した「後期高齢者医療毎月事業状況報告(事業月報)総括表」によると、後期高齢者医療制度の被保険者数は制度発足以降、右肩上がりで増加を続けています。最新となる2026年2月時点の速報値では、全体の被保険者数が2073万9754人に達しています。このうち、窓口負担が3割となる「現役並み所得者数」は172万4578人で、全体の約8.3%を占める状況です。
一方で、同報告から直近1年間(2024年12月〜2025年11月)の被保険者1人当たりの医療費を算出すると、約98万円に達しています。この医療費の現状を背景に進む窓口負担の見直しは、決して高齢者の方だけに負担を求めるものではありません。高齢者自身が今後も安心して医療を受け続けられるよう、世代を超えて日本の医療体制を全員で守っていくための大切なステップとなっています。
2. 【後期高齢者医療】窓口負担《2割》の判定「課税所得」と「年金等収入」の2軸でみる
後期高齢者医療制度の窓口負担は原則1割で現役並み所得者だけが3割という時期が長く続いていましたが、2022年10月に2割が加わり、現在は1割・2割・3割の3区分で運用されています。
2025年9月末には1割から2割へ上がる人を対象とした外来配慮措置が3年の期限を終え、2割の対象者は本来の自己負担に切り替わりました。
2.1 2割の判定は「課税所得」と「年金等収入」の両方を見る
2割負担の判定は、世帯内の被保険者の状況を2つの軸で確認します。
1つ目の軸は、世帯の被保険者に住民税課税所得28万円以上145万円未満の人がいるかどうかです。2つ目の軸は、世帯の被保険者の「年金収入+その他の合計所得金額」が一定額以上あるかどうかです。
ここでいう住民税課税所得は、総所得金額等から各種所得控除を差し引いた後の金額です。住民税納税通知書では「課税標準」や「課税される所得金額」と記載されている数字に該当します。
年金収入は公的年金等控除を引く前の金額で計算し、遺族年金や障害年金は判定の対象から外れます。
両方の条件を満たす世帯が2割の対象となり、片方でも外れれば原則1割です。なお、住民税課税所得145万円以上の被保険者が世帯にいる場合は3割負担の判定に進みます(ただし、年収額が一定基準未満であれば、申請等により1割または2割負担となる特例もあります)。
3. 【後期高齢者医療】窓口負担《2割》年金月額に直すといくら?判定ラインをみる
判定ラインを月額に直してみると、自分の年金が2割の対象かどうか一目でわかります。なお判定に使う年金収入は、公的年金等控除を引く前の金額です。遺族年金や障害年金は計算に含まれません。
3.1 単身世帯は年金収入200万円、月約16万6000円が目安
世帯に75歳以上の被保険者が1人だけの場合、「年金収入+その他の合計所得金額」が200万円以上で2割の判定対象に入ります。
3.2 後期高齢者医療制度の窓口負担割合の判定基準
年金収入だけで生活する単身世帯なら、年200万円を12で割って月額に直すと約16万6000円です。
これは厚生年金(第1号)の男性平均月額16万9967円に近い水準で、現役時代に長く厚生年金に加入していた男性なら届く範囲にあたります。さらに住民税課税所得28万円以上145万円未満の条件も同時に満たす必要があり、2つの条件がそろって初めて2割の窓口負担となります。
なお年金額の改定で2026年度の年金額は前年度比で改定率1.9%の引き上げとなり、もともと200万円付近にいた人は判定ラインをまたいだケースもあります。判定は前年の所得をもとに行われるため、来年度の判定でどう動くか前もって確かめておくと安心です。
3.3 2人以上世帯は合計320万円、世帯単位で合算する
世帯に75歳以上の被保険者が2人以上いる場合、判定は世帯単位の合算で行われます。被保険者全員の「年金収入+その他の合計所得金額」の合計が320万円以上で、2割の判定対象に入ります。月額に直すと2人合計でおよそ26万6000円です。
夫婦ともに厚生年金を受給している世帯なら届きうる水準で、共働きで長く厚生年金に加入してきた夫婦は判定ラインに乗りやすい傾向があります。
判定対象となる年金は公的年金等控除を引く前の収入金額のため、確定申告書に出てくる年金の「所得」ではなく「収入」の数字をそのまま当てはめてください。
4. まとめにかえて
今回は、後期高齢者医療制度における「2割負担」の判定基準や配慮措置終了後の影響について解説しました。医療費の窓口負担は、前年の所得をもとに毎年8月1日に見直される仕組みとなっています。
物価高や年金改定、さらには保険料への上乗せなど、高齢期を取り巻く家計環境は変化しています。だからこそ、ご自身やご家族がどの負担区分に該当するのかを正確に把握しておくことが大切です。単身で年200万円、夫婦で年320万円という目安を、ぜひ一度実際の納税通知書などと照らし合わせてみてください。
事前に負担割合の変更を予測できていれば、医療費を含めた家計プランを慌てずに整え直すことができます。制度を正しく理解することは、これからの生活の安心へとつながる大きな一歩になります。早めの点検を心がけ、ゆとりあるセカンドライフに向けたポジティブな家計管理を進めていきましょう。
参考資料
苛原 寛