5. パートの働き方が変わる「106万円の壁」の見直し。年金制度改正の要点

2025年6月に成立した年金制度改正法には、パートやアルバイトなど短時間で働く人の働き方に大きく関わる「年収106万円の壁」の見直しが盛り込まれました。

前の章で触れたように、老後も働き続けることを考えている人にとっては重要な制度変更となるため、その内容を正しく理解しておくことが望ましいでしょう。

5.1 「年収106万円の壁」とは何か?

一般的に「106万円の壁」とは、短時間労働者の年収が106万円を超えた場合に、配偶者の扶養から外れて自身で社会保険(健康保険・厚生年金)に加入し、保険料を負担する必要が生じる目安のことです。

社会保険料の負担によって一時的に手取り収入が減ることから、意図的に勤務時間や収入を調整する、いわゆる「働き控え」の一因とされてきました。

さらに、社会保険の適用範囲はこれまでも段階的に拡大されてきました。

2024年10月以降は、従業員51人以上の企業で働く短時間労働者も対象に含まれています。

今回の制度改正では、こうした条件の見直しが進められ、「賃金要件の撤廃(3年以内)」と「企業規模要件の段階的廃止(10年程度)」が決定しました。

5.2 社会保険の加入対象拡大:短時間労働者の加入要件見直し

「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し6/6

「社会保険の加入対象の拡大」短期労働者の加入要件の見直し

出所:厚生労働省「年金制度改正法が成立しました」

2025年時点では、パートタイムなどの短時間労働者が社会保険に加入するには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

  1. 週の所定労働時間が20時間以上
  2. 2カ月を超える雇用の見込みがある
  3. 学生ではない
  4. 所定内賃金が月額8万8000円以上(賃金要件)
  5. 従業員数51人以上の企業で働いている(企業規模要件)

今回の改正によって、このうち「賃金要件」と「企業規模要件」は順次撤廃されることになります。

いわゆる「106万円の壁」は、最低賃金の上昇動向も考慮しつつ、おおむね3年以内に解消される方向です。また、企業規模による適用制限についても、今後10年程度かけて段階的に廃止される見通しとなっています。