2. 意外な収益源?利益の約4分の1を稼ぐ「モルガン・スタンレー」
事業セグメントの分散に加えて、MUFGの収益構造を理解する上で絶対に外せない「もう一つの巨大な柱」があると泉田氏は強調します。
それが、アメリカの世界的投資銀行である「モルガン・スタンレー」の存在です。
MUFGはモルガン・スタンレーを持分法適用会社(出資比率に応じて利益を自社の業績に取り込める関連会社)として抱えています。
なぜ日本のメガバンクがアメリカのトップ投資銀行を傘下に収めているのでしょうか。その背景には、歴史的な金融危機の際の劇的な決断がありました。
「リーマンショックの後、もう本当にただ同然であったモルガン・スタンレーをMUFGが買うという奇跡が起きたわけです」(泉田氏)
2008年のリーマンショック時、世界の金融機関が次々と危機に陥る中、MUFGは巨額の資金を投じてモルガン・スタンレーに出資しました。
「投資の世界でよく『落ちてくるナイフは掴むな』っていう格言があるんだけど、MUFGはナイフを掴んだんですよ。そしたらそれが大成功だった」(泉田氏)
この「大成功」は、現在の決算数字に色濃く反映されています。当期純利益が前期から約5,863億円増加した要因を示す「増減ウォーターフォールチャート」を見ると、本業の儲けである顧客部門の伸び(+2,500億円)に次いで、「持分法投資損益」が+2,100億円と大きく貢献しています。
泉田氏の推計によれば、このうち約2,000億円がモルガン・スタンレーの増益効果によるものです。
さらに全体に占める割合を見ると、その存在感は圧倒的です。MUFG全体の当期純利益2兆4,272億円のうち、モルガン・スタンレーからの利益取り込み分は6,764億円に上ります。
泉田氏は「4分の1ぐらいある」と、その規模の大きさを指摘します。
また、三菱UFJ銀行単体の利益(1兆1,352億円)とモルガン・スタンレーの利益(6,764億円)を合計すると約1.8兆円となり、これだけでグループ全体の純利益の約4分の3(74.6%)を占める計算になります。
つまり、複雑に見えるMUFGの業績も、「国内の銀行ビジネス」と「アメリカの投資銀行ビジネス」の2つを注視することで、その大半を把握できるということです。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日