2. 「劣後債(ハイブリッド)」とは?「実質5年債」と見られる理由も解説
今回の債券は、一般的な「普通社債」ではなく「劣後債(ハイブリッド)」と呼ばれる特殊な仕組みを持っています。
ハイブリッド債(劣後特約付社債)とは、負債(社債)と資本(株式)の両方の性質を併せ持つ証券のことです
会計上は社債ですが、一般的な普通社債と比べて返済順位が低く設定されているほか、満期が超長期に設定されていたり、利息の支払いを任意で先送りできたりする特殊な条件がついています
企業側は借金でありながら格付機関から「資本」の一部として認定されるメリットがあり
2.1 ハイブリッド債はワインなら「ロゼワイン」
ハイブリッド債が分かりにくいという方のために、ワインでたとえてみます。
ハイブリッド債は、ワインで言うといわば「ロゼワイン」のようなものです。
- 赤ワイン(株式/エクイティ):味わいが深くダイナミックでリターンも大きいですが、少しクセ(変動リスク)も強いです
- 白ワイン(普通社債/シニア債):すっきりしていて手堅く、ベースとして安定しています(リスクが低い)
- ロゼワイン(劣後債/メザニン):赤と白のまさに「中間(ハイブリッド)」。普通社債(白)のような安定した利息を得つつ、株式(赤)に近いリスクを少しだけ引き受けることで、味わい(利回り)を深めています
ロゼワインですから、普通の白ワインよりも高い利回り(深い味わい)を楽しめるのが魅力です。
「白ワイン(社債)では物足りないけれど、株式(赤ワイン)ほどの刺激は求めていない」という方にぴったりの投資商品です。
2.2 なぜ実質「5年債」なのか?(ステップアップ条項の意図)
この債券の最終的な満期は35年後(2061年)に設定されていますが、5年後(2031年)以降の利払日に、ソフトバンクグループの判断で全額を返済できる権利(期限前償還条項)が付いています 。
ここで重要になるのが「ステップアップ条項」です。もし5年後に早期償還を行わず債券を存続させた場合、それ以降の金利は「1年国債金利+3.160%(当初の上乗せ幅)」に加え、さらに0.25%(25bps)が追加で上乗せされる(ステップアップする)というルールが盛り込まれています。
なぜこのような条項が盛り込まれているのでしょうか?
それは、発行体(ソフトバンクグループ)に対する「早期償還への強いプレッシャー(ペナルティ)」として機能させるためです。5年後に返済を見送ると、発行体は通常よりも高い金利を支払い続けなければならず、財務的な負担が重くなります。
そのため、「5年経ったら、わざわざ高い追加金利を払うよりも、早期償還して新しい債券で資金を調達し直した方が合理的だ」と発行体に判断させる設計になっているのです。
これが、期間35年の債券が市場で「実質的な5年債」として扱われる最大の理由です。
2.3 第5回債も期限前償還を決定、「実質5年」の実績あり
同社は実際、2021年6月に発行した第5回のハイブリッド債も、全額(4050億円)を期限前償還することを今年3月30日に決定しています。
償還期限2056年6月21日だった、第5回債は2026年6月21日に償還します。
4月の前回債は、まさにこの償還資金を調達するために発行されたものでした。
ただし、期限前償還はあくまで「発行体の選択(権利)」です。
大幅な金利上昇や経営環境の変化などでソフトバンクグループが任意償還を行わないと判断すれば、5年後に元本が返ってこず、最長2061年(35年後)の満期償還日まで資金が引き出せない(換金しづらい)リスクももちろん残る点には注意が必要です。