7月7日に内閣府経済社会総合研究所が公表した「景気動向指数(令和8(2026)年5月分速報)結果の概要」によると、景気の現状を示す一致指数(速報値・令和2年=100)は、前月と比較して0.4ポイント上昇の118.5を記録しました。

マクロな景気指標に持ち直しの動きが見られる中、社会・経済環境の変化が家計に与える影響への関心が高まっており、中長期的な生活設計の土台となる公的年金の実態についても、より正確な把握が求められています。

山﨑 夏子
IFAとして1500世帯以上のご相談に携わってきた経験からも、平均値だけを見て安心したり不安になったりする方は多いですが、実際の受給額は働き方によって大きく異なります。まずはご自身の年金見込み額を確認することから始めましょう。

ニュースなどで「厚生年金の平均受給額は約15万円」と紹介されることがありますが、その金額はあくまで平均値であり、実際の受給額は加入期間や現役時代の収入によって大きく異なります。

また、日本の公的年金制度は国民年金と厚生年金による「2階建て」の仕組みとなっており、加入する制度によって受給額にも差が生じます。

本記事では、公的年金制度の基本的な仕組みを整理するとともに、2026年度の年金額のモデルケースを紹介します。

あわせて、物価上昇による資産の目減りに不安を感じる40歳代会社員の相談事例や、44歳から65歳までNISAで積み立てた場合のシミュレーションもご紹介します。将来の資産づくりの参考としてお役立てください。

1. この記事の3つのポイント

  •  公的年金は国民年金と厚生年金の「2階建て」構造で、2026年度は年金額が引き上げられた
  •  ライフコース別に見ると、会社員か自営業か、働き方によって年金月額に11万円以上の差が出ることも
  •  実際の年金見込み額は「ねんきんネット」で確認でき、老後の資産形成の判断材料になる

2. 公的年金は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造

日本の公的年金制度は、すべての人の基礎となる「国民年金(基礎年金)」と、会社員や公務員などが加入する「厚生年金」の2つで構成されており、この仕組みは一般的に「2階建て構造」と呼ばれています。

それぞれの制度の特徴を見ていきましょう。

2.1 公的年金制度のしくみをおさらい

厚生年金と国民年金の仕組み1/5

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

【1階部分】国民年金(基礎年金)

  • 加入対象:原則として日本に住む20歳から60歳未満のすべての人
  • 保険料:全員定額、ただし年度ごとに改定される(※1)
  • 受給額:保険料を全期間(480カ月)納付した場合、65歳以降で満額の老齢基礎年金(※2)を受給できる。未納期間分に応じて満額から差し引かれる

※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円

【2階部分】厚生年金

  • 加入対象:会社員や公務員、またパートなどで特定適用事業所(※3)で働き一定要件を満たす人が、国民年金に上乗せで加入
  • 保険料:収入に応じて(上限あり)決定される(※4)
  • 受給額:加入期間や納付済保険料により、個人差が出る

厚生年金は、国民年金に追加して加入する制度であり、加入対象や保険料の計算方法、受給額の決まり方が国民年金とは異なります。

そのため、将来受け取る年金額は、加入歴や現役時代の収入によって大きく変わります。

また、公的年金額は物価や現役世代の賃金動向を踏まえ、毎年度見直される仕組みです。

※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

3. 【2026年度】年金額のモデルケースを確認

2026年度は、物価や賃金の動向を反映し、公的年金額が引き上げられました。

厚生労働省が公表したモデルケースは次のとおりです。

2026年度(令和8年度)の年金額の例2/5

2026年度(令和8年度)の年金額の例

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額)):7万608円(1人分※1)
  • 厚生年金:23万7279円(夫婦2人分※2)

※1昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。このように年齢により受給額が異なります。
※2男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。

国民年金のみの場合、満額(※3)でも月額で7万円ほどとなっており、仮に繰下げ受給(※4)の上限年齢である75歳まで受給を待機したとしても、月額13万円程度が上限となります。

※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始年齢を66歳~75歳までの間に後ろ倒しする制度。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給開始した場合の増額率は84%。

4. 現役時代の働き方によって年金額は大きく変わる

前章で紹介した年金額のモデルケースは、あくまで一定の条件を満たした世帯を想定したものです。

実際には、厚生年金の受給額は現役時代の働き方や加入期間、収入によって大きく異なります。

本章では、厚生労働省の資料から、多様なライフコースに応じた年金額を見ていきましょう。

多様なライフコースに応じた年金額(概算)3/5

「多様なライフコースに応じた年金額(概算)」の図

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

4.1 会社員として長く勤務した男性のケース

  • 想定:約40年間会社員として働き、平均年収は約610万円(月額換算約50万9000円)
  • 年金月額の目安: 17万6793円

4.2 自営業・フリーランスが中心の男性のケース

  • 想定:主に自営業・フリーランスとして働き、厚生年金への加入期間は約7年
  • 年金月額の目安: 6万3513円

4.3 会社員としてキャリアを積んだ女性のケース

  • 想定:約33年間会社員として勤務し、平均年収は約427万円(月額換算約35万6000円)
  • 年金月額の目安: 13万4640円

4.4 自営業として働いた女性のケース

  • 想定:自営業を中心に働き、厚生年金への加入期間は約6年
  • 年金月額の目安: 6万1771円

4.5 専業主婦期間が長い女性のケース

  • 想定:専業主婦の期間が長く、扶養内でパートタイム勤務をしていたケース
  • 年金月額の目安: 7万8249円

ライフコース別の年金額を見ると、会社員として長く勤務した男性では、平均年収約610万円(月額換算50万9000円)で約40年間就業したケースで、年金月額の目安は17万6793円となっています。

一方、自営業・フリーランスが中心で厚生年金への加入期間が約7年と短い男性のケースでは、年金月額の目安は6万3513円にとどまり、11万円以上の差があります。

女性についても、会社員としてキャリアを積んだケース(平均年収約427万円、33年間就業)では年金月額の目安が13万4640円である一方、自営業として働いたケース(厚生年金への加入期間が約6年)では6万1771円、専業主婦期間が長く扶養内でパートタイマーとして働いたケースでは7万8249円となっています。

このように、公的年金は「男性だから」「女性だから」といった違いだけでなく、会社員として働いた期間や自営業だった期間、扶養内で働いた期間など、これまでの働き方によって受給額が大きく変わります。

5. 自分の年金見込み額は「ねんきんネット」で確認できる

ここまで紹介した金額は、あくまで平均値やモデルケースです。

実際の年金額は加入期間や収入によって異なるため、自分自身の受給見込み額を確認しておくことが重要です。

その際に活用したいのが、日本年金機構が提供する「ねんきんネット」です。

ねんきんネット4/5

ねんきんネット

出所:日本年金機構「ねんきんネット」

自宅のパソコンやスマートフォンから24時間いつでも利用でき、将来の年金見込み額や加入履歴を確認できます。

なかでも便利なのが「年金見込額試算」機能で、現在と同じ条件で働き続けた場合の年金見込み額を確認できるほか、受給開始年齢を変更した場合や、働き方を変えた場合など、さまざまな条件でシミュレーションできます。

さらに、加入履歴や保険料の納付状況、未納期間の有無も確認できるため、未納期間がないかを早めに把握することにも役立ちます。

老後の資金計画を立てる際は、平均的な年金額を参考にするだけでなく、自分が将来どれくらい受け取れる見込みなのかを確認しておくことが大切です。

6. 自分の年金見込み額も確認して老後に備えよう

本記事では、公的年金制度の基本的な仕組みを整理するとともに、2026年度の年金額のモデルケースや、現役時代の働き方による受給額の違いについて紹介しました。

2026年度は年金額が引き上げられましたが、国民年金の満額は月額約7万円であり、厚生年金の受給額も加入期間や現役時代の収入によって大きく異なります。

「月15万円以上の厚生年金を受け取っている人がどれくらいいるのか」という割合や、より詳しい平均受給額の内訳についてはこちらの記事でくわしく解説しています。あわせてご参考ください。
【国民年金+厚生年金】月15万円(年180万円)以上もらう人は何%?平均受給額を一覧で確認!私的年金の見直しで押さえておきたいポイント 日本の公的年金制度の仕組みをおさらい!ライフイベント別の年金手続き(転職・退職・住所変更・死亡)も

中本 智恵
年金の見込み額を確認したことで、漠然とした不安が具体的な準備行動に変わった方もいると思います。平均額やモデルケースは、あくまで自分の状況と比較するための「ものさし」です。
特にご自身の働き方が、会社員・自営業・扶養内パートのどれに近いかによって、将来の受給額は大きく変わります。モデルケースの数字をそのまま当てはめるのではなく、加入履歴や見込み額を実際に確認したうえで、不足が見込まれる部分を早めに資産形成でカバーしていく視点を持つとよいでしょう。
特に、現役時代の働き方を変えるタイミング(転職・独立・扶養内での勤務など)がある方は、その都度見込み額が変わるため、こまめに確認する習慣をつけておくと安心です。

年金見込み額やその他の収入、生活費、税金・社会保険料を整理し、自分の家計における毎月の不足額を確認しておきましょう。