担当してくれたナースはクリスさんです。彼女は定期的に娘の成長を確認してくれただけではありません。歩くのが遅いのを心配した筆者を安心させてくれたのも、言葉が出るのが遅かった時に、言語療法士を手配してくれたのも彼女です。幼児になっても夜、通しで眠ってくれない時には、プランケット内に在籍する睡眠の専門家を紹介してもらいました。

それだけではありません。筆者家族が右も左もわからない新しい町に落ち着くのにずいぶん手を貸してくれました。クリスさんは、自分が担当する中で同じぐらいの年齢の子がいる親と連絡を取って筆者に引き合わせてくれたり、親のおしゃべり会ともいえるコーヒー・グループにも紹介してくれました。そして、クリスさんを通して知り合ったママ友がさらにママ友をよび、お互いの家を行き来したり、一緒に遊びに出かけたりするようになったのです。

クリスさんの話によれば、産後、うつ気味のお母さんがいれば話を聞いてあげたり、余計に時間を割いて、母親に赤ちゃんから離れ、リフレッシュする時間をあげたりするとのことでした。少しの間でも赤ちゃんを信頼できる人に任せ、距離を置くことで、気持ちの切り替えがつくことがあります。クリスさんのちょっとした気配りで、きっと多くの母親が助かっているだろうことは想像に難くありません。

筆者の目にはだんだんクリスさんが、家族を守ってくれる「スーパーウーマン」に見えてきたものでした。

ほかの組織との連携プレーで、安心できる育児環境を

筆者は引っ越す前、仕事でプランケット・ナースの取材をしたことがあります。その時感心したのは、プランケット・ナースが面倒を見るのは、子どもだけはないということ。ナースは子どもも親も含む家族全体に目を行き届かせているのです。

たとえば、家族の誰かがアルコールや薬物依存症だったり、家庭内暴力が日常化していたりしたら、子どもは健康で幸せな生活を送ることはできません。取材したナースは、プランケット・ナースはこうした家庭問題を解決する手助けをすることも少なくないと話してくれました。社会福祉関係の組織などと連携を取り、子どものいる家庭を支援するそうです。温かで思いやりにあふれる家族あってこそ、子どもは健康で幸せに育つことができるのです。

徹底して面倒を見てくれるプランケットのサービスを受けるための料金はというと、ほぼすべてにおいて無料です。慈善団体として、政府、民間、一般人の寄付で運営されているのです。

自分の子がプランケット・ベビーだった家族にとり、プランケットは世話になった愛着がある組織といえます。街角募金などを通じて、恩返しの寄付をする人も少なくありません。プランケットに支えられた家族が、今度はプランケットを支えるというわけです。こうやって、今までもそうだったようにプランケットの伝統は未来に引き継がれていくのです。

クローディアー 真理