私たちは65歳になると、老齢年金を受け取れます。しかし、物価高などの影響により、年金収入だけでは生活を維持するのが難しい人もいるでしょう。

最低限度の生活を維持できない場合、生活保護の対象になる可能性があります。生活保護は年金との併給ができますが、注意したい点もいくつかあります。この記事では、年金と生活保護の併給時の注意点や年金の平均受給額などを解説します。

1. 【注意点も】年金と生活保護の「両方受給」は可能

年金を受け取っている人でも、生活保護を利用できる可能性はあります。

生活保護は、資産や能力などを活用しても生活に困窮する人に対し、必要な保護をする制度です。健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的としています。

生活保護は、原則として世帯単位で行われます。利用する際の要件は、以下のとおりです。

生活保護を受けるための要件1/3

生活保護を受けるための要件

出所:厚生労働省「生活保護制度」をもとに筆者作成

  • 資産の活用:預貯金や生活に利用されていない土地・家屋などがあれば売却して生活費に充てること。
  • 能力の活用:働ける場合は、能力に応じて労働すること。
  • あらゆるものの活用:年金や手当など他の制度で給付を受けられる際は、それらを優先して活用すること。
  • 扶養義務者の扶養:親族などから援助を受けられる際は、援助を受けること。それでもなお収入が最低生活費に満たない場合は、保護を適用する。

年金給付が受けられる場合、まずは年金受給が優先されます。上記を活用してもなお収入が最低生活費に満たない場合に、はじめて生活保護が受けられます。

年金受給時に生活保護を受ける際に注意したいのは、保護費が満額受け取れるわけではない点です。生活保護費は、厚生労働大臣が定める基準に基づいて計算される「最低生活費」から収入を差し引いた金額が支給されます。たとえば、最低生活費が月12万円、年金収入が月5万円であれば、「12万円-5万円=7万円」が支給されます。

支給される保護費2/3

支給される保護費

出所:厚生労働省「生活保護制度」

年金に生活保護費が上乗せされるわけではなく、最低生活費に足りない分が生活保護費として補填されるイメージだと押さえておきましょう。

次章では、国民年金の平均受給月額を解説します。

2. 国民年金の平均は「月5万円」

年金は、多くの人が受給する国民年金(基礎年金)と、会社員や公務員が受給できる厚生年金に分かれます。国民年金のみを受給する人は、厚生年金を受け取る人に比べて年金額が低くなりやすく、生活保護の対象になる可能性があります。

国民年金の平均受給月額を見てみましょう。

年金月額階級別老齢年金受給権者数3/3

年金月額階級別老齢年金受給権者数

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

  • 〈全体〉平均年金月額:5万9310円
  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

受給額ごとの人数

  • 1万円未満:5万1828人
  • 1万円以上~2万円未満:21万3583人
  • 2万円以上~3万円未満:68万4559人
  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 4万円以上~5万円未満:388万83人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
  • 7万円以上~:299万7738人
  • 合計:3345万4617人

国民年金の平均受給月額は5万円台です。受給人数の内訳を見てみると、多くの人が6万円台を受給しています。2026年度の国民年金の受給額(満額)は月額7万608円ですから、満額に近い水準で受け取っている人が多いといえるでしょう。

しかし、総務省の家計調査によれば、65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の1ヶ月あたりの消費支出は14万8445円となっており、国民年金の平均受給月額を大きく上回っています。年金以外の資産や貯蓄がなければ、国民年金だけで生活するのは厳しいケースもあるでしょう。なお、収入や資産などの状況によっては、生活保護の受給対象となる可能性があります。

次章では、年金受給と生活保護に関するよくある誤解について解説します。

3. 年金受給と生活保護に関する「よくある誤解」を解説

年金と生活保護の併給は可能ですが「収入が大きく増える」「誰でも受けられる」というわけではありません。誤解されやすいポイントをいくつか見ていきましょう。

3.1 両方を受け取るのは二重取りでは?

年金と生活保護の両方を受給するのは「単に収入が増える二重取りではないか」と感じる人もいるかもしれません。しかし、実際は、最低生活費の不足分を補う仕組みなのです。

前述のとおり、生活保護費は最低生活費から収入を差し引いた分が支給されます。あくまで基準に満たない部分を補填するものであるため、保護対象と認められれば問題なく受給できます。

一方「基礎年金が満額でも最低生活費に届いていない」「厚生年金を受給してギリギリ最低生活費を超える」といったような社会保障の構造や、最低生活費を引き上げる要因になる物価高への対策が、今後の課題といえるでしょう。

3.2 収入が足りなければ誰でも受けられるのでは?

年金収入が不足していても、生活保護を受けられるとは限りません。生活保護は、収入や資産の状況などを総合的に勘案して受給の可否が判断されます。

なお、利用できる資産がある場合はその活用が求められますが、居住用の持ち家については保有が認められる場合もあります。また、扶養義務者による扶養は生活保護に優先されるものの、同居していない親族に相談してからでなければ申請できないというものではありません。

十分な収入や活用できる資産がある場合は、生活保護の対象とならないことがあります。また、扶養義務者から援助を受けられる場合には、その状況も考慮されます。

生活保護は生活に困窮した方を支えるための制度であり、申請をためらう必要はありません。一方で、受給には一定の要件があり、個々の状況に応じて受給の可否が判断されます。

次章では、生活保護の相談時に必要になる書類を解説します。

4. 生活保護の相談時に確認したい書類

生活保護について相談や申請をする際は、地域を所管する福祉事務所や自治体の福祉関連の窓口が担当になります。年金を受け取っている人が相談する際は、以下の書類について整理・用意しておくのが望ましいです。

  • 年金振込通知書
  • 預貯金通帳
  • 家賃がわかる書類
  • 医療費や介護費の明細
  • 年金以外の収入がわかる資料

まずは、収入がわかる書類として年金振込通知書を用意しておきましょう。年金額と最低生活費の差額が、生活保護費になるためです。年金以外に収入がある場合は、その金額がわかる書類も、あわせて用意してください。また、収支や資産状況の確認として預貯金通帳も準備しておきましょう。

生活保護費は生活費だけでなく、住居費や医療費への扶助もあります。そのため、家賃がわかる書類や医療費明細なども用意しておくとよいです。

生活保護の申請手続きは、上記のような書類がなくても可能です。しかし、手元に書類を用意しておけば、手続きがスムーズに進みます。実際の手続きでは、上記の書類の提出に加え、申請書に氏名や住所、保護を受ける理由などを記載するのが一般的です。

上記の書類などを用意して認定を受け、実際に支給が始まると、毎月収入状況の申告が必要です。また、年に数回はケースワーカーの訪問があることも押さえておきましょう。

5. まとめ

年金と生活保護は併給できますが、生活保護を受けるには一定の要件を満たす必要があります。一方で、国民年金の平均受給額は月5万円台であり、年金だけでは生活が難しく、生活保護の対象となる可能性もあります。

必要な書類が揃っていなくても申請は可能であり、同居していない親族に相談してからでなければ申請できないというものでもありません。

生活保護を必要とする可能性は誰にでもあります。生活に困りごとがある場合は、一人で抱え込まず、福祉事務所や自治体の窓口へ相談してみましょう。

※LIMOでは、個別の相談・お問い合わせにはお答えできません。

参考資料