6月に入り、少しずつ梅雨の足音が聞こえ始める時期となりました。

雨の日が続くとどうしても外出が億劫になりがちですが、特に高齢者の一人暮らしにおいては、家に閉じこもる時間が長くなることで、社会との繋がりが絶たれる「孤立」へと直結しやすくなります。

孤立は誰にもSOSを出せない状況を生み、経済的な困窮を家の中で静かに深刻化させてしまうのです。国のセーフティーネットである生活保護の現在の受給者数は約198万人に達しており、日本の人口100人あたり1.61人が利用している計算になります。

全体の受給者数や世帯数は減少傾向にある一方で、新規の申請件数はわずかに増加しており、生活の厳しさが続いている状況がうかがえます。

特に注目されるのが、受給世帯の過半数を占める「単身の高齢者世帯」の多さです。本記事では、こうした世帯構成の特徴に触れながら、生活保護の制度や支給の仕組みについて整理していきます。

1. 【生活保護】受給者の51.2%が「単身高齢世帯」という結果に

厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(令和8年2月分概数)」によれば 、2026年2月時点で生活保護の受給者数(被保護実人員数)は1,977,156人(約198万人)となっています。

これは、日本の人口100人あたり1.61人が受給している水準に相当します。

全体の動向としては、被保護実人員数および世帯数はいずれも前年同月と比べて減少しています。また、新規の申請件数や保護開始世帯数についても減少しています。

  • 保護の申請件数:18,058件(前年同月比 1,033件減少 / 5.4%減)
  • 保護開始世帯数:16,380世帯(前年同月比 1,135世帯減少 / 6.5%減)

世帯構成の内訳を確認してみましょう。

【世帯類型別世帯数及び割合(保護停止中を含まない)】

  • 高齢者世帯:54.8%  
  • 単身世帯:51.2%  
  • 二人以上世帯:3.6%  
  • 高齢者以外世帯:45.2%  
  • 母子世帯:3.6%  
  • 障害者・傷病者世帯:25.7%  
  • その他の世帯:15.9%

なかでも注目されるのは、受給世帯の約半数(51.2%)を単身の高齢者世帯が占めている点です。このことから、現在の生活保護が「年金だけでは暮らしが成り立たない単身高齢者」を支える役割を担っていることが読み取れます。

さらに、障害者・傷病者世帯も25.7%を占めており、前年同月比でその割合はわずかに増加(0.7%増)しています。

2. 高齢者世帯の生活保護利用が多い背景とは?家計収支から見える実情

総務省の「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」を参照すると、65歳以上の単身無職世帯における家計の状況が明らかになります。

【65歳以上 単身無職世帯】

  • 実収入:13万1456円
  • 可処分所得(手取り収入):11万8465円
  • 消費支出:14万8445円
  • 毎月の赤字額:2万9980円

平均的な家計収支を見ると、単身の高齢者世帯では1カ月あたり約3万円の資金が不足していることがわかります。

このような状況は一部の世帯に限った話ではありません。

厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、公的年金・恩給を受け取っている高齢者世帯のうち、総所得のすべてを公的年金・恩給が占める世帯は43.4%にのぼります。

これは、多くの高齢者が年金収入のみで生活費をまかなうことが難しく、何らかの方法で収入を補う必要があるという実態を示唆しています。

また、この試算はあくまで日常的な生活費に基づいています。

もし医療費や介護費、あるいは葬儀費用といった突発的な支出が発生した場合は、家計の負担はさらに大きくなる可能性があります。

こうした現状を考慮すると、生活保護を受けている世帯のおよそ半数が単身の高齢者であるという事実にも納得がいくのではないでしょうか。

では、実際に生活保護では月にどのくらいの金額が支給されるのでしょうか。

3. 生活保護制度の柱「生活扶助」とは?月々の支給額の目安を解説

生活保護は、すべての人に同じ金額が一律で支給される制度ではありません。

制度は8種類の「扶助」に分かれており、各世帯の収入や必要となる支出を考慮したうえで、不足する金額が補われる仕組みになっています。

  • 生活扶助:食費や光熱水費など、日々の暮らしに必要な費用
  • 住宅扶助:アパートなどの家賃。定められた上限の範囲内で実費を支給
  • 教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品などの費用
  • 医療扶助:医療サービスの費用。費用は医療機関へ直接支払われるため、本人の負担はなし
  • 介護扶助:介護サービスの費用。費用は介護事業者へ直接支払われるため、本人の負担はなし
  • 出産扶助:出産にかかる費用。定められた範囲内で実費を支給
  • 生業扶助:就労に必要な技能の習得などにかかる費用。定められた範囲内で実費などを支給
  • 葬祭扶助:葬儀にかかる費用。定められた範囲内で実費を支給

これらの扶助の中でも、特に日常生活の費用を支える「生活扶助」がいくら支給されるのか、気になる方も多いでしょう。

生活扶助の基準額は、住んでいる地域の物価や世帯の人数、構成などに応じて細かく定められています。

ここで、具体的な支給額の例を見てみましょう。

世帯構成:東京都区部等/地方郡部等

  • 3人世帯(33歳、29歳、4歳): 16万4860円/14万5870円
  • 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万6450円
  • 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
  • 母子世帯(30歳、4歳、2歳): 19万6220円/17万4800円

この生活扶助額に加えて、家賃に相当する住宅扶助などが上乗せされる形で支給されます。

このことからも、住んでいる地域や世帯の状況によって「最低限度の生活」を送るための基準額が異なることがわかります。

4. まとめ:生活保護の実態から考える、高齢単身世帯と制度の今後の役割

この記事では、生活保護の制度概要や支給の仕組みについて解説しました。

老後の生活において、公的年金の収入だけでは暮らしが成り立たないケースも少なくなく、生活保護がセーフティネットとして重要な役割を担っている実態が見えてきます。

また、障害を持つ方や傷病を抱える世帯も一定の割合を占めており、この制度が幅広い世代にとって必要不可欠なものであることがわかります。

なお、支給額は一律ではなく、世帯の構成や地域の物価水準に応じて個別に決定されます。

そのため、「最低限度の生活」の基準はそれぞれの状況によって異なるという点に注意が必要です。

制度の仕組みを正しく理解することが、日本の現状を把握するうえで大切といえるでしょう。

参考資料

マネー編集部社会保障班