新緑が目に鮮やかな5月下旬、過ごしやすい季節となりました。
夏のボーナスや今後のライフプランについて考える方もいらっしゃるかもしれません。
老後の生活設計において、公的年金の知識は不可欠です。
日本の年金制度は「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造が基本であり、働き方によって将来受け取る金額が大きく変わります。
また、毎年のように制度改正や年金額の見直しが行われており、最新の情報を把握しておくことが大切です。
この記事では、公的年金の基本的な仕組みから、2026年度の年金額の動向、実際の受給額分布、そしてiDeCoなど私的年金の制度変更まで、老後資金を考える上で知っておきたいポイントをわかりやすく解説します。
1. 日本の公的年金制度の基本、「国民年金」と「厚生年金」の2階建て構造とは
日本の公的年金は、「国民年金(基礎年金)」が1階部分の土台となり、その上に会社員などが加入する「厚生年金」が乗る「2階建て構造」として知られています。
それぞれの制度の基本的な内容について確認していきましょう。
【1階】国民年金(基礎年金)の仕組み
- 加入対象者:日本国内に居住する20歳以上60歳未満のすべての人が原則として加入します。
- 保険料:所得にかかわらず一律の金額で、年度ごとに見直されます(※1)。
- 受給できる金額:保険料を40年間(480カ月)すべて納付すると、65歳から満額の老齢基礎年金(※2)を受け取れます。未納期間がある場合は、その期間に応じて減額されます。
※1 国民年金保険料:2025年度の月額は1万7510円です。
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2025年度の月額は6万9308円です。
【2階】厚生年金制度の概要
- 加入対象者:会社員や公務員のほか、パートタイマーなどで特定適用事業所(※3)に勤務し、一定の要件を満たす方が国民年金に上乗せして加入します。
- 保険料:給与や賞与などの収入に応じて金額が決定されます(上限あり)(※4)。
- 受給できる金額:加入していた期間や納めた保険料の総額によって、個人ごとに異なります。
これら二つの制度は、加入対象者や保険料の算出方法、受給額の計算方法が違うため、将来受け取る年金額は個人の加入履歴や収入によって大きく変わってきます。
公的年金の額は、物価や現役世代の賃金の変動に合わせて毎年度改定されるという点も、理解しておきたい重要なポイントです。
※3 特定事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は除く、共済組合員は含む)の総数が51人以上となる見込みの企業などを指します。
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)と標準賞与額(上限150万円)に保険料率を乗じて計算されます。
2. 2026年度の年金額はいくら?国民年金と厚生年金のモデルケース
厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」によると、2026年度における年金額のモデルケースは以下の通りです。
- 国民年金(老齢基礎年金・満額):月額7万608円(1人分※1)
- 厚生年金:月額23万7279円(夫婦2人分※2)
※1 昭和31年4月1日以前に生まれた方の老齢基礎年金(満額1人分)は、月額7万408円(対前年度比+1300円)です。このように年齢により受給額が異なります。
※2 男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準です。
国民年金だけの場合、満額(※3)でも月々の受給額は約7万円です。
仮に繰下げ受給(※4)の上限である75歳まで受給開始を遅らせたとしても、月額は13万円に満たない計算になります。
※3 国民年金(老齢基礎年金)の満額:国民年金保険料を480カ月納付した場合に、65歳から受け取れる年金額です。
※4 繰下げ受給:老齢年金の受給開始年齢を66歳~75歳までの間に後ろ倒しする制度です。「繰下げ月数×0.7%」の増額率が適用され、75歳で受給開始した場合の増額率は84%になります。
3. 厚生年金の受給額、月15万円以上を受け取る人の割合は?
厚生労働省年金局が公表した「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によれば、厚生年金の平均受給月額は、男女合計で15万289円となっています。
なお、この金額には、1階部分である国民年金(老齢基礎年金)の額も含まれている点に注意が必要です。
3.1 厚生年金受給者の分布:受給額ごとの人数を詳しく解説
厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、受給額ごとの人数分布を見てみましょう。
- ~1万円:4万3399人
- 1万円以上~2万円未満:1万4137人
- 2万円以上~3万円未満:3万5397人
- 3万円以上~4万円未満:6万8210人
- 4万円以上~5万円未満:7万6692人
- 5万円以上~6万円未満:10万8447人
- 6万円以上~7万円未満:31万5106人
- 7万円以上~8万円未満:57万8950人
- 8万円以上~9万円未満:80万2179人
- 9万円以上~10万円未満:101万1457人
- 10万円以上~11万円未満:111万2828人
- 11万円以上~12万円未満:107万1485人
- 12万円以上~13万円未満:97万9155人
- 13万円以上~14万円未満:92万3506人
- 14万円以上~15万円未満:92万9264人
- 15万円以上~16万円未満:96万5035人
- 16万円以上~17万円未満:100万1322人
- 17万円以上~18万円未満:103万1951人
- 18万円以上~19万円未満:102万6888人
- 19万円以上~20万円未満:96万2615人
- 20万円以上~21万円未満:85万3591人
- 21万円以上~22万円未満:70万4633人
- 22万円以上~23万円未満:52万3958人
- 23万円以上~24万円未満:35万4人
- 24万円以上~25万円未満:23万211人
- 25万円以上~26万円未満:15万796人
- 26万円以上~27万円未満:9万4667人
- 27万円以上~28万円未満:5万5083人
- 28万円以上~29万円未満:3万289人
- 29万円以上~30万円未満:1万5158人
- 30万円以上~:1万9283人
このデータから計算すると、厚生年金を月額15万円以上受け取っている人の割合は、全体の約49.83%となり、半数を下回っていることがわかります。
厚生年金の受給資格がない人も含めると、この割合はさらに下がると考えられます。
4. なぜ公的年金だけでは不十分?私的年金との組み合わせの重要性
公的年金は老後の生活を支える基盤ですが、それだけで生活費のすべてをまかなうのは難しい場合があります。
国民年金だけだと、満額でも月額7万円程度です。
厚生年金を受け取れる人でも、月額15万円未満のケースが半数以上を占めるという現実があります。
こうした背景から、近年では私的年金の役割がますます重要視されています。
iDeCo(個人型確定拠出年金)や企業型DCといった制度は、自分で資金を積み立てて老後に備えるもので、公的年金を補完する役割を担います。
制度改正も進み、加入条件の緩和や拠出の柔軟性が高まるなど、多くの人が利用しやすい環境が整備されてきています。
安定した老後を送るためには、公的年金だけに依存せず、私的年金を活用して収入源を複数確保することが重要といえるでしょう。
2025年6月には年金制度改正が実施され、私的年金についても見直しが行われました。
次の章で、その具体的な変更点について見ていきます。
5. 私的年金制度の改正ポイントを解説
2025年6月に、年金制度改正法が成立しました。
この改正には、「年収106万円の壁」の見直しに関連する社会保険の適用拡大、在職老齢年金の支給停止調整額の引き上げ、遺族年金制度の変更といった、公的年金に関する重要な変更が含まれています。
同時に、私的年金である「iDeCo(個人型確定拠出年金)」や「企業型DC」に関しても、いくつかの見直しが実施されることになりました。
5.1 iDeCoの加入可能年齢が70歳未満に引き上げへ
働き方に関係なく、iDeCoに加入できる年齢の上限が「70歳未満」へと引き上げられる予定です。
- 改正前のiDeCo加入条件
- 国民年金の被保険者であること
- 老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていないこと
- 加入可能年齢引き上げ後の対象者
- iDeCoを利用して老後の資産形成を続けたい人
- 老齢基礎年金やiDeCoの老齢給付金を受け取っていないこと
5.2 企業型DCのマッチング拠出上限が撤廃、より柔軟な積立が可能に
企業型DCにおいて、加入者本人が掛金を上乗せする「マッチング拠出」の上限がなくなります。
この変更により、事業主が拠出する掛金額を超える積立ても可能となり、限度額内でより自由度の高い資産形成ができるようになります。
5.3 企業年金の運用状況を可視化する新制度の導入
企業年金の運用実績に関する情報を厚生労働省が一元的に収集し、公開する制度が導入されます。
これにより、自社の年金制度の状況を他社と比較・分析することが容易になります。
6. まとめ:年金制度の理解を深め、自身の受給額を把握しよう
この記事では、公的年金の基本的な構造や最新の年金額の動向について解説しました。
公的年金の統計データを見ると、平均受給額と個々の実態には乖離があり、高額な年金を受け取っているのは一部の人に限られることがわかります。
年金制度は物価や賃金の変動に合わせて改定される仕組みであり、私的年金についても制度の見直しが進んでいます。
したがって、老後の資金計画は公的年金のみに頼るのではなく、複数の手段を組み合わせて準備するという視点が不可欠です。
制度の仕組みとご自身の受給額の実態を理解した上で、自分に合った資産形成を進めていくことが大切です。
単なる「平均額」を参考にするだけでなく、まずは「ねんきん定期便」でご自身の状況を確認し、必要であればiDeCoや新NISAの活用を検討するなど、早期に準備を始めることをおすすめします。
※当記事は再編集記事です。



