老後の生活を支える重要な収入源の一つが年金です。公的年金は原則として65歳から受給できますが、その受給額には大きな個人差があります。

中には厚生年金月額30万円以上受給している人もいますが、実際はどのくらいの割合なのでしょうか。本記事では、厚生年金「ひと月30万円超」受給している人の割合や女性の就業変化について解説していきます。

1. 厚生年金の受給額、月額30万円超えは「全体の0.12%」2万人弱の実態

厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、基礎年金分を含めた厚生年金の平均受給額は月額15万289円にとどまっています。さらに男女別でみると、男性が約17万円であるのに対し、女性は約11万1000円と、約6万円もの格差が存在するのが実態です。

1.1 厚生年金の受給額ごとの受給権者数

厚生年金の受給額1/4

厚生年金の受給額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

さらに詳しく受給額の分布を見てみると、驚きの実態が浮かび上がります。

  • 20万円以上: 全体の18.8%(5人に1人以下)
  • 30万円以上(年間360万円超): わずか0.12%

このように、月額30万円以上の年金を受け取れるのは全体の0.12%である2万人弱で「選ばれたほんの一握り」に過ぎません。全体の約8割は月20万円未満で生活をやりくりしており、iDeCoや積立投資といった自助努力がいかに不可欠であるかを物語っています。

2. 5年連続で減少、第3号被保険者「主婦は減少で主夫は増加?」

国民年金にはいくつかの加入区分があります。その一つである「第3号被保険者」は、厚生年金や共済年金に加入している第2号被保険者の配偶者で、一定の収入条件を満たす人が対象です。令和6年度末時点では約641万人が該当しています。厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をみると、第3号被保険者の人数は5年連続で減少していることがわかります。

第3号被保険者の総数:約641万人

  • 男性:約13万人(+3.1%)
  • 女性:約628万人(▲6.7%)

大きな特徴は、本人が保険料を負担しなくても国民年金に加入扱いとなる点です。これは、厚生年金制度全体でその費用を負担する仕組みになっているため、配偶者個人の保険料が増えるわけではありません。加入手続きは本人ではなく、配偶者の勤務先を通じて行われます。

この対象者の大半を女性が占めている背景には、これまでの日本の雇用慣行や就業構造が深く影響しています。

2.1 「出産後の就業継続」が主流になる一方で残る壁

女性の働き方は確実に変化しています。「令和7年版厚生労働白書」によると、第1子出産をきっかけに職場を去る「出産退職」というかつてのスタンダードは過去のものになりつつあります。2015〜2019年の調査では、53.8%の女性が出産後も仕事を継続しており、すでに過半数を超えました。

しかし、仕事を辞めずに済んだとしても、課題は残ります。育児との両立を図るために、パートや派遣といった「非正規雇用」を選ばざるを得ないケースが依然として多いためです。これが、将来的に自分が受け取る厚生年金額が増えない原因となり、結果として第3号被保険者の枠から抜け出せない要因にもなっています。

3. 家事・育児の「4倍格差」がもたらす老後格差

共働きが当たり前になった現代でも、家庭内の役割分担には根深い不均衡が存在します。同白書の「日本の1日」に関する調査によると、6歳未満の子供を持つ家庭における1日の平均家事・育児時間は以下の通りです。

《1日あたりの平均時間》

  • 夫:1時間54分
  • 妻:7時間28分

妻は夫の約4倍もの時間を家庭のタスク(家事・育児)に費やしている計算になります。

この過度な負担は、女性がキャリアを築き、厚生年金に長く加入して「将来の年金受給額を増やす」ことの大きなブレーキとなっています。年金制度の改革を議論するだけでなく、こうした「家庭内の働き方改革」をドラスティックに進めない限り、男女間の老後資金格差を根本的に解消するのは難しいでしょう。

4. まとめにかえて

今回は、厚生年金月額30万円以上受給している人の割合や女性の就業変化について解説していきました。年金額は、働き方や収入、加入期間によって大きく異なります。

なお、厚生年金を月額20万円以上受給している人の割合は約19%と、5人に1人程度にとどまっています。老後の生活を考えるうえでは、まず自分自身が将来どのくらいの年金を受け取れるのかを把握することが大切です。

年金額が分かれば、必要な老後資金や生活設計もより具体的に考えることができます。この機会に自分自身の見込み年金額を把握するところ初めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

長井 祐人