梅雨の晴れ間から夏の気配を感じる季節。家計や将来のお金を見直す機会も増える時期です。
40歳・50歳代はキャリアの中核として比較的高い収入を得る年代ですが、実感として「生活にゆとりがない」と感じる世帯は少なくありません。
その要因は長引く物価上昇です。総務省公表の2026年4月分の消費者物価指数(全国)によると、総合指数は前年同月比で1.4%上昇しました。
生鮮食品を除く総合も1.4%、生鮮食品とエネルギーを除く総合は1.9%上昇しており、日々の生活コストが家計を圧迫しています。
また、貯蓄の実態は一部の高額資産保有世帯が平均を押し上げているため、平均額と中央値の差が大きく、世帯間の格差もうかがえます。
本記事では、物価高に直面する40・50代の貯蓄や資産形成のリアルな現状を確認するとともに、資産格差の背景にある要因を探っていきます。
1. 資産増加の背景は「運用益」。新NISA拡大で広がる選択肢
J-FLEC(金融経済教育推進機構)が2025年12月18日に公表した「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると、二人以上世帯の金融資産保有額は平均1940万円、中央値720万円となり、前年と比べて大きく増加しました。
この資産増加の要因を見ていくと、給与収入の伸びや預貯金の積み増しだけでなく、「株式や債券の値上がりによる資産評価額の上昇」や「配当・利子収入」といった運用による成果が大きく寄与していることが分かります。
- 定例的な収入が増加したから:40歳代37.5%、50歳代26.6%
- 株式、債券価格の上昇により、これらの評価額が増加したから:40歳代38.4% 50歳代34.1%
- 配当や金利収入があったから:40歳代33.0% 50歳代29.5%
つまり、金融資産の増加は日々の節約や貯蓄努力だけによるものではなく、好調な市場環境を背景とした投資収益に支えられている側面が大きいといえるでしょう。
実際に40歳代では、「定例収入の増加」が37.5%だったのに対し、「資産評価額の上昇」は38.4%、「配当・利子収入」は33.0%となっています。
50歳代でもそれぞれ26.6%、34.1%、29.5%となっており、資産運用による恩恵が幅広い世帯に広がっている様子がうかがえます。
2. 新NISA開始後は口座数・買付額が大幅に増加
こうした資産運用の広がりを裏付けるように、金融庁が公表した「NISAの利用状況」によると、2025年6月末時点のNISA口座数は2696万口座となりました。
こうした資産運用の広がりを裏付けるように、金融庁が公表したデータによると、2025年12月末時点のNISA口座数は2826万口座となりました。
また、累計買付額は約71兆円に達しており、制度開始後も利用が大きく拡大していることが分かります。
これらの数字からは、資産形成の手段としてNISAを利用する個人が着実に増え、運用による恩恵が幅広い世帯に広がっている状況がうかがえます。
2.1 資産増加の背景には市場環境の影響もある
一方で、近年の金融資産増加は、家計努力だけによるものではありません。
株価上昇や配当収入の増加など、市場環境の追い風によって資産評価額が押し上げられた側面もあります。
そのため、資産額の増加を考える際には、給与収入や貯蓄額だけでなく、運用資産の有無や市場環境の影響も含めて見る必要があります。
こうした状況を踏まえたうえで、次は40歳代・50歳代の金融資産保有状況について詳しく見ていきましょう。
3. 平均と中央値から見える40〜50歳代世帯の貯蓄格差
続いて、同調査をもとに働き盛り世代の資産状況を見ていきます。
3.1 「40歳代・二人以上世帯」の金融資産保有額
40歳代・二人以上世帯
平均:1486万円
中央値:500万円
- 金融資産非保有:18.8%
- 100万円未満:10.0%
- 100~200万円未満:6.2%
- 200~300万円未満:5.1%
- 300~400万円未満:4.4%
- 400~500万円未満:2.6%
- 500~700万円未満:7.3%
- 700~1000万円未満:6.1%
- 1000~1500万円未満:9.7%
- 1500~2000万円未満:6.5%
- 2000~3000万円未満:8.2%
- 3000万円以上:13.1%
- 無回答:2.1%
40歳代の二人以上世帯では、金融資産の平均額は1486万円となっていますが、中央値は500万円にとどまっており、両者の差が非常に大きいことが特徴です。
分布を見ると、金融資産を保有していない世帯が18.8%存在する一方で、1000万円以上の資産を持つ世帯も少なくありません。こうした一部の高額保有層が平均値を押し上げている構図が見えてきます。
そのため、一般的な世帯の実態を把握する際には、平均額よりも中央値のほうが実情に近い指標といえるでしょう。
3.2 「50歳代・二人以上世帯」の金融資産保有額
50歳代・二人以上世帯
平均:1908万円
中央値:700万円
- 金融資産非保有:18.2%
- 100万円未満:6.5%
- 100~200万円未満:6.4%
- 200~300万円未満:4.1%
- 300~400万円未満:3.5%
- 400~500万円未満:2.2%
- 500~700万円未満:6.7%
- 700~1000万円未満:7.7%
- 1000~1500万円未満:9.3%
- 1500~2000万円未満:6.1%
- 2000~3000万円未満:8.1%
- 3000万円以上:18.8%
- 無回答:2.2%
続いて50歳代の二人以上世帯を見ると、平均額は1908万円、中央値は700万円となっており、40歳代と同様に平均と中央値の間に大きな差が見られます。
特に目立つのが資産保有状況の二極化です。金融資産を保有していない世帯が18.2%ある一方で、500万円未満の層も一定数存在しています。その一方で、3000万円以上の金融資産を保有する世帯は18.8%に達しています。
50歳代は教育費や住宅関連費用などの負担が重なりやすい時期でもあり、資産形成が思うように進まない世帯と、着実に資産を積み上げている世帯との間で差が広がっている状況がうかがえます。
このように、40歳代・50歳代では資産額のばらつきが大きく、老後を見据えた計画的な資産形成の重要性がこれまで以上に高まっているといえるでしょう。
4. リタイア夫婦世帯の生活費から考える老後資金の現実
老後の生活を具体的に考えるうえでは、実際の家計データを確認しておくことが重要です。
ここでは、総務省統計局が公表した「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとに、65歳以上の夫婦のみで構成される無職世帯の家計状況を見ていきます。
4.1 【65歳以上・無職夫婦世帯】毎月の収入額とその内訳
収入合計:25万4395円
- うち社会保障給付(主に年金):22万8614円
4.2 【65歳以上・無職夫婦世帯】毎月の支出額とその内訳
支出合計:29万6829円
- 消費支出:26万3979円
- 非消費支出:3万2850円
収入の内訳を見ると、月25万4395円のうち22万8614円を公的年金などの社会保障給付が占めています。年金が家計の中心となっていることが分かる数字です。
一方で、毎月の支出総額は29万6829円となっています。食費や住居関連費、光熱費などの消費支出が26万3979円、税金や社会保険料などの非消費支出が3万2850円となっています。
その結果、毎月およそ4万2000円の赤字が発生している計算になります。不足分については預貯金や金融資産の取り崩しによって補う必要があります。
こうした家計の実態を見ると、リタイア後の生活を安定して維持するためには、現役時代から計画的に資産形成を進めておくことの重要性が改めて浮かび上がってきます。
5. 人生100年時代の折り返し地点で考えたい資産形成戦略
平均寿命の伸長が続くなか、日本では「人生100年時代」という言葉が現実的なものとして語られるようになっています。
40歳代・50歳代は、収入面ではキャリアの充実期を迎えやすい年代ですが、人生全体の長さを考えると、まだ折り返し地点付近に立っている段階ともいえます。長寿化が進む現在では、これまでの家計管理や老後準備の考え方そのものを見直す必要性が高まっています。
5.1 平均寿命の延びで「老後」は30年以上に
厚生労働省の統計によれば、日本人の平均寿命は男性が80歳代前半、女性は80歳代後半まで延びています。
さらに近年は、医療の発達や健康意識の向上などを背景に、90歳前後まで生活する人も決して珍しくありません。平均寿命はあくまで統計上の数値ですが、その水準が高まるほど、90歳以上まで生きる人の割合も増えていくことになります。
そのため、65歳前後で現役を引退したとしても、その後の生活が20年から30年以上続く可能性は十分あります。かつてと比べて「老後」が非常に長い期間になっている点は、今後の資産形成を考えるうえで重要なポイントです。
5.2 働き盛りの40〜50歳代は「資産形成の後半戦」
こうした長寿社会の進展を踏まえると、40歳代・50歳代は将来に向けた資産形成の後半戦ともいえる大切な時期に位置しています。
一方で、この年代は住宅ローンの返済や子どもの教育費など、大きな支出が重なりやすく、思うように貯蓄を増やせない家庭も少なくありません。
それでも、引退後の生活期間が長くなるほど、現役時代にどれだけ資産を準備できたかが、その後の暮らしの安定度に大きく影響する可能性があります。
6. まとめにかえて:資産形成から取り崩しまで お金との向き合い方を考える
40歳代・50歳代は、教育費や住宅費に加え、親の介護費用なども視野に入り始める年代であり、複数の支出負担が重なりやすい時期です。
そのため、他人の貯蓄額や資産状況と比較するのではなく、自分たちの収支やライフプランを確認しながら、無理のない範囲で資産形成を続けていくことが大切になります。
実際に老後に関する意識調査を見ると、60歳代の単身世帯では約半数が日常生活費に対して不安を抱えており、二人以上世帯でも「生活はできるが余裕は感じられない」と回答する人が多くなっています。
また、将来への不安として最も多く挙げられているのは物価上昇による家計負担の増加であり、加えて医療費や介護費の負担拡大を心配する声も少なくありません。
こうした環境を考えると、公的年金だけに依存するのではなく、先取り貯蓄を継続しながら、NISAやiDeCoなどの制度も活用し、現役世代のうちから計画的に資産形成を進めていくことが重要になるでしょう。
※投資には価格変動による元本割れのリスクがあります。投資を行う際は、ご自身の判断と責任のもとでご検討ください。
参考資料
- 総務省「2020年基準 消費者物価指数 全国 2026年(令和8年)2月分」
- 金融庁「NISAの利用状況(速報値)」
- 厚生労働省「高齢期と年金をめぐる状況」
- J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」
LIMO編集部貯蓄解説班