4. ROICとWACCの逆転が意味する「企業価値の破壊」

今期の減益予想に伴い、投資家が最も警戒しているのが資本効率のさらなる悪化です。会社計画によると、27年3月期のROEは伊藤レポートの基準である8%を割り込み、7.0%まで低下する見込みです。

そして、泉田氏が特に強い警鐘を鳴らしたのが、「ROIC(投下資本利益率)」と「WACC(加重平均資本コスト)」の逆転現象です。

ここで少し専門用語を解説しましょう。

  • ROIC(投下資本利益率): 事業に投じた資金(有利子負債+株主資本)を使って、どれだけ本業の利益を生み出したかを示す指標。
  • WACC(加重平均資本コスト): 企業が資金を調達する際にかかるコスト(借入金の利息や、株主が期待するリターン)の平均値。

企業は、調達した資金のコスト(WACC)を上回るリターン(ROIC)を稼ぎ出さなければ、事業を続ける意味がありません。銀行から7%の金利でお金を借りてきて、5%の利回りしか出ない事業に投資していれば、やればやるほど損をしてしまうのと同じ理屈です。

デンソーの27年3月期の会社予想では、ROICが5.8%に低下する一方で、WACCは7.3%となっています。泉田氏はこの深刻な状況を次のように解説します。

「資本調達コストっていうんだけど、このWACCっていうのがあって、これが7.3%なので、株主とか借入先から調達してるお金のコストは7.3%ぐらいかかってるんだけど、生み出すリターンが5.8%なので、これだけ見ると企業価値を破壊してるんだ」

ROICとWACCの逆転構造4/4

ROICとWACCの逆転構造

出所:デンソー 2026年3月期決算短信・決算説明会資料を基にイズミダイズム作成

投資家から見れば、デンソーに資金を預けて事業を行わせるほど、全体としての価値が目減りしていく計画に見えてしまいます。

「企業価値毀損しますよっていうことを言ってるのに等しいので、これだとやっぱアンダーパフォームしたよね」

泉田氏が語る通り、この資本効率の悪化見通しこそが、株価が市場平均を下回り続ける最大の理由と言えます。

【動画で解説】【デンソー】なぜ好決算なのに株価低調?元機関投資家が紐解く市場の評価