食料品や日用品など、身の回りのさまざまなものの価格が上昇し、家計への負担が増している状況が続いています。
公的年金は2026年度に増額改定されましたが、物価の上昇率には追いついていないのが実情です。そのため、日々の生活に不安を感じている方も少なくないでしょう。
そうした中、公的年金の受給者を支える制度として「年金生活者支援給付金」があります。この制度は、一定の要件を満たす場合に年金に上乗せして給付金が支給されるものです。
この記事では、年金生活者支援給付金の具体的な支給額や対象となる要件、そして受け取るために必要な手続きについて、わかりやすく解説します。
1. 「年金生活者支援給付金」は月々いくら?2026年6月支給分からの増額内容を解説
「年金生活者支援給付金」とは、公的年金などの収入やその他の所得が一定の基準額を下回る場合に支給される給付金制度です。
老齢・障害・遺族という3種類の基礎年金それぞれに対応した給付金があり、2カ月に1回、年金に上乗せされる形で受け取れます。給付額は毎年度見直される仕組みです。
1.1 2026年度における年金生活者支援給付金の支給額
2026年度の年金生活者支援給付金は、前年度から3.2%の増額が決定しました。この新しい給付額は、6月に支給される4月・5月分から適用されます。
2026年度における各種給付金の月額は、以下の通りです。
- 老齢年金生活者支援給付金(月額):5620円(※基準額)
- 障害年金生活者支援給付金(月額):1級 7025円、2級 5620円
- 遺族年金生活者支援給付金(月額):5620円
このうち老齢年金生活者支援給付金は、上記の金額を基準として、個人の保険料納付済期間などに応じて実際の支給額が算出されます。
2. 年金生活者支援給付金を受け取るための支給要件とは?
年金生活者支援給付金には「老齢」「障害」「遺族」の3種類があり、それぞれに支給されるための要件が設けられています。
ここでは、種類ごとに具体的な要件を確認していきましょう。
2.1 老齢年金生活者支援給付金の対象者と支給要件
老齢年金生活者支援給付金は、以下の要件をすべて満たしている方が対象となります。
- 65歳以上で老齢基礎年金を受給している
- 同じ世帯に住む全員の市町村民税が非課税である
- 前年の公的年金などの収入額(※1)と、その他の所得の合計が、生年月日に応じて定められた基準額以下であること(※2)
- 昭和31年4月2日以降生まれの方:80万9000円以下
- 昭和31年4月1日以前生まれの方:80万6700円以下
※1 障害年金や遺族年金といった非課税収入は含まれません。
※2 収入と所得の合計額が上記の基準額をわずかに超えるものの、一定の範囲内(昭和31年4月2日以降生まれの方は90万9000円以下、昭和31年4月1日以前生まれの方は90万6700円以下)に収まる方には、「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給されます。
2.2 障害年金生活者支援給付金の対象者と支給要件
- 障害基礎年金を受給している
- 前年の所得額(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数によって基準額は上がります)
※ 障害年金などの非課税収入は所得に含まれません。
2.3 遺族年金生活者支援給付金の対象者と支給要件
- 遺族基礎年金を受給している
- 前年の所得額(※)が479万4000円以下であること(扶養親族の人数によって基準額は上がります)
※ 遺族年金などの非課税収入は所得に含まれません。
いずれの給付金も、前年の所得が支給要件の判断基準の一つとなっています。
また、重要な点として、これらの給付金は支給要件を満たしていても自動的に支給されるわけではありません。受け取るためには、ご自身で「請求手続き」をおこなう必要があります。
3. 受給には申請が必須!年金生活者支援給付金の請求手続きについて
年金生活者支援給付金の支給対象となる方には、日本年金機構から請求手続きに関する案内が郵送されます。
案内の送付時期や書類の形式は、年金の受給状況によって変わります。ここでは、代表的な2つのケースについて手続きの流れを見ていきましょう。
3.1 ケース1:65歳で老齢基礎年金を新たに請求する場合
- 65歳になる3カ月前に日本年金機構から送られてくる「年金請求書(事前送付用)」に、給付金の請求書が同封されています。
- 必要事項を記入した上で、65歳の誕生日の前日以降に、年金の請求書と一緒に年金事務所へ提出します。
3.2 ケース2:すでに基礎年金を受給しており、新たに対象となる場合
- 毎年9月上旬から、対象者へ「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が順次郵送されます。
- 2025年1月以降に65歳になり、このはがき型の請求書が届いた方は、電子申請も利用可能です。
- 電子申請をおこなわない場合は、はがきに必要事項を記入し、切手を貼付して郵送で提出します。
ちなみに、支給要件を満たすかどうかの確認が必要な方には、「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」と「所得状況届」が送付されます。
3.3 給付金はいつ支給される?支給日と振込の仕組み
年金生活者支援給付金は、年金と同様に年6回、偶数月の15日に支給されます。15日が土日や祝日にあたる場合は、その直前の営業日に前倒しで支給されます。
年金の受取口座と同じ口座に、年金とは別々に振り込まれるため、通帳には2つの入金が記録されます。
各支給月には、その前月までの2カ月分がまとめて支払われる仕組みです。例えば、10月15日に支給されるのは、8月分と9月分の給付金となります。
4. 参考:厚生年金・国民年金の平均受給額は月々いくらか
ここで、現在の高齢者世代が実際に受け取っている年金額の状況も見てみましょう。
厚生労働省年金局が公表した『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』を参考に、60歳以上の受給権者における平均額を男女別に確認します。
4.1 厚生年金の平均的な月額
<全体>平均年金月額:15万289円
- <男性>平均年金月額:16万9967円
- <女性>平均年金月額:11万1413円
4.2 国民年金の平均的な月額
<全体>平均年金月額:5万9310円
- <男性>平均年金月額:6万1595円
- <女性>平均年金月額:5万7582円
厚生年金(国民年金部分を含む)の平均月額を見ると、男性が16万9967円、女性が11万1413円と、男女間で約6万円の差が見られます。
この差は、厚生年金の金額が現役時代の収入や加入期間によって決まることに起因します。一般的に男性の方が勤続年数が長く、生涯賃金も高い傾向にあるため、受給額が多くなりがちです。
対照的に、国民年金は加入期間に応じて金額が決まるため、男女間の差はほとんどありません。
厚生労働省年金局『令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況』によると、厚生年金の受給額は月額2万円未満から30万円を超える人まで分布しており、個人の経歴が年金額を大きく左右することがうかがえます。
5. まとめ
公的年金に加えて支給される「年金生活者支援給付金」は、月々の金額だけを見るとわずかに感じるかもしれません。
しかし、物価上昇が続く現状では、年間で考えると家計の大きな支えとなり得ます。この制度は、社会全体で支え合うという考え方に基づいています。
5.1 給付金の財源は消費税
この給付金の財源となっているのは、消費税率の引上げによって確保された税収です。私たちが日々の買い物で支払っている消費税の一部が、所得が一定基準に満たない年金受給者の生活を支えるために活用されています。
5.2 2026年度(令和8年度)の年間給付額の目安
受給する年金の種類に応じた、年間の給付額の目安は以下の通りです。
- 老齢年金生活者支援給付金:国民年金の保険料納付状況によって個人差が生じます。
- 障害年金生活者支援給付金:年間で1級は8万4300円、2級は6万7440円
- 遺族年金生活者支援給付金:年間で6万7440円(ただし、子どもが2人以上いる場合は人数で分割して支給)
月額にするとおよそ5000円から7000円程度となり、一見すると少額に感じられるかもしれません。
しかし、年間では約7万円から8万円のまとまった収入となります。これは食費や光熱費の足しにしたり、万が一の備えにしたりと、生活の中で有効に活用できる貴重な資金といえるでしょう。
参考資料
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」
- 厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 日本年金機構「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)が届いた方へ」
マネー編集部年金班