6月に入り、日本年金機構から『年金額改定通知書』や『年金振込通知書』が各家庭のポストに届く時期となりました。

物価高による生活費の圧迫が深刻化するなか、いよいよ6月15日(月)に迫った初回振込を前に、「税金や保険料の特別徴収(天引き)額が更新され、実質的な手取りがあまり増えていない」と不安を覚える方も多いのではないでしょうか。

こうしたインフレ局面における大切な収入源となるのが、ベースとなる基礎年金とは別に支給される低所得者世帯向けの加算措置「年金生活者支援給付金」です。

今年度は物価動向に伴うプラスの増額改定が実施され、家計を支える心強い味方となります。

しかし、どれほどありがたい制度であっても、国が自動的に口座へお金を振り込んでくれることはありません。初めてもらう場合は「手元に届いた専用ハガキを自ら提出しなければ、一生0円のまま」というルールが存在します。

本記事では、新年度の給付基準額や自分が対象になるかどうかの境界線、そしてもらい損ねを防ぐための手続きの流れを端的に解説します。

1. 年金の暮らしを支える「年金生活者支援給付金」とは?

公的年金等の収入やその他の所得額が基準額に満たない年金受給者の生活を支援するため、「年金生活者支援給付金」という制度があります。

これは一時的な給付ではなく、年金に上乗せして継続的に支給されるものです。

基礎年金の種類に応じて、以下の3種類に分類されます。

  • 老齢年金生活者支援給付金
  • 障害年金生活者支援給付金
  • 遺族年金生活者支援給付金

最初は申請が必要ですが、要件を満たす限り、2カ月に1度のペースで支給されます。

2. 私はもらえる?所得環境や年金の種類によって分かれる3つの「支給要件」

基礎年金を受給している人のうち、年金等の収入や所得の合計額が一定基準以下となる場合、「年金生活者支援給付金」がもらえる可能性があるとわかりました。

本章では「年金生活者支援給付金」の具体的な支給要件について、3種類にわけて見ていきましょう。

2.1 老齢年金生活者支援給付金の支給要件

老齢年金生活者支援給付金の支給要件2/10

支給要件

出所:日本年金機構「老齢(補足的老齢)年金生活者支援給付金の概要」

まず老齢年金生活者支援給付金の支給対象となるのは、下記の支給要件をすべて満たす方です。

  • 65歳以上の老齢基礎年金の受給者
  • 同一世帯の全員が市町村民税非課税
  • 前年の公的年金等の収入金額(※1)とその他の所得との合計額が昭和31年4月2日以後に生まれの方は80万9000円以下、昭和31年4月1日以前に生まれの方は80万6700円以下(※2)

※1 障害年金・遺族年金等の非課税収入は除く
※2 昭和31年4月2日以後に生まれた方で80万9000円を超え90万9000円以下である方、昭和31年4月1日以前に生まれた方で80万6700円を超え90万6700円以下である方には「補足的老齢年金生活者支援給付金」が支給される

2.2 障害年金生活者支援給付金の支給要件

障害基礎年金を受給されている方へ3/10

障害基礎年金を受給されている方へ

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

下記の支給要件をすべて満たす場合、障害年金生活者支援給付金の支給対象となります。

  • 障害基礎年金の受給者である
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)

※ 障害年金等の非課税収入は除く

2.3 遺族年金生活者支援給付金の支給要件

遺族基礎年金を受給されている方へ4/10

遺族基礎年金を受給されている方へ

出所:厚生労働省「年金生活者支援給付金制度」

下記の支給要件をすべて満たす場合、遺族年金生活者支援給付金の支給対象となります。

  • 遺族基礎年金の受給者である
  • 前年の所得(※)が479万4000円以下である(扶養親族等の数に応じて増額される)

※ 遺族年金等の非課税収入は除く

3. 最新データで見る年金生活者支援給付金の支給額と件数

厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」より、実際に支給された年金生活者支援給付金の平均月額を見ていきましょう。

2025年3月時点の平均給付月額()は、老齢年金生活者支援給付金が4146円、障害年金生活者支援給付金が5727円、遺族年金生活者支援給付金が5228円でした。

※2025年3月において認定されている平均給付金額です。

給付金額別の給付件数は以下のとおりです。

3.1 老齢年金生活者支援給付金:給付額ごとの件数

  • 1000円未満:7万5101件
  • 1000円以上2000円未満:31万4450件
  • 2000円以上3000円未満:59万9166件
  • 3000円以上4000円未満:108万2177件
  • 4000円以上5000円未満:103万4357件
  • 5000円以上6000円未満:104万5423件
  • 6000円以上7000円未満:18万5291件
  • 7000円以上8000円未満:9万3265件
  • 8000円以上9000円未満:4万4796件
  • 9000円以上1万円未満:1万9891件
  • 1万円以上:1万524件

3.2 障害年金生活者支援給付金:給付額ごとの件数

  • 5000円以上6000円未満:149万3700件
  • 6000円以上7000円未満:68万3466件

3.3 遺族年金生活者支援給付金:給付額ごとの件数

  • 1000円未満:ー
  • 1000円以上2000円未満:607件
  • 2000円以上3000円未満:1569件
  • 3000円以上4000円未満:ー
  • 4000円以上5000円未満:ー
  • 5000円以上:7万5531件

4. 日本年金機構からの郵便物に注意!もらい損ねを防ぐための請求手続き

本章では「年金生活者支援給付金の請求手続き」を解説します。

すでに公的年金を受給している人のうち、新たに年金生活者支援給付金の支給対象となった人には、日本年金機構からお知らせを兼ねた請求書が届きます。

4.1 手続きの流れ:すでに基礎年金を受給している場合

年金生活者支援給付金請求書の手続きフロー8/10

年金生活者支援給付金請求書の手続きフロー

出所:日本年金機構「年金生活者支援給付金手続きのご案内リーフレット」

  • 毎年9月の第1営業日から順次、「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が郵送されてくる
  • 2025年1月以降に65歳に到達し、日本年金機構から「年金生活者支援給付金請求書(はがき型)」が届いた方は電子申請が利用できる
  • 電子申請を利用しない場合は、必要事項を記載し、切手を貼ってポストに投函

なお、支給要件に当てはまるかどうかが確認できない人には「年金生活者支援給付金請求書(A4型)」および「所得情報等を確認するための所得状況届」が届きます。

続いて、年金自体を新規で請求する場合のフローを確認しましょう。

4.2 手続きの流れ:これから老齢基礎年金を請求する場合

老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ9/10

老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ

出所:日本年金機構「老齢基礎年金を新規に請求する方の請求手続きの流れ」

  • 65歳になる3か月前に、年金受給に必要な「年金請求書(事前送付用)」に同封して送付
  • 必要事項を記入し、受給開始年齢の誕生日の前日以降に、年金の請求書と併せて年金事務所に提出

※障害年金生活者支援給付金および遺族年金生活者支援給付金の対象者のうち、基礎年金を初めて新規で請求する方(年金と給付金を同時に請求する方)は、給付金の請求書が自動的に郵送されません。年金の請求手続きとあわせて、ご自身で年金事務所や市区町村の窓口で給付金の請求手続きを行う必要があります。

4.3 給付金はいつ支給される?支給日について

年金生活者支援給付金は、公的年金と同じく偶数月の15日に支払われます。なお、15日が土日または祝日のときは、その直前の金融機関の営業日に前倒しとなります。

例えば10月に給付されるのは、8月分・9月分の給付金です。

年金の受取口座と同じ口座に振り込まれますが、通帳にはそれぞれ別の振込として記載されます。

5. 統計が示すシニア世代の収入源「公的年金だけで生活する高齢世帯」の割合

年金だけで生活している高齢者世帯は、実は多くありません。

厚生労働省が公表した「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、その割合は43.4%であることがわかっています。

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成10/10

高齢者世帯の総所得に占める「公的年金・恩給」の割合別世帯構成

出所:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」II 各種世帯の所得等の状況

  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が100%の世帯:43.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が80~100%未満の世帯:16.4%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が60~80%未満の世帯:15.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が40~60%未満の世帯:12.9%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20~40%未満の世帯:8.2%
  • 公的年金・恩給の総所得に占める割合が20%未満の世帯:4.0%

残りの56.6%の高齢者世帯は、公的年金や恩給以外の所得で生活費を補填していることがわかります。

公的年金のみで生活できない可能性も念頭に置いて、老後計画を立てる必要があるといえるでしょう。

6. 6月の支給日を迎える前に確認

6月中旬は、新年度の住民税決定通知書や年金通知書など、お金に関する重要な書類が一斉にポストに重なる時期です。

難解に思えるため、つい「後で読もう」と引き出しの奥にしまい込んでしまいがちですが、同封されている請求ハガキを放置することは、結果として生涯で数万〜数十万円単位の「もらい損ね」という大きな損失に繋がりえます。

今回ご紹介した支援金は、最初の1回さえ手続きをクリアすれば、翌年以降は原則としてシステム上で所得が自動判定され、該当する限り口座にお金が入り続ける仕組みです。

冷房代など夏場の出費が本格化する前に、まずは今週末、ご自宅のテーブルの上に届いた通知書や、見慣れない色の封筒が紛れ込んでいないかチェックしてみてください。

参考資料