2026年5月20日、超党派による「社会保障国民会議」の実務者会議にて、給付付き税額控除の「中間とりまとめに向けた議論の整理」が公表されました。給付付き税額控除は高市政権の目玉政策のひとつとして注目が高まっていましたが、今回の実務者会議で導入時は税額控除(減税)を組み合わせず、所得に連動した現金給付に一本化する方向が示されています。

ここでは、給付付き税額控除でまず現金給付の導入が検討されている背景や、制度の仕組み、今後の課題について解説します。

1. 給付付き税額控除、「税額控除+現金給付」→「現金給付」一本化の方向へ!

5月20日に示された議論の整理では、当初想定されていた「税額控除+現金給付」の組み合わせではなく、まずは現金給付のみに一本化して制度をスタートさせる方向が示されました。

その背景として、税額控除と給付を組み合わせた制度を運用するにあたって、所得を正確に把握することが困難であること、年末調整を担う事業者や自治体の事務負担が過大になることが挙げられています。

議論の整理では「給付のみとすれば、事務の効率化を図ることができる」と明記されており、まずは実務面での対応を優先した判断といえます。

とはいえ、「現金給付のみであれば、これまでに実施された給付金と変わらないのでは?」と思う方も多いかもしれません。この点について、政府は現金給付に一本化した場合も「法律上は広義の給付付き税額控除に含まれる」という見解を示しています。

2. 給付付き税額控除、高市政権の目玉政策「税額控除+現金給付」のしくみを解説

給付付き税額控除は、高市総理の就任後初の所信表明演説で「早期に制度設計に着手する」と示された通り、目玉政策のひとつとして高い注目を浴びてきました。ここで、改めてどのような制度なのか振り返っておきましょう。

給付付き税額控除とは、所得に応じて税額を控除し、控除しきれない部分を現金で給付する仕組みです。

たとえば、10万円を控除する例で考えてみましょう。

<10万円を控除する場合>
①所得税の納税額25万円・・・10万円が全額所得税から控除されて、残りの15万円を納める。
②所得税の納税額5万円・・・所得税が全額控除され税負担がゼロになり、差額の5万円が現金給付される。
③所得税の納税額0円・・・全額現金で給付される。

10万円を控除する例1/1

10万円を控除する例

各種資料をもとに筆者作成

このように、給付付き税額控除では税額控除しきれない差額を現金で給付することで、納税額が少ない世帯も恩恵を受けられることが特徴です。

2.1 定額減税との違い

似た制度として2024年に実施された「定額減税」がありますが、定額減税では納税額がある人しか恩恵を受けられず、非課税世帯には別途給付金という形で対応する必要がありました。

その点、給付付き税額控除では控除しきれない金額が現金で支給されるため、税額控除では恩恵を受けにくかった所得層まで広く支援が届けられるメリットがあります。

また、定額減税は一時的な措置でしたが、給付付き税額控除は毎年継続して支援を受けられる恒久的な制度として設計されている点も大きく異なる点です。

3. 給付付き税額控除、制度化に向けた今後の課題

給付付き税額控除を実現するうえで、大きな課題となっているのが所得を正確に把握することの困難さです。

たとえば、収入が一定水準以下で申告義務がない方などは、正確な所得情報を正しく把握することが難しく、誤支給につながってしまうリスクがあります。

また、年末調整を通じて事業主が事務を担う場合、特に中小事業者にとっては対応が困難になる問題も指摘されています。

こうした受給手続きの複雑さは、「国と地方自治体のどちらが主体となって制度を執行するのか?」という課題にも及びます。

今回の議論の整理では、国と地方自治体のどちらか一方だけでなく双方が協力して役割分担していくことが示されましたが、利用者にとって分かりやすく申請の手間が少ない仕組みをどのように設計していくかが今後の焦点となっています。

4. まとめにかえて

給付付き税額控除は、中低所得の現役勤労者の手取り増加と就労促進を目的とした新しい支援の仕組みです。当面は現金給付に一本化される方向が示されていますが、具体的な給付額や対象となる所得の基準など、制度の細かい点はこれから決まる部分が多く残っています。

自分が対象となるかどうかも含め、今後の議論の動向を注視しておきましょう。

参考資料