「老後は現役時代の年収に応じた年金がもらえる」と考えている方は少なくないかもしれません。

しかし、実際に年金を受け取っている人たちの受給額を見ると、そのイメージとは異なる実態が浮かび上がります。

本記事では、厚生労働省年金局の統計データをもとに、厚生年金の受給額の分布と、月30万円以上を受け取れる人がどれほど少数派なのか、そして老後の年金額を左右する要因について確認していきます。

この記事の3つのポイント

  •  厚生年金月額30万円以上の受給者は全体のわずか0.12%
  •  月30万円受給には40年間で年収約1256万円相当が必要
  •  年収アップとキャリア継続が老後の年金額に直結する

 

厚生年金「月額30万円」超えは「わずか0.1%」

「老後は現役時代の年収に応じた年金がもらえる」と楽観視するのは危険かもしれません。

厚生労働省年金局の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金(国民年金分を含む)の平均受給額は月額15万289円。男女別では男性が約17万円、女性が約11万1000円と、大きな開きがあるのが現状です。

厚生年金の受給額ごとの受給権者数

さらに詳しく受給額の分布を見てみると、驚きの実態が浮かび上がります。

  • 20万円以上: 全体の18.8%(5人に1人以下)
  • 30万円以上(年間360万円超): わずか0.12%

つまり、月額30万円以上の年金を受け取れるのは「選ばれたほんの一握り」に過ぎません。

全体の約8割は月20万円未満で生活をやりくりしており、iDeCoや積立投資といった自助努力がいかに不可欠であるかを物語っています。

月30万円の年金を受け取るには、どのくらいの年収が必要?

では、月額30万円以上を受け取っている「わずか0.12%」は、どのような働き方をしてきたのでしょうか。

厚生年金の受給額(老齢厚生年金部分)は、「平均標準報酬額(賞与を含む月額換算)×5.481/1000×加入月数」という計算式で決まります。令和8年度の老齢基礎年金の満額(月額7万608円)と合わせて月額30万円に到達するには、老齢厚生年金部分だけで月額22万9392円が必要です。

この式に当てはめると、40年間(480カ月)にわたって平均標準報酬額が約104万6000円、年収に換算すると約1256万円という高水準の収入を維持し続けた場合の試算に相当します(LIMO編集部による試算)。これは、厚生年金保険料の算定基礎となる標準報酬月額・標準賞与額の上限に近い水準を、40年間ほぼ途切れることなく続けた場合に近い計算です。

裏を返せば、現役時代の年収を上げることは、老後に受け取る年金額を底上げすることにも直結するといえます。会社員であれば、昇進・転職による年収アップや、賞与の水準を維持することが、そのまま将来の厚生年金額に反映される仕組みになっています。

育児・家事負担は妻が夫の「4倍」。共働きの理想と現実のギャップ

ここまで見てきたように、厚生年金の受給額には男女で大きな差があります(男性約17万円、女性約11万1000円)。この差が生まれる背景には、女性のキャリア継続を阻む、家庭内の負担の偏りがあります。

共働き世帯が増えたとはいえ、家庭内のタスク分担には依然として大きな偏りがあります。令和7年版「厚生労働白書・日本の1日」の調査では、6歳未満の子どもがいる家庭において、夫の家事・育児時間が1日平均「1時間54分」であるのに対し、妻は「7時間28分」。

妻が夫の約4倍もの時間を家庭に割いているという現実は、女性がキャリアを維持し、将来の年金額を増やす(=厚生年金に長く加入する)上での大きな障壁となっています。年金制度の議論だけでなく、こうした「家庭内の働き方改革」が進まない限り、女性の老後資金格差を埋めるのは容易ではないでしょう。

厚生年金の受給額を左右するのは、性別そのものではなく、現役時代にどれだけ厚生年金に加入し、収入を積み上げられたかという実質的な条件です。年収アップやキャリアの継続は、性別を問わず、老後の年金額に直結する大切な要素だといえるでしょう。

年金制度のしくみや年金額など、もっと理解を深めたい場合は以下の記事で詳しく解説していますのでご覧ください。

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