初夏の明るい日差しが心地よい5月後半。日々の暮らしが落ち着いている今だからこそ、昔から「なんとなく」払い続けている固定費や契約の見直しに、着手してみませんか。

特に現役時代や60代の頃に加入した生命保険や医療保険、あるいは古い有料サービスなどの契約は、75歳を迎える今のライフスタイルには合わなくなっているケースが少なくありません。

年金生活の基盤をより強固にするためには、こうした「過去の契約」を今の自分に合ったシンプルなサイズへと整えることが効果的です。

75歳以上の世帯では、月々の生活費と年金収入の差をどの程度貯蓄で補っているのか、気になる方も多いでしょう。

75歳は後期高齢者医療制度に移行する節目でもあり、生活費や年金との差、老後資金の状況を把握しておくことは家計管理の参考になります。

本記事では、公的データをもとに、世帯主が75歳以上の無職世帯(二人以上世帯)の生活費や実収入の状況に加え、70代世帯の貯蓄状況も参考にしながら、老後家計の実態を見ていきます。

1. 年金だけでは月いくら足りない?

1.1 最低限の生活費の場合

夫婦二人以上の無職世帯の家計収支1/3

夫婦二人以上の無職世帯の家計収支

出所:総務省「家計調査(家計収支編)2025年」

世帯主が75歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)では、1ヵ月あたりの消費支出は約24万8460円となっています。一方、月々の手取り収入(可処分所得)は約22万1235円で、単純差額では毎月約2万7225円の不足が生じています。

なお、この区分は平均世帯人員が2.30人であり、夫婦のみの世帯に限定したデータではない点に留意が必要です。

また、物価上昇が続くなか、2026年度の公的年金改定率は老齢基礎年金が前年度比1.9%、厚生年金(報酬比例部分)は2.0%の引き上げとなっています。物価動向によっては、家計の負担感が強まる可能性もあります。

1.2 ゆとりある老後の場合

生命保険文化センターの「2025年度 生活保障に関する調査」によると、ゆとりある老後に必要と考えられている月額は39.1万円とされています。

月々の手取り収入(可処分所得)約22.1万円との差は、月約17万円の不足となります。

ゆとり分の使途としては「旅行・レジャー(59.5%)」が最も多く、次いで「日常生活費の充実(50.1%)」「趣味・教養(47.9%)」と続きます。

2. 貯金はいくらある?平均と中央値で見る格差の実態

毎月の不足額を賄うために、実際にどのくらいの金融資産を保有しているのでしょうか。ここでは平均値と中央値に分けて確認します。

貯金額を見るときは「平均値」と「中央値」の両方を確認することが大切です。平均値は一部の高額保有者によって引き上げられやすく、実際の中心層の実態とずれが生じることがあります。中央値は全員を金額順に並べたときの真ん中の値で、より実態に近い数字とされています。

金融経済教育推進機構(J-FLEC)の「家計の金融行動に関する世論調査(2025年)」によると70歳代の二人以上世帯の金融資産保有額は以下の通りです。なお、J-FLECのデータは70歳代全体の数値であり、75歳以上に限定したデータではありません。

  • 平均値:2,416万円
  • 中央値:1,178万円

平均値と中央値には1,238万円の差があります。一部の高資産世帯が平均値を押し上げているためです。平均値を実態として捉えると、自身の家計状況を見誤るリスクがあります。

3. 貯金の平均値・中央値それぞれ何年で尽きる?

月の不足額によって、資産が尽きるまでの年数は大きく変わります。

3.1 ゆとりある老後ベース(月約17万円の不足)

  • 平均値 2,416万円の場合:約12年
  • 中央値 1,178万円の場合:約6年

3.2 最低限の生活費ベース(月約2.7万円の不足)

  • 平均値 2,416万円の場合:約74年
  • 中央値 1,178万円の場合:約36年

ゆとりある老後を目指す場合、中央値の貯蓄では75歳からわずか6年で底をつく計算です。

最低限の生活費ベースでも中央値では約36年で尽きる計算となり、介護費用や予期しない医療費の増加を考慮すると、「平均値なら安心」とは言い切れません。資産寿命の管理が重要な課題となります。

4. 月の生活費はいくらかかる?内訳とおさえておきたいポイント2つ

貯蓄の取り崩しが必要になる背景として、月の生活費の内訳も確認しておきましょう。

消費支出とは、食費・光熱費・住居費・保健医療費など、日常生活にかかる支出の合計です。世帯主が75歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)では、1ヵ月あたりの消費支出は約24万8460円となっています。おさえておきたいポイントが2つあります。

4.1 特徴①住居費の負担が小さい

高齢者の住宅所有の関係割合2/3

高齢者の住宅所有の関係割合

出所:総務省「令和5年住宅・土地統計調査」

高齢者世帯では持ち家率が高い傾向があります。たとえば、高齢者のいる夫婦のみの世帯では持ち家率は87.6%となっており、住宅ローン返済や家賃負担がない世帯も多く見られます。そのため、住居費の支出は現役世代と比べて低くなる場合があります。

4.2 特徴②家計状況には個人差がある

家計調査の平均値は、世帯構成や健康状態、住まいの状況などが異なる世帯をまとめた統計です。実際には、医療費や介護関連の支出、住居の修繕費などによって家計負担が変わる可能性があります。平均額は目安として捉え、自身の生活状況に合わせて確認することが大切です。

5. 年金はいくらもらえる?平均月額と実際の手取り

生活費の支出を確認したところで、収入側となる年金の水準も押さえておきましょう。

公的年金「年齢階層別」平均年金月額3/3

公的年金「年齢階層別」平均年金月額

出所:厚生労働省「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

年金の平均月額はおおよそ以下の通りです(いずれも1人あたり)。

  • 厚生年金(老齢):約15万円
  • 国民年金(老齢基礎年金):約5万9000円

ただし、年金額として公表されている数字は、実際に口座へ振り込まれる金額そのものではありません。実際の受取額は、保険料や税負担などの状況によって個人差があります。老後の収支を考える際は、実際の受取額と支出の両方を確認することが大切です。

6. 「平均」ではなく「自分の数字」で備える

世帯主が75歳以上の無職世帯(二人以上の世帯)では、平均的な家計収支を見ると、消費支出が可処分所得を上回る傾向が見られます。

また、貯蓄額は世帯による差が大きく、平均値だけでは実態を捉えにくい面があります。たとえば、参考とした統計では平均貯蓄額は2416万円、中央値は1178万円で、その差は1238万円(約1200万円超)あります。

老後の家計管理では平均値をそのまま当てはめるのではなく、自分たちの収入・支出・貯蓄の状況を確認しながら考えることが重要です。まずは年金収入、毎月の支出、現在の資産額を整理するところから始めてみましょう。

参考資料

小西 雅美