3. 最新の動向|なぜ「現金給付」に一本化?背景に《社会保険料の負担》問題
内閣官房が公表した「中間とりまとめに向けた議論の整理(給付付き税額控除)」によれば、事務手続きの効率化と制度の早期実現を重視し、当面は税額控除(減税)の実施を見送り、「現金給付」という形で先行して導入する方針が示されています。この判断は、過去にイギリスやフランスが制度の複雑さから「減税と給付の併用」をやめ、最終的に給付のみに切り替えた経緯や、日本国内の自治体や企業における事務的な負担を軽減するための現実的な選択といえるでしょう。
この方針の背景には、日本の現役世代、特に子育てをしている中低所得層の世帯が、他の先進国と比較して社会保険料などの負担が重いという現状があります。さらに、今回の制度設計では、子育て世帯に限定せず、単身者や自営業者なども含めた幅広い層を支援の対象とすることが検討されています。
手取り額が伸び悩む問題や、いわゆる「年収の壁」を意識して就労時間を調整する「働き控え」を解消するために、以下のような具体的な支援策が議論されています。
例えば、所得の正確な把握が困難な非課税層には一律の「定額」を給付する一方、課税層に対しては就労収入が増えるほど支援額も増える「逓増」方式を一定水準まで適用します。加えて、社会保険料の負担が発生して手取りが逆転する「年収の壁」を超える際には、「一時的な加算」を行い、手取りの減少を防ぎます。そして、所得が一定額を超えた高所得層については、支援額を緩やかに減らしていく(逓減・消失させる)設計が考えられています。
さらに、支援額の算定は世帯単位ではなく、原則として「個人単位」で行われるため、配偶者の収入を気にして働く時間を調整するといった課題の緩和にもつながると期待されています。
著者
株式会社モニクルリサーチ メディア編集本部
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)/CFP®/J-FLEC認定アドバイザー
FP資格「CFP®認定者」及び「1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)」を保有。
早稲田大学卒業後、日本生命保険相互会社に入社し、生命保険・損害保険の実務および社内教育部署にて教材制作・研修企画に長年従事。独立後はファイナンシャルプランナーとして公正中立な立場から家計相談・ライフプラン設計などの相談実績を持つ。また、マネースクール講師としてNISA、iDeCoを含む資産運用、社会保障など幅広い分野で「お金の先生」として活動。特に公的年金制度の仕組み、老齢年金、障害年金、遺族年金といった厚生労働省管轄の社会保障分野に深い知見を持つ。
現在、株式会社モニクルリサーチのLIMO編集部にて、厚生労働省、金融庁、総務省、デジタル庁、財務省(国税庁)といった官公庁の一次情報をもとに、信頼性の高い記事の企画・執筆・編集・監修を担当。J-FLEC(金融経済教育推進機構)認定アドバイザーとして、企業や学校への金融教育の普及にも尽力している。
大の犬好きで、現在も愛犬と暮らす。JADP認定の「動物介護士®」「動物介護ホーム施設責任者®」「ペットセラピスト®」の資格を取得。確かな金融知識を持ちながらも、生活者としてのリアルなライフスタイルやペットケアへの深い造詣を日々の活動の糧としている。
(2026年6月26日更新)
監修者
マネー編集部社会保障班は株式会社モニクルリサーチが運営する『くらしとお金の経済メディア ~LIMO(リーモ)~』において、厚生労働省や官公庁の公開情報等をもとに社会保障制度や社会福祉、公的扶助、保険医療などをテーマに関する記事を執筆・編集・公開している。
マネー編集部社会保障班は、地方自治体職員出身の太田彩子、日本生命保険相互会社出身の村岸理美、株式会社三菱UFJ銀行と三井住友信託銀行株式会社出身の和田直子など、豊富な経験と知識を有した編集者で構成されている。表彰歴多数の編集者も複数在籍。「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「福祉医療」等の業務や、国民健康保険料の賦課、保険料徴収、高額療養費制度などの給付、国民年金や国民健康保険への資格切り替え、補助金申請等の業務を担った実務経験者も在籍している。
CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)、2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)などの資格保有者も多数在籍。(最新更新日:2025年8月26日)