3. 1.5兆円の成長投資と「実業ハイブリッド」の脅威

非資源分野で確固たる基盤を築いた伊藤忠商事は、次なる成長に向けてアクセルを踏み込んでいます。

2025年度の成長投資は、設備投資(CAPEX)2,890億円と新規投資5,490億円を合わせた8,380億円でしたが、2026年度はこれをほぼ倍増させ、1.5兆円規模の投資を行う計画を発表しました。

「どこか一つの分野を集中して伸ばすのか」という声もありますが、泉田氏の分析は異なります。伊藤忠は特定の分野に偏るのではなく、全セグメントにおいて「バリューチェーン(価値連鎖)の強化拡大」を狙っているというのです。

モノを作るところから消費者に届けるまでの商流を押さえ、足りない部分(上流や下流)を買収や提携で補強していく戦略です。

ここで、一般的な投資ファンドと総合商社の決定的な違いが浮き彫りになります。

「実際自分たちが実業をやってるんで、そこのデータも取りつつお金で買ってきて、さらに実業にインパクトを出せるっていう意味では、商社はすごい強いポジションだね」

一般的なファンドは有価証券の売買でしか価値を生み出せませんが、商社は自ら事業(実業)を行っています。中古車販売のWECARS(旧ビッグモーター)の再建や、保険代理店「ほけんの窓口」の完全子会社化(約700店舗)など、実業に直接テコ入れして価値を高めることができるのは商社ならではの強みです。

さらに、資金調達の面でも強力な武器を持っています。

【動画で解説】伊藤忠商事の強さはどこに?元機関投資家が語る

「ファンドと違うのは、お金を借りて投資ができるってことなんですよ。投資信託だと一般的には投資をする人、投資家からお金を集めてそのベースにお金を投資するんですけど、商社の場合は銀行から借り入れできるんで、それもまたレバレッジをかけてやれるのでそこは商社の強みでもありますね」

銀行からの借入(レバレッジ)を活用して巨額の資金を動かし、現場のリアルなデータを基に有望な企業を買収し、自らの手で事業を改善する。「投資×実業×レバレッジ」のハイブリッドこそが、商社というビジネスモデルの真の恐ろしさと言えます。

商社の「実業×投資×レバレッジ」の強み(一般的なファンド vs 総合商社の比較)3/3

商社の「実業×投資×レバレッジ」の強み(一般的なファンド vs 総合商社の比較)

出所:イズミダイズムの解説を基に作成