2. 伊藤忠を支える「8つのカンパニー」と「非資源」の強み
では、投資会社としての伊藤忠商事はどのようなポートフォリオを組んでいるのでしょうか。同社は社内を8つのセグメント(カンパニー)に分けて事業を展開しています。
具体的には「繊維」「機械」「金属」「エネルギー・化学品」「食料」「住生活」「情報・金融」、そしてファミリーマートを含む全社横断的な案件を扱う「第8カンパニー」です。
伊藤忠といえば「繊維」のイメージが強いかもしれませんが、現在の収益の柱は大きく変わっています。
2025年度(2026年3月期)のセグメント別連結純利益を見ると、トップは「機械」の1,556億円、次いで「金属」の1,435億円、「食料」の1,065億円と続きます。
さらに、2026年度の増益計画でも「金属(+285億円)」「機械(+244億円)」「食料(+90億円)」が牽引役となっており、この3分野が現在の伊藤忠のメインエンジンであることが分かります。
そして、伊藤忠のポートフォリオ戦略を語る上で欠かせないのが「資源か、非資源か」という視点です。
泉田氏は、資源ビジネスは価格変動(ボラティリティ)が激しく、脱炭素化の流れという逆風もあると指摘します。
他の総合商社が石炭や化石燃料などの資源権益で大きく稼ぐ時期があったのに対し、伊藤忠は意図的に「非資源」のパイを増やす戦略をとってきました。
「伊藤忠の場合は生い立ちも含めて会社の非資源が強かったんで、そこのリターンは過去低かったけれども、収益のボラティリティが安定しているということと、そこに積極的に資産を突っ込み絶対額の利益を増やすことで、会社の収益をしっかり着実に積み重ねてきたっていうのが他の商社との違いですかね」
2010年時点では非資源のROA(総資産利益率)はわずか2%でしたが、2025年度には5.5%まで改善しています。
資産規模も3.9兆円から14.6兆円へと大幅に拡大させました。価格変動の激しい資源への依存度を下げ、安定した非資源分野で着実に利益を積み上げる。これが伊藤忠の「ファンドとしての運用方針」なのです。
【動画で解説】伊藤忠商事の強さはどこに?元機関投資家が語る
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日