厚生労働省は、2026年度の公的年金額について、国民年金を1.9%、厚生年金を2.0%引き上げる改定内容を公表しました。あわせて公表された試算では、現役時代の働き方や性別による将来の年金受給額の具体的なモデルケースが示されています。

2026年度の年金額改定の詳細や、ライフコースに応じた年金額の目安、実際の受給額の男女差について今回は解説します。

1. 国民年金・厚生年金、2階建ての構造

日本の公的年金には、老齢年金の他、ケガや病気で仕事や生活などが制限されるようになった場合に受給できる「障害年金」、一家の生計の担い手にまさかのときがあった場合に受給できる「遺族年金」という、3つの保障機能があります。

「年金」と聞くと、リタイア後に受け取る「老齢年金」をイメージする人が多いかもしれませんね。

1.1 年金制度は「国民年金+厚生年金」の2階建て構造

「2階建て構造」と呼ばれるそのしくみは、1階部分の「国民年金(基礎年金)」と2階部分の「厚生年金」から成り立ち、現役時代の働き方や過ごし方が、将来の年金水準を大きく左右する性質を持っています。

ここでは、「国民年金」と「厚生年金」の基本とあわせて、それぞれの「老齢年金の受給額」についても整理しておきましょう。

厚生年金と国民年金の仕組み1/6

厚生年金と国民年金の仕組み

出所:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」等を参考にLIMO編集部作成

1.2 1階部分《国民年金》

加入対象者は?

  • 原則として日本に居住する20歳から60歳未満の全員(職業や国籍は問わない)

年金保険料は?

  • 全員一律、ただし年度ごとに改定あり(※1)

老齢年金の受給額は?

  • 保険料を全期間(480カ月)納付すれば、65歳以降で満額(※2)の老齢基礎年金を受給できる

※1 国民年金保険料:2026年度月額は1万7920円
※2 国民年金(老齢基礎年金)の満額:2026年度月額は7万608円

1.3 2階部分《厚生年金》

加入対象者は?

  • 会社員や公務員、またパート等で特定適用事業所(※3)に働き一定要件を満たした人(国民年金に上乗せで加入)

年金保険料は?

  • 収入に応じて(上限あり)変わる(※4)

老齢年金の受給額は?

  • 加入期間や納付した保険料により個人差が出る

このように、国民年金と厚生年金では、加入対象となる人、年金保険料の決まり方、老齢年金額の計算方法などが異なります。

そのため、現役時代の年金加入履歴により、実際に受け取る老齢年金額にはおのずと個人差が出てくるのです。

※3 特定適用事業所:1年のうち6カ月間以上、適用事業所の厚生年金保険の被保険者(短時間労働者は含まない、共済組合員を含む)の総数が51人以上となることが見込まれる企業など
※4 厚生年金の保険料額:標準報酬月額(上限65万円)、標準賞与額(上限150万円)に保険料率をかけて計算される

1.4 【年金カレンダー】2026年の年金支給日はいつ?

公的年金は、原則として「偶数月の15日(※5)」に、支給月の前々月分と前月分の2カ月分を合算して支給されます(後払い方式)。

2026年の「年金支給日」と「支給対象」の年金は以下の通りです。

2026年の年金支給日2/6

2026年の年金支給日

出所:日本年金機構「Q.年金はいつ支払われますか」をもとにLIMO編集部作成

  • 2026年2月13日(金):2025年12月・2026年1月分
  • 2026年4月15日(水):2月・3月分
  • 2026年6月15日(月): 4月・5月分
  • 2026年8月14日(金): 6月・7月分
  • 2026年10月15日(木): 8月・9月分
  • 2026年12月15日(火): 10月・11月分

※5 「15日」が土日・祝日の場合は直前の平日に前倒しされる

2. 国民年金・厚生年金、2026年度は増額改定「国民年金の満額は7万円台突破」

2026年度の年金額は、前年度から基礎年金(国民年金部分)が1.9%、厚生年金(報酬比例部分を含む)が2.0%引き上げとなります。

改定後の年金額は、4月・5月分をまとめて支給する6月支給分から反映されます。

2.1 2026年度の国民年金と厚生年金の年金額例

  • 国民年金(老齢基礎年金(満額):1人分):7万608円(+1300円)
  • 厚生年金(夫婦2人分):23万7279円(+4495円)

※昭和31年4月1日以前生まれの方の老齢基礎年金の満額は月額7万408円(対前年度比+1300円)
※厚生年金は「男性の平均的な収入(平均標準報酬(賞与含む月額換算)45万5000円)」で40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金(満額))の給付水準

厚生労働省は今回の年金改定の公表にあたり、「多様なライフコースに応じた年金額」として現役時代の働き方や収入ごとの年金額例を提示しています。

3. 厚生年金、平均収入50.9万円の男性「65歳からいくらもらえる?」

年金加入期間や収入により、どのように年金額が変わっていくのでしょうか。

厚生労働省は、2026年度の年金額改定内容とともに、現役時代の年金加入状況や年収ごとの年金額例を、「多様なライフコースに応じた年金額」として公表しました。

具体的には、「2026年度に65歳になる人の場合」の年金額の概算が、公的年金加入履歴の類型・男女別に「合計5パターン」提示されています。

多様なライフコースに応じた年金額4/6

多様なライフコースに応じた年金額

出所:厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」

3.1 パターン①:男性・厚生年金期間中心

年金月額:17万6793円

  • 平均厚生年金期間:39.8年
  • 平均収入:50万9000円※賞与含む月額換算。以下同じ。
  • 基礎年金:6万9951円
  • 厚生年金:10万6842円

3.2 パターン②:男性・国民年金(第1号被保険者)期間中心

年金月額:6万3513円

  • 平均厚生年金期間:7.6年
  • 平均収入:36万4000円
  • 基礎年金:4万8896円
  • 厚生年金:1万4617円

3.3 パターン③:女性・厚生年金期間中心

年金月額:13万4640円

  • 平均厚生年金期間:33.4年
  • 平均収入:35万6000円
  • 基礎年金:7万1881円
  • 厚生年金:6万2759円

3.4 パターン④:女性・国民年金(第1号被保険者)期間中心

年金月額:6万1771円

  • 平均厚生年金期間:6.5年
  • 平均収入:25万1000円
  • 基礎年金:5万3119円
  • 厚生年金:8652円

3.5 パターン⑤:女性・国民年金(第3号被保険者)期間中心

年金月額:7万8249円

  • 平均厚生年金期間:6.7年
  • 平均収入:26万3000円
  • 基礎年金:6万9016円
  • 厚生年金:9234円

上記はあくまでも年金額の例ですが、厚生年金の加入期間が長く、収入が高いほど、老後に受け取る年金額は多くなる傾向が見られます。

また、国民年金と厚生年金のどちらを中心に加入していたのかが、年金水準に大きな影響を与えていることも見て取れます。

4. 国民年金・厚生年金、平均受給額「厚生年金の男女差は月5.8万円」

老後に受け取る年金額は、現役時代の年金加入状況により人それぞれです。ここでは、60歳~90歳以上のすべての受給権者について、厚生年金と国民年金の受給額分布を見ていきます。

厚生年金平均月額5/6

厚生年金平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

国民年金平均月額6/6

国民年金平均月額

出所:厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」をもとにLIMO編集部作成

4.1 厚生年金《平均月額の男女差・個人差》

厚生年金の平均年金月額は、全体では15万289円でした。男女別は下記のとおりです。

  • 〈男性〉平均年金月額:16万9967円
  • 〈女性〉平均年金月額:11万1413円

※国民年金部分を含む

年金月額階級ごとの受給者数

  • ~1万円:4万3399人
  • 1万円以上~2万円未満:1万4137人
  • 2万円以上~3万円未満:3万5397人
  • 3万円以上~4万円未満:6万8210人
  • 4万円以上~5万円未満:7万6692人
  • 5万円以上~6万円未満:10万8447人
  • 6万円以上~7万円未満:31万5106人
  • 7万円以上~8万円未満:57万8950人
  • 8万円以上~9万円未満:80万2179人
  • 9万円以上~10万円未満:101万1457人
  • 10万円以上~11万円未満:111万2828人
  • 11万円以上~12万円未満:107万1485人
  • 12万円以上~13万円未満:97万9155人
  • 13万円以上~14万円未満:92万3506人
  • 14万円以上~15万円未満:92万9264人
  • 15万円以上~16万円未満:96万5035人
  • 16万円以上~17万円未満:100万1322人
  • 17万円以上~18万円未満:103万1951人
  • 18万円以上~19万円未満:102万6888人
  • 19万円以上~20万円未満:96万2615人
  • 20万円以上~21万円未満:85万3591人
  • 21万円以上~22万円未満:70万4633人
  • 22万円以上~23万円未満:52万3958人
  • 23万円以上~24万円未満:35万4人
  • 24万円以上~25万円未満:23万211人
  • 25万円以上~26万円未満:15万796人
  • 26万円以上~27万円未満:9万4667人
  • 27万円以上~28万円未満:5万5083人
  • 28万円以上~29万円未満:3万289人
  • 29万円以上~30万円未満:1万5158人
  • 30万円以上~:1万9283人

厚生年金の平均年金月額は、全体で見ると15万円台ですが男女差があり、男性16万円台、女性10万円台となっています。

また、月額1万円未満となる人から、25万円を超える高額受給者まで幅広い層に分布しており、個人差が大きいことがわかります。

4.2 国民年金《平均月額の男女差・個人差》

国民年金の平均年金月額は、全体では5万9310円でした。男女別は下記のとおりです。

  • 〈男性〉平均年金月額:6万1595円
  • 〈女性〉平均年金月額:5万7582円

年金月額階級ごとの受給者数

  • 1万円未満:5万1828人
  • 1万円以上~2万円未満:21万3583人
  • 2万円以上~3万円未満:68万4559人
  • 3万円以上~4万円未満:206万1539人
  • 4万円以上~5万円未満:388万83人
  • 5万円以上~6万円未満:641万228人
  • 6万円以上~7万円未満:1715万5059人
  • 7万円以上~:299万7738人

国民年金の平均年金月額は、男女ともに5万円台、ボリュームゾーンは「6万円以上~7万円未満」です。

多くの人が満額に近い年金額を受け取る一方で、月額1万円未満となる人も一定数存在しています。

5. まとめにかえて

ここまで年金一覧表を用いて年金受給額について詳しく見てきました。これを見ると年金のみで老後の生活を送るというのはなかなか難しいと感じるのではないでしょうか。

そのようなことから最近では新NISAやiDeCoのような制度を用いて自分自身で老後の生活資金の用意をする方が増えてきています。

しかし、新NISAやiDeCoは主に投資信託を活用しており元本の保証はないため、まずは自分自身で詳しく調べてみてはいかがでしょうか。

参考資料

筒井 亮鳳