6. 株主還元拡大シナリオが今後の株価上昇の鍵を握る
約3兆円もの現金性資産を持ち、無借金で、しかも株主から集めた資本を効率よく使って利益を上げる指標であるROE(自己資本利益率)も、13.5%と高い水準を維持しているキーエンス。
まさに「隙がない」財務体質ですが、これが皮肉にも株価が横ばいだったもう一つの理由に繋がっています。
インタビュワーから「キャッシュがどんどん貯まっていくとなると、機関投資家からは株主還元を求められるのではないか?」と問われると、泉田氏は深く同意し、投資家の本音を次のように代弁しました。
「こんなにキャッシュがあるんだったら株主還元、自社株買いして発行済み株式総数減らしてほしいとか、配当をもっと増やしてほしいとか、多分言いたいことはいっぱいあると思うんで、そこが実現できたらさらに株価の上昇スピードは上がると思います」
会社側も投資家の声に応えようとはしています。実際、利益のうちどれだけを配当に回すかを示す「配当性向」は、前期の21.3%から今期は30.0%へと引き上げられました。
しかし、約3兆円のキャッシュを抱えていることを考えれば、市場は「もっと還元できるはずだ」と期待しています。
特に機関投資家が期待しているのが「自社株買い」です。自社株買いを行えば、市場に出回る株式の総数が減るため、1株あたりの価値(利益)が向上し、直接的な株価上昇の要因となります。
キーエンスの事業自体は今後も成長していくだろうと泉田氏は見ています。それに加えて、もし今後、会社側が大規模な自社株買いなどの積極的な株主還元策を発表することがあれば、それが起爆剤となって株価の上昇トレンドが再び加速する可能性を秘めているのです。
今回の決算発表による株価急伸は、そうした市場の期待が少しずつ織り込まれ始めたサインなのかもしれません。
【動画で解説】キーエンス、決算発表直後に株価が10%近くも急伸
※本記事は、決算情報および動画内での解説に基づく分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。最終的な投資判断はご自身の責任で行ってください。株価は将来にわたって下落する可能性もあり、過去の業績や財務体質は将来のリターンを保証するものではありません。
参考資料
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年2月21日