初夏の陽気がまぶしい5月下旬。季節の変わり目は、シニア世代にとって日々の体調管理にいつも以上に気を配る時期ではないでしょうか。

特に70歳代を迎えると、医療機関での窓口負担割合の切り替わりを経験するなど、それまで以上に「健康維持にかかるコスト」が身近でリアルな問題として浮上してきます。人生100年時代、健やかに暮らしたいと願う反面、予期せぬ医療費や介護費が家計に与える影響は無視できません。

子どもが独立し、「老後は夫婦二人だけなら何とかなる」と考える方も少なくありませんが、実際のデータを見ると、70歳代の夫婦世帯の家計は必ずしも余裕があるとはいえない状況です。

貯蓄額には大きなばらつきがあり、十分な資産を持つ世帯がある一方で、貯蓄が少ない、あるいは保有していない世帯も一定数存在します。

また、日々の生活では年金収入だけでは支出をまかないきれず、毎月赤字となるケースも見られます。

本記事では、70歳代・二人以上世帯の貯蓄状況や家計収支の実態をデータから整理し、老後資金を守るための具体的な対策について解説します。

1. 70歳代・二人以上世帯の「リアルな貯蓄額」はどのくらい?

まずは、70歳代のシニア世帯における貯蓄の実態を確認していきます。

J-FLEC(金融経済教育推進機構)「家計の金融行動に関する世論調査 2025年」によると、70歳代・二人以上世帯の貯蓄額は以下のとおりです。

※なお、これから確認する金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。

  • 平均:2416万円
  • 中央値:1178万円

平均値は一部の資産額が大きい世帯に引き上げられやすいため、実情を捉えるうえでは中央値を見ることが重要です。

実際に、同調査における中央値は1178万円となっており、平均との差は1000万円以上に及びます。

この差から、シニア世帯の資産状況には大きな開きがあり、貯蓄額にばらつきがあることが分かります。

次章では、同じ資料をもとに70歳代・二人以上世帯の貯蓄割合について確認していきましょう。

1.1 【貯蓄割合】70歳代でも「貯蓄ゼロ世帯」が一定数存在する

J-FLEC(金融経済教育推進機構)の同調査では、70歳代・二人以上世帯の金融資産の保有状況についても示されています。

  • 金融資産非保有:10.9%
  • 100万円未満:4.5%
  • 100~200万円未満:5.1%
  • 200~300万円未満:3.7%
  • 300~400万円未満:3.9%
  • 400~500万円未満:2.9%
  • 500~700万円未満:6.4%
  • 700~1000万円未満:6.7%
  • 1000~1500万円未満:11.1%
  • 1500~2000万円未満:6.7%
  • 2000~3000万円未満:12.3%
  • 3000万円以上:25.2%
  • 無回答:0.6%

内訳を見ると、貯蓄が100万円未満の世帯は約15%にのぼる一方で、3000万円以上を保有する世帯も約25%存在しています。

上記から、同じ70歳代であっても資産状況には大きな差があり、世帯ごとの経済状況にばらつきがあることが分かります。

老後の生活を安定させるためには、年金だけに依存するのではなく、現役時代から家計や資産の状況を見直し、無理のない範囲で備えを進めていくことが重要です。

また、老後資金を考えるうえでは、老後の家計収支を把握しておくことも欠かせません。

次章では、70歳代・無職夫婦世帯の「毎月の収入と支出」について見ていきましょう。

2. 70歳代・無職夫婦世帯の「毎月の収入と支出」はどのくらい?

総務省統計局が公表した「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」によると、70歳代の平均的な家計収支は以下のとおりです。

二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の家計収支1/1

二人以上の世帯のうち65歳以上の無職世帯の家計収支

出所:総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」

2.1 70歳代以降(70〜74歳・75歳以上)の「平均収入」はいくら?

【70〜74歳】

  • 実収入:28万7725円
  • うち社会保障給付(主に公的年金給付):22万4980円
  • 可処分所得(手取り収入):24万8599円

【75歳以上】

  • 実収入:25万2798円
  • うち社会保障給付(主に公的年金給付):21万1289円
  • 可処分所得(手取り収入):22万1235円

2.2 70歳代以降(70〜74歳・75歳以上)の「平均支出」はいくら?

【70〜74歳】

  • 消費支出:28万5844円
  • 非消費支出:3万9127円

【75歳以上】

  • 消費支出:24万8460円
  • 非消費支出:3万1563円

2.3 70歳代以降(70〜74歳・75歳以上)の「家計収支」は赤字?黒字?

70〜74歳・75歳以上の世帯では、いずれも毎月の支出が収入を上回っており、家計は赤字となっています。

70〜74歳では約3万7000円、75歳以上では約2万7000円の不足が生じている状況です。

このように、年金収入が中心となる生活では、毎月の収支だけで生活費をまかなうことが難しく、不足分を貯蓄の取り崩しで補っているケースが多いと考えられます。

仮にこの状態が長く続けば、貯蓄の減少が避けられず、将来的な生活に影響を及ぼす可能性もあります。

このような背景を踏まえると、「二人だから何とかなる」と考えるのは必ずしも安心とはいえません。

次章では、老後に潜む具体的なリスクについて詳しく見ていきます。

3. 「二人でも安心とは限らない」老後に潜むリスクとは?

老後は「二人暮らしなら何とかなる」と考える人もいますが、実際の家計は収入や支出、健康状態、住環境などによって大きく異なります。

家計調査では、65歳以上の無職世帯の消費支出は65~69歳世帯が最も高く、年齢階級が上がるにつれて支出総額は低下する傾向も見られます。一方で、支出全体が減少していても、医療費や介護関連費用などの割合が変化する可能性には注意が必要です。

また、公的年金を中心とした生活では、収入が大きく変動しにくいケースもあります。そのため、住宅の修繕や家電の買い替えなど想定外の支出が生じた場合には、貯蓄を取り崩して対応する場面が出てくることもあります。

さらに、長寿化によって生活期間が長くなることや、保有資産の内容によっては必要なタイミングで使いにくいケースも考えられます。

老後資金を考える際は、平均的な支出額だけではなく、自身の収入状況や支出構造、保有資産の特徴も含めて確認しておくことが大切です。

次章では、そのために検討できる具体的な対策を見ていきます。

4. 老後資金を守るためにできる3つのこと

老後の家計は、収入が大きく増えにくい一方で支出は変動しやすく、気づかないうちに資産が減っていく可能性があります。

そのため、日々の生活の中で無理なく実践できる対策を積み重ねることが重要です。

本章では、老後資金を守るために意識しておきたい3つのポイントを紹介します。

4.1 支出の見直しを行う

まず取り組みたいのが、毎月の支出を把握し、無駄を見直すことです。

固定費や日常的な支出の中には、見直すことで削減できる項目が含まれている場合があります。

とくに、長年そのままになっている支出は、一度整理するだけでも家計の負担軽減につながる可能性があります。

生活の質を大きく落とさずに支出を最適化することで、貯蓄の減少スピードを抑えることが期待できるでしょう。

4.2 収入を増やす選択肢を視野に入れる

支出の見直しだけでなく、収入面にも目を向けておくことが重要です。

年金だけに頼る生活では、収支の余裕を確保しにくくなるため、別の収入源を持つことで家計の安定性が高まります。

無理のない範囲で働くことや、これまでの経験を活かした収入を得る方法を検討することで、日々の生活にゆとりを持たせることも可能です。

年金に依存しすぎない体制を整えておくことが、長く安心して暮らすための備えとなるでしょう。

4.3 制度の活用を検討する

公的な制度を上手に活用することも、老後資金を守るうえで欠かせません。

ただし、支援制度や給付金の多くは、条件を満たしていても申請しなければ受け取れないため、利用できる制度を把握し、必要に応じて活用することが大切です。

日々の支出管理・収入確保・制度活用をバランスよく実践することが、老後資金を長く守るための鍵となります。

5. 「二人なら安心」は通用しない?データから見える老後家計の現実

本記事では、70歳代・二人以上世帯の貯蓄状況や家計収支の実態について解説しました。

70歳代・二人以上世帯の家計は一見安定しているように見えても、実際には貯蓄額や収支に大きな差があり、誰もが余裕を持って暮らせているわけではないことが分かります。

とくに、年金収入だけでは生活費をまかないきれず、毎月の不足分を貯蓄で補う構造が続くと、資産は徐々に減少していきます。

また、医療費や介護費、想定外の支出など、老後特有のリスクも重なりやすい点には注意が必要です。

こうした現実を踏まえると、「二人だから大丈夫」と考えるのではなく、自身の家計状況を正しく把握し、早い段階から対策を講じることが重要といえるでしょう。

参考資料

マネー編集部貯蓄班