生活保護という制度に対して、「どのような人が受給しているのか」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
実際のデータを見ると、受給世帯の中でも特に割合が高いのが「単身の高齢者世帯」であることが分かります。
その背景には、年金収入だけでは生活を維持しにくい現実や、単身世帯の増加といった複数の要因が存在しています。
本記事では、厚生労働省や総務省の公的データをもとに、生活保護受給世帯の内訳やその背景を整理しながら、シニア世帯の家計収支の実態を具体的に解説します。
さらに、生活保護制度の中核である「生活扶助額」についても、世帯別の目安を示しながら紹介しているので、あわせて参考にしてください。
1. 【生活保護】受給世帯の51.3%は「単身高齢者」
生活保護世帯のうち、「高齢者の単身世帯が多い」という実態は本当なのでしょうか。
厚生労働省が公表した「生活保護の被保護者調査(令和8年1月分概数)」によると、2026年1月時点で生活保護を受給している人は約198万人となっています。
この人数は総人口の1.61%にあたり、日本ではおよそ60人に1人が生活保護を利用している状況です。
さらに同調査では、生活保護世帯の54.9%が高齢者世帯を占めており、その中でも51.3%が単身世帯であることが示されています。
【世帯類型別世帯数及び割合(保護停止中を含まない)】
- 高齢者世帯:89万8482世帯(54.9%)
・単身世帯:83万9138世帯(51.3%)
・二人以上世帯:5万9344世帯(3.6%) - 母子世帯:5万8378世帯(3.6%)
- 障害者・傷病者世帯:41万8411世帯(25.6%)
- その他の世帯:26万591世帯(15.9%)
高齢者の生活環境は厳しい状況にあり、生活保護世帯の中でも高齢者の占める割合は高く、とりわけ単身で暮らすシニア世帯の割合が大きいことが特徴となっています。
では、なぜ生活保護受給世帯の中で「単身の高齢者」が多いのでしょうか。
1.1 なぜ生活保護受給世帯の中で「単身の高齢者」が多いのか
生活保護受給世帯の中で単身の高齢者が多い背景には、複数の要因が重なっています。
まず、高齢になると就労による収入を得ることが難しくなり、年金が主な収入源となりますが、その年金額だけでは生活費をまかないきれないケースが少なくありません。
実際に、厚生労働省の「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」を見ると、公的年金・恩給を「総所得の100%」としている高齢者世帯は43.4%となっています。
一方で、残りの世帯では、就労収入や財産所得など、公的年金以外の収入もあわせて生活していることが分かります。
さらに、配偶者との死別や未婚などにより一人暮らしとなる高齢者も増えており、世帯内で支え合うことができない点も大きな要因です。
加えて、貯蓄の取り崩しや医療・介護費の負担が重なることで、家計が厳しくなる傾向も見られます。
このように、収入が限られる一方で支出は増えやすく、さらに単身世帯の増加も重なることで、結果として単身の高齢者が生活保護に至るケースが目立っています。
では、65歳以上の無職世帯、いわゆる「年金を主な収入源とする世帯」の家計は、実際にどのような収支状況となっているのでしょうか。
2. シニア世帯の平均的な「家計収支」から分かる実態
総務省「家計調査報告 家計収支編 2025年(令和7年)平均結果の概要」をもとに、65歳以上のシニアの家計収支を世帯別に確認していきましょう。
2.1 「高齢夫婦世帯」の家計収支は約4万円の赤字
【65歳以上 夫婦のみ無職世帯】
- 実収入:25万4395円
- 可処分所得(手取り収入):22万1544円
- 消費支出:26万3979円
- 毎月の赤字額:4万2434円
2.2 「高齢単身世帯」の家計収支は約3万円の赤字
【65歳以上 単身無職世帯】
- 実収入:13万1456円
- 可処分所得(手取り収入):11万8465円
- 消費支出:14万8445円
- 毎月の赤字額:2万9980円
夫婦のみの世帯では、可処分所得が22万1544円であるのに対し、消費支出は26万3979円となっており、毎月4万2434円の赤字です。
一方、単身世帯でも同様に、手取り収入11万8465円に対して支出は14万8445円で、毎月2万9980円の不足が生じています。
なお、これらの「消費支出」には、食費や光熱費に加え、「保健医療」に分類される日常的な医療費なども含まれています。一方で、突発的な介護費用や大きな支出が発生した場合には、家計への負担がさらに増す可能性があります。
こうした状況を踏まえると、生活保護を受けている世帯のうち約半数を単身の高齢者世帯が占めているという結果も、驚くべきことではないでしょう。
3. 【仕組みを理解】生活保護の「生活扶助額」とは?
生活保護は、一定の金額が一律で支給される制度ではなく、世帯ごとの収入や必要な支出に応じて不足分が補われる仕組みです。
生活保護制度は8つの扶助に分かれており、その中でも日常生活の基盤となるのが「生活扶助」です。
- 生活扶助:食費や被服費、光熱水費など日常生活にかかる費用
- 住宅扶助:アパートなどの家賃について、定められた範囲内で実費を支給
- 教育扶助:義務教育に必要な学用品費など
- 医療扶助:医療サービスにかかる費用(医療機関へ直接支払われ、自己負担なし)
- 介護扶助:介護サービスの費用(事業者へ直接支払われ、自己負担なし)
- 出産扶助:出産にかかる費用を一定範囲内で支給
- 生業扶助:就労に必要な技能習得や、高等学校等への就学にかかる費用を支給
- 葬祭扶助:葬儀にかかる費用を一定範囲内で支給
生活扶助は、食費や被服費、光熱水費など、日々の暮らしに欠かせない費用を支えるためのもので、生活保護の中核となる扶助です。
単なる「現金給付」ではなく、最低限度の生活を維持するために必要な水準が細かく設定されている点が特徴です。
この生活扶助の金額は、全国一律ではなく、住んでいる地域の物価水準や世帯人数、年齢構成などによって異なります。
また、世帯の収入がある場合は、その収入を差し引いたうえで不足分のみが支給されます。
では実際に、どの程度の金額が支給されるのか、具体的な例を次章にて見ていきましょう。
4. 【世帯別】生活扶助額の目安一覧を確認
厚生労働省「生活保護制度の概要等について」によると、世帯別による生活扶助額の目安額は以下のとおりです。
【世帯構成:東京都区部等/地方郡部等】
- 3人世帯(33歳、29歳、4歳): 16万4860円/14万5870円
- 高齢者単身世帯(68歳):7万7980円/6万8450円
- 高齢者夫婦世帯(68歳、65歳):12万2460円/10万8720円
- 母子世帯(30歳、4歳、2歳): 19万6220円/17万4800円
生活扶助額は世帯の人数や年齢構成、さらに居住地域によって水準が異なり、一律ではないことが分かります。
同じ世帯人数であっても地域差によって支給額に差が生じる点は、制度の特徴の一つといえるでしょう。
また、高齢者の単身世帯や夫婦世帯、子どもを含む世帯など、それぞれの生活実態に応じて基準が細かく設定されていることから、最低限度の生活を維持するための仕組みとして設計されていることがうかがえます。
このように、生活扶助は個々の状況に応じて支給額が決まる制度であり、世帯ごとの生活条件を踏まえて柔軟に運用されている点が大きな特徴です。
5. 制度の内容を正しく理解しておこう
本記事では、厚生労働省や総務省の公的データをもとに、生活保護受給世帯の内訳やその背景について解説しました。
生活保護受給世帯の中で単身の高齢者が多い背景には、年金だけでは生活を維持しにくい実態や、単身世帯の増加といった複数の要因があります。
家計収支のデータからも、収入だけでは支出を補えず、赤字が続きやすい状況が明らかになっています。
このような状況を踏まえると、生活保護は限られた人のための制度ではなく、生活の維持が困難になった際に支えとなる仕組みとして位置づけられます。
制度の内容を正しく理解することで、現状をより具体的に捉えることができるでしょう。





