日差しが心地よい5月となりました。
しかし、続く物価高の影響で、将来の生活に不安を感じている方も少なくないでしょう。
特に老後の生活資金について、「年金だけで足りるだろうか」「年金をもらいながら生活保護は受けられるのか」といった疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
単身で老後を迎える方にとっては、誰にも相談できず、一人で不安を抱え込んでしまうケースも見られます。
厚生労働省が公表した2024年2月の調査データからは、単身高齢世帯の厳しい実情と、誰にでも起こりうるリスクが明らかになっています。
この記事では、ご自身の現状と公的制度を正しく理解するために、年金と生活保護の関係性について詳しく解説していきます。
1. 年金と生活保護は同時に受け取れる?基本的な仕組みを解説
「年金を受け取っていると生活保護は受給できない」というのはよくある誤解です。
実際には、生活保護制度には「補足性の原理」という重要なルールがあります。
この原理に基づき、年金収入があっても、それがお住まいの地域の最低生活費に満たない場合は、その差額分を生活保護費として受け取ることが可能です。
例えば、最低生活費が月額13万円の地域で、年金受給額が月額6万円だった場合、不足する「7万円」が生活保護費として支給される仕組みです。
2026年度の国民年金(基礎年金)は、満額でも月額7万608円です。
最低生活費は地域によって異なりますが、基礎年金のみで生活している場合、収入面で生活保護の基準を下回る可能性は十分に考えられます。
ただし、生活保護の受給には収入だけでなく、預貯金や不動産といった資産がないこと、親族からの援助が期待できないことなど、複数の要件を総合的に満たす必要があります。
年金と生活保護を両方受け取ったとしても、支給される合計額は「最低生活費」が上限となるため、決して裕福な暮らしができるわけではありません。
2. 生活保護を受けている人の年金受給額、平均は「月5万円台」
それでは、実際に生活保護を受給している高齢者は、どのくらいの年金を受け取っているのでしょうか。
厚生労働省の「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」で具体的なデータを見てみましょう。
- 全体の年金平均額:151万8000円(年額)
- 生活保護受給者の年金平均額:65万7000円(年額)
この年額65万7000円を月額に換算すると、約5万4000円です。
このことから、生活保護を受けている方の多くは、国民年金の満額にも満たない低水準の年金で生活していることが分かります。
データは、最後のセーフティネットである生活保護に頼らざるを得ない厳しい現実を浮き彫りにしています。
3. 年金と生活保護を併用する人の約7割が単身世帯という実態
さらにデータを掘り下げ、年金を受け取りながら生活保護を受給している人々の家族構成を確認してみましょう。
生活保護を受ける年金受給者(約48万5000人)のうち、配偶者の有無は以下の通りです。
- 配偶者あり:10万2000人
- 配偶者なし:36万2000人
このうち、配偶者がいない「単身世帯」は31万6000人にのぼります。
つまり、生活保護を受給している年金生活者の7割以上が、配偶者のいない単身世帯であることがわかります。
夫婦世帯であれば、2人分の基礎年金を受け取れるうえ、生活費を分担することも可能です。
しかし、単身世帯の場合は一人の収入で全ての生活費を賄わなければならず、経済的に厳しい状況に陥りやすいと考えられます。
4. 公的年金制度に残る「男女間の格差」とは
もう一つ見過ごせないのが、公的年金における「男女間の受給額の差」です。
厚生労働省の「年金制度基礎調査(老齢年金受給者実態調査)令和4年」によると、生活保護受給者に限らず、全体の平均年金額を見ると、男性は年額192万6000円です。
配偶者がいない世帯でも、男性の平均は171万4000円となっています。
一方で、女性の平均年金額は120万7000円と、男性との間に大きな差が見られます。
配偶者のいない女性世帯では145万2000円でした。
生活保護受給者の平均年金額を見ても、女性は年額58万3000円(月額約4万8000円)と、特に低い水準にとどまっています。
この背景には、年金額の決定方法が関係していると考えられます。
国民年金は保険料の納付月数で、厚生年金は現役時代の報酬額や加入期間に応じて決まります。
かつての日本では「女性は結婚後に家庭に入る」という考え方や、パートタイム労働が中心であった社会構造が一般的でした。
こうした雇用環境が、結果として男女間の年金額の差を生み出す一因となったのです。
近年では共働き世帯が増加したことにより、年金の男女差は少しずつ縮小していくと予想されます。
とはいえ、個々人の働き方による差は今後も存在し続けるでしょう。
老後に受け取る年金額は、現在の働き方と密接に関わっていることを意識し、将来を見据えたキャリアプランを考えることが大切です。
5. 老後の生活設計に役立つ4つのステップ
他の人の年金額や生活保護の状況を批判しても、自身の老後資金が増えるわけではありません。
データが示すように、年金額の個人差は、これまでの加入履歴や過去の雇用環境、社会構造などが複雑に影響しています。
私たちが今取り組むべきなのは、自身の状況を正確に把握し、具体的な老後設計を立てることです。
特に50歳代後半から60歳代の方は、以下の4つのステップを試してみてはいかがでしょうか。
- 「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」で受給額を確認する:まずはご自身の現実を直視することから始めましょう。65歳から受け取れる年金額を正確に把握することが第一歩です。
- 退職金や手持ちの資産を洗い出す:勤務先の退職金制度や、現在の預貯金額を計算します。加入したままになっている貯蓄型保険など、資産全体を見直す良い機会です。
- 老後にかかる生活費を試算する:住宅ローンの完済時期、家賃、食費など、最低限必要となる生活費をシミュレーションします。
- 不足額を計算する:「毎月の生活費 - 年金収入 = 不足額」を算出し、老後全体でどれくらいの資金が必要になるかを逆算します。
もし資金が不足する見込みであれば、どのように準備を進めるか冷静に計画を立てることが重要です。
現在は「貯蓄から投資へ」という流れがありますが、60歳代から手持ち資金の全額をハイリスクな投資に充てるのは避けるべきでしょう。
リスク管理の一環として、「就労期間の延長」や年金の「繰下げ受給」といった選択肢も検討してみましょう。
まずは「長く働くことで厚生年金の加入期間を延ばす」ことが、年金額を増やすための基本的な対策となります。
長く働くことができれば、年金の受け取り開始を遅らせる「繰下げ受給」も利用しやすくなります。
繰下げ受給は、1カ月遅らせるごとに受給率が0.7%ずつ増え、70歳まで繰下げると生涯にわたって42%増額された年金を受け取れます。
ただし、年金額が増えると税金や社会保険料の負担も変わるため、総合的な視点で判断することが大切です。
もちろん、生活に影響のない余剰資金の範囲で、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)を活用するのも有効な手段の一つです。
6. まとめ
生活保護や年金といった、私たちの暮らしを支える公的制度について正しく理解することは非常に重要です。
データを見ると、生活保護を受けている方の年金額は決して多くはなく、また年金額には男女差も依然として存在することがわかりました。
老後の生活に対して過度に不安を抱くのではなく、客観的な事実を知ることで、具体的な対策を立てるきっかけになります。
将来の安心を手に入れるために、まずは現状を把握することから始めてみてはいかがでしょうか。
※当記事は再編集記事です。


