2. なぜユニクロは世界で選ばれるのか?強さの秘密
世界中でユニクロが支持される理由を紐解く上で、泉田氏が注目したのが「原価率」です。
2.1 意外と高い「原価率」がコスパの源泉
一般的に、アパレル業界は「安い労働力で作った服にブランド価値を乗せて高く売る」というイメージを持たれがちです。
しかし、ファーストリテイリングの決算説明会資料を見ると、上期の売上総利益率は54.1%となっています。売上から売上総利益を引いたものが原価となるため、ユニクロの原価率は約45.9%ということになります。
泉田氏はこの数値の意味を、消費者目線も交えながら次のように解説します。
「ユニクロは製品作るのに原価が50%近くかかってるってことなんですね。(中略)これアパレル業界だとすごく良心的な価格設定というか、原価率で、本当にブランド品って原価率30%とかそんなのってゴロゴロしてるんで、すごく良心的だなって僕は思ってます」
たとえば5,000円の商品を買った場合、その製造原価には約2,500円がかけられている計算になります。最初から高級ブランドとしてスタートするのではなく、手頃な価格(ローエンド)からスタートし、品質を磨き上げてブランド力を高めてきたユニクロだからこそ、この高い原価率が維持されています。
消費者は「この品質の服が、この価格で買える」という圧倒的なコストパフォーマンス(コスパ)の良さを敏感に感じ取っており、それが世界的な人気の根底にあると言えます。
2.2 東レと組んだ「日本企業タッグ」のバリューチェーン
さらに泉田氏がユニクロの強みとして高く評価しているのが、素材メーカーとの強力なパートナーシップです。
ユニクロは単にデザインして服を作るだけでなく、日本の大手化学企業である「東レ」などとタッグを組み、素材の段階から共同開発を行っています。
近年注目されている、水に濡れても保温性が落ちにくいアウター「パフテック」なども、こうした取り組みから生まれた製品です。
泉田氏は、新しい技術を使ってどのようなアパレル製品が生み出されるのかという「技術的な好奇心」を持ってユニクロの新商品をチェックしていると語ります。
「素材だけだったらまたなかなか魅力伝えらんないけど、素材と最後のアプリケーション、これがコラボしてるから、これはイノベーションだと思うんだよね」
アパレル産業において、素材の開発から商品の企画・設計を行い、最終的な製品として消費者に届けるまでの一連の流れを「バリューチェーン」と呼びます。ユニクロの場合、実際の縫製作業はアジアなどの工場で行われているものの、中核となる素材開発や商品企画は日本企業同士の強力な連携によって成り立っています。
この独自のバリューチェーンこそが、他社には真似できない高品質な製品を安定して生み出し続ける源泉となっているのです。
【動画で解説】ユニクロ、世界で勝てるアパレル企業の世界戦略とは
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日