2. 過去最高益の裏側:歴史的ヒットがもたらした「ボラティリティ」
東宝の2026年2月期の業績は目覚ましいものでした。営業収入は3,606億円(前期比+15.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益は517億円(同+19.4%)に達し、見事に過去最高益を記録しています。
この好業績を牽引したのは、歴史的なメガヒット映画の連発です。国内興行収入を見ると、「鬼滅の刃」無限城編 第一章が驚異の400.4億円を記録。
さらに長編作品として話題を呼んだ「国宝」が206.4億円、「名探偵コナン」最新作が147.4億円、「チェンソーマン レゼ篇」が108.0億円と、100億円を超える特大ヒットが目白押しでした。
しかし株式市場を驚かせたのは、同時に発表された次期(2027年2月期)の業績予想です。営業収入3,450億円(前期比-4.3%)、営業利益620億円(同-8.7%)、当期純利益410億円(同-20.8%)という、大幅な減収減益見通しが示されたのです。
インタビュワーからこの激しい落差の理由について疑問が投げかけられると、泉田氏は決算を作成する企業側の心理を代弁して解説します。
「決算を作る側からすると、こんなにあった翌年ってなると、やっぱり保守的に作らざるを得ない。だってこの2つ(鬼滅の刃と国宝)だけでも合計600億円超だから」
2027年2月期の映画ラインナップには、「ゴジラ -0.0(マイナスゼロポイントゼロ)」「ゴールデンカムイ」「ちいかわ」「名探偵コナン」シリーズなど、強力な作品が控えています。
それでも、前期の「鬼滅の刃」や「国宝」が叩き出した数字があまりにも巨大だったため、その反動減は避けられません。
これこそが、映画事業が抱える「ボラティリティ(変動率)の高さ」という課題です。どれほど優れた制作体制を持っていても、最終的な興行収入は公開してみるまで分からず、業績の振れ幅が極めて大きくなってしまうのです。
【動画で解説】映画のヒットに依存しない東宝、屋台骨は「不動産」にあり
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日