4. 人的資本戦略の大転換。人を増やすモデルからの脱却
AIの進化は、SHIFTのもう一つの重要な経営の柱である「人的資本戦略(人材の活用方針)」にも大きな転換を迫っています。
これまでSHIFTは、M&Aを含めて積極的に人員を拡大することで売上を伸ばしてきました。「人が増えれば増えるほどテストや開発の仕事がこなせる」という、いわば人を成長のドライバーとするビジネスモデルでした。
しかし、直近の決算資料の「販売管理費(販管費)」の内訳を見ると、興味深い変化が起きています。
2026年8月期の上期において、人件費は前年の73億円から86億円へと18%増加しています。さらに注目すべきは「採用費」で、前年の14億円から今年は32億円へと倍以上に膨れ上がっているのです。
これだけ見ると「さらに人を増やそうとしている」ように思えますが、実は会社は同時に「年収600万円以下の採用ストップ」を宣言しており、対象となる人員をマイナス345人とする計画を立てています。
人を減らそうとしているのに、なぜ採用費が倍増しているのでしょうか。インタビュワーからのこの疑問に対し、泉田氏は次のように分析します。
「仮に人を減らして増えてるんだとすると、単価の高い人を取ってるっていうこと」
つまり、とにかく人数を集める戦略から、高い採用コスト(人材紹介会社への手数料など)を払ってでも、AIを使いこなせる高度なスキルを持った「ハイエンド人材」を厳選して獲得する戦略へと舵を切っているのです。
泉田氏は、AIの台頭によって企業の成長モデルが根本から変わってしまったと指摘します。
「今まで人を集めるのがすごく成長のドライバーだったのが、AIが入ってくることによって本当に真逆になっちゃった」
AIがコードを書き、テストを自動で行うNative AIの時代になれば、大量の人員は必要なくなります。むしろ、AIを適切に設計・管理できる少数の優秀な人材がいれば、巨大な成果を生み出せるようになります。
「いかに少ない人で大きな結果を出すのかみたいな発想が是とされるような環境になっちゃったので、この辺、今ちょうど中間地点にいるのかなという気がしますよね」
この大転換に伴い、SHIFT社内でも既存の社員をAI時代に適応させるための「リスキリング(スキルの再習得・再教育)」が始動しています。
2027年8月期に向けて、コンサルタントやエンジニアのスキル検定を作成し、テスト業務中心の人材をAI活用人材へと生まれ変わらせる取り組みが進められています。
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日