5月に入り、目に鮮やかな新緑が初夏の訪れを感じさせる季節となりました。大型連休が明け、落ち着いた日常が戻る中で、ご自身の老後資金について改めて見つめ直そうと考えている方も多いのではないでしょうか。
年金を受給している70歳代でも、貯蓄が十分にある世帯と、ほとんどない世帯では差が大きく、老後の生活水準にも開きが生まれています。
さらに、医療費や介護費といった将来の支出も考慮すると、家計の余裕度は一律ではなく、人によって異なるのが実情です。
今回は、70歳代の貯蓄状況と貯蓄ゼロの割合から、シニア世代のリアルな貯蓄事情を紹介します。
1. 【70歳代の貯蓄事情】貯蓄ゼロの割合は?
70歳代では、実際には貯蓄がある世帯とない世帯の差が開いています。
ここでは、J-FLEC(金融経済教育推進機構)「2025年家計の金融行動に関する世論調査」のデータをもとに、全体像を確認していきましょう。
※なお、これから確認する金融資産保有額には、預貯金以外に株式や投資信託、生命保険なども含まれます。また、日常的な出し入れ・引落しに備えている普通預金残高は含まれません。
1.1 【70歳代・単身世帯】貯蓄ゼロは約2割
金融資産を保有していない単身世帯は、20.4%です。
およそ5人に1人が「貯蓄ゼロ」の状況にあります。
- 金融資産ゼロ:20.4%
- 100万円未満:7.1%
- 100万~200万円未満:8.1%
- 200万~300万円未満:4.2%
- 300万~400万円未満:3.7%
- 400万~500万円未満:3.5%
- 500万~700万円未満:6.9%
- 700万~1000万円未満:6.4%
- 1000万~1500万円未満:7.3%
- 1500万~2000万円未満:5.8%
- 2000万~3000万円未満:7.9%
- 3000万円以上:17.5%
70歳代の単身世帯の貯蓄額は、以下のとおりです。
- 平均:1489万円
- 中央値:500万円
平均と中央値に開きがある点が特徴で、一部の高額資産層が平均値を押し上げていることがわかります。
「500万円前後またはそれ以下」の層も多く、決して余裕があるとは言い切れない状況です。
1.2 【70歳代・2人以上世帯】貯蓄ゼロは約1割
金融資産を保有していない2人以上世帯は、10.9%です。
単身世帯と比べると割合は低いものの、約10世帯に1世帯は貯蓄がない状態です。
- 金融資産ゼロ:10.9%
- 100万円未満:4.5%
- 100万~200万円未満:5.1%
- 200万~300万円未満:3.7%
- 300万~400万円未満:3.9%
- 400万~500万円未満:2.9%
- 500万~700万円未満:6.4%
- 700万~1000万円未満:6.7%
- 1000万~1500万円未満:11.1%
- 1500万~2000万円未満:6.7%
- 2000万~3000万円未満:12.3%
- 3000万円以上:25.2%
70歳代・2人以上世帯の貯蓄額は以下のとおりです。
- 平均:2416万円
- 中央値:1178万円
平均と中央値に差があり、世帯間の格差が大きいことが読み取れます。
1.3 貯蓄額の「平均」だけでは実態が見えない理由
貯蓄額を見る際は、平均だけでなく中央値もあわせて確認しておくと実態が見えやすくなります。
平均は一部の高額資産を持つ世帯の影響を受けやすく、実態よりも高く見える傾向です。
一方、中央値は「ちょうど真ん中の世帯」の水準を示すため、より現実に近い家計状況を把握できます。
そのため、70歳代では 、平均は高いものの実際にはそこまで貯蓄が多くない世帯も多い構造になっています。
2. 「お金が貯まる人」「貯まらない人」の習慣の差
同じような収入でも、老後の貯蓄額には差が生まれていて、背景には日々のお金の使い方や管理方法の違いがあります。
ここでは、「お金が貯まる人」と「貯まらない人」の習慣の違いを見ていきましょう。
2.1 お金が貯まる人の習慣
お金が貯まる人に共通しているのは、特別な収入や才能ではありません。
日々のお金の使い方を「仕組み」として整えています。
なんとなく余った分を貯金するのではなく、あらかじめ「残すお金」を決め、そのうえで生活を組み立てているのが特徴です。
具体的には、次のような習慣が挙げられます。
- 収入に関係なく「先取り貯蓄」をしている
- 固定費(保険・通信費など)を定期的に見直している
- 生活レベルをむやみに上げない
- 長期視点で資産運用をしている(預金だけに依存しない)
- 「使うお金」と「残すお金」を明確に分けている
元銀行員として多くの家計を見てきましたが、「収入が高い=貯まる」わけではありません。
お金の扱い方の習慣が、将来の資産を左右します。
2.2 お金が貯まらない人の習慣
お金が貯まらない人には、「なんとなくお金を使い、結果的に残らない状態が続いている」といった共通点があります。
意識的に無駄遣いをしていなくても、家計の管理が曖昧なため、結果としてお金が残らないケースが多く見られます。
具体的には、次のような習慣です。
- 残った分を貯金しようとする(結果的に残らない)
- 支出を把握していない(家計の見える化ができていない)
- セールやポイントに流されやすい
- 老後資金を「なんとかなる」と後回しにする
- 預金だけで安心し、インフレ対策をしていない
収入の多さだけで貯蓄の有無が決まるわけではありません。
お金の流れを把握できていないことが、貯蓄に差が生まれる一因になっているケースもあります。
「余った分を貯める」という考え方のままでは、貯蓄は増えにくい傾向です。
3. まとめにかえて
70歳代の貯蓄状況を見ると、世帯ごとの差が大きいとわかります。年金収入があっても、家計の余裕度にはばらつきがあるのが実情です。
収入の多さだけでなく、日々のお金との向き合い方や家計管理の積み重ねが影響していると考えられます。老後の家計については、今あるお金をどのように守り、どのように使っていくかを見直す視点も欠かせません。
まずは家計の流れを把握し、無理のない範囲で整えていくことが将来の安心につながります。
参考資料
- 総務省「家計調査報告[家計収支編]2025年(令和7年)平均結果の概要」
- 金融経済教育推進機構「2025年家計の金融行動に関する世論調査」
- 厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」
- 厚生労働省年金局「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
円城 美由紀