3.2 壁その②:1カ月の自己負担に「高額療養費制度の上限の壁」

入院や手術で医療費が数十万円になっても、実際の自己負担は一定額までで済みます。

これは「高額療養費制度」という仕組みで、所得区分ごとに1カ月あたりの自己負担の上限額が決められているためです。

つまり「これ以上は支払わなくてよい」という壁が、家計を守ってくれているのです。

たとえば、70歳以上で一般的な所得水準の人(住民税課税世帯・年収約370万円までの「一般」区分)の上限は、次のとおりです。

  • 通院のみの場合(個人ごと):月1万8000円まで/年間合計でも14万4000円まで
  • 入院も含む場合(世帯単位):月5万7600円まで
  • 直近12カ月間で3回以上高額療養費の対象となった場合:4回目以降は月4万4400円まで(「多数回該当」と呼ばれます)

たとえば入院で医療費が1カ月に50万円かかり、窓口で1割負担の5万円を支払った場合は上限5万7600円を下回っているためそのままですが、仮に窓口で10万円を支払った場合は、上限額を超えた約4万2400円が後日払い戻される仕組みです。

3.3 壁その③:2026年8月に迫る「制度改正の壁」

最後に注意したいのが、これから変わる制度の壁です。

高額療養費制度については、2025年8月に自己負担限度額の引き上げと所得区分の細分化を実施する予定でしたが、患者団体などから「治療継続が難しくなる」という強い反対を受け、一度凍結されました。

ただし完全な中止ではなく、2026年8月以降に段階的に施行される見通しとなっています。

今後は所得が高い世帯ほど上限額が引き上げられる可能性が高く、施行時期や新しい上限額が確定しだい、自身の該当区分を早めに確認しておくことが大切です。

これら3つの壁を理解しておけば、「医療費でいくらかかるかわからない」という漠然とした不安を、具体的な見通しに変えることができます。

4.  平均値ではなく「自分の家計」で設計しよう

75歳以上の後期高齢シニア夫婦の家計は、月およそ2万7000円の赤字が平均です。

平均貯蓄は2560万円とされるものの世帯間の格差は大きく、医療・介護の発生状況によって支出は大きく変動します。

大切なのは平均値との比較ではなく、自身の年金収入・貯蓄・健康状態を前提に、今後の家計を具体的に見積もっておくことです。

後期高齢者医療制度や高額療養費制度を正しく理解しておけば、医療費への不安も現実的に捉えられます。

ご自身の負担割合や上限額を確認したうえで、これからの人生設計に備えていきましょう。

参考資料

苛原 寛