9. まとめにかえて|後期高齢期の家計をどう整理するか
75歳以降の家計を考える際、平均値だけに依存した判断には注意が必要です。
後期高齢シニア夫婦の資産構成を見ると、全体の約3分の2を預貯金が占めています。こうした構成は価格変動に強い反面、インフレが進行すれば見かけの残高は変わらなくても、実際に使える購買力(実質的価値)は徐々に目減りしていく点に留意しなければなりません。
さらに、今後の老後資金を考えるうえで警戒すべきなのが、「想定以上の支出増」です。 株式会社Speeeが2026年5月29日に公表した調査結果によると、近年の物価高などを背景に「介護施設の月額費用が入居時より高くなった」と回答した人が4人に1人以上にのぼります。
また、2026年4月末には財務省の審議会において、高齢者の医療費窓口負担を「原則3割」とするための提言も行われました。
「人生100年時代」といわれる現代において重要なのは、資産の多寡そのものではなく、それがどの程度の期間にわたり生活を支えられるかという「資産寿命」の視点です。
インフレや将来の負担増といった不確実なリスクもあらかじめ織り込み、現役期から計画的な資産形成や制度の理解を深めておくことが、老後の不安を軽減するための確かな基盤となるでしょう。
参考資料
- 総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2024年(令和6年)平均結果の概要」
- 総務省「家計調査 家計収支編 2024年〔二人以上の世帯〕」(第3-2表)
- 厚生労働省「高齢期と年金をめぐる状況」
- 総務省統計局「家計調査 用語の解説」
- 生命保険文化センター「2025(令和7)年度 生活保障に関する調査」
- 厚生労働省年金局「令和6年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」
- 総務省統計局「家計調査 貯蓄・負債編 2024年 〔二人以上の世帯〕」(第8-10表)
- 生命保険文化センター「リスクに備えるための生活設計」
- 政府広報オンライン「後期高齢者医療制度 医療費の窓口負担割合はどれくらい?」
- 厚生労働省「後期高齢者の窓口負担割合の変更等(令和3年法律改正について)」
- 株式会社Speee「介護施設の月額費用、4人に1人以上で「入居時より高くなった」〜電話取材で深掘りされた、物価高騰下の介護施設費用と家族の意思決定〜
- 財務省「持続可能な社会保障制度の構築(財政各論Ⅱ)」(2026年4月28日)
マネー編集部社会保障班
