2026年時点で、「団塊の世代」はすべて75歳以上となり、日本は後期高齢者が増加する新たな局面に入りました。この人口構造の変化は、社会の仕組みや暮らしの前提そのものを揺るがす要因となりつつあります。
高齢化の進展は、統計上の数値だけで語られるものではなく、病院の待合室や電車・バスの車内、地域コミュニティの場など、日常の至るところで体感されるようになっています。
さらに、厚生労働省の将来推計によると、約25年後には女性の平均寿命が90歳を超える見通しとされており、長寿化は一層進むと見込まれています。
このような社会では、老後の生活期間が長期化することが前提となり、「年金だけで生活は成り立つのか」「保有資産はどの程度まで持続するのか」といった問題が現実的な課題として浮上します。
本記事では、総務省および厚生労働省のデータをもとに、75歳以上の後期高齢シニア夫婦の家計の実態を整理し、「生活費」「年金」「資産の持続性」の観点から検証します。加えて、後期高齢者医療制度や医療費の自己負担にも触れながら、老後家計の全体像を立体的に捉えていきます。
1. 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】ふたり暮らしの生活費はどのくらいかかる?
総務省「家計調査 家計収支編(2025年)」を基に、75歳以上の後期高齢シニア夫婦(無職世帯)の平均的な家計を確認します。平均世帯主年齢は80.8歳で、持ち家率は96.0%と高水準です。
1.1 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】無職世帯:毎月の収入と支出
実収入: 25万2798円
- うち社会保障給付(主に公的年金給付): 21万1289円
実支出:28万23円
- 消費支出: 24万8460円
- 食料: 8万33円
- 住居: 1万6257円
- 光熱・水道: 2万4312円
- 家具・家事用品:1万547円
- 被服及び履物: 5142円
- 保健医療: 1万7,213円
- 交通・通信: 2万6,294円
- 教育:142円
- 教養娯楽: 2万2322円
- その他の消費支出: 4万6198円
- 非消費支出: 3万1563円
- うち直接税: 1万1663円
- うち勤労所得税:519円
- うち個人住民税:3206円
- うち他の税:7938円
- うち社会保険料:1万9894円
- うち公的年金保険料:1966円
- うち健康保険料: 1万494円
- うち介護保険料: 7352円
- うち他の社会保険料:83円
- うち直接税: 1万1663円
毎月の家計収支
- 実収入:25万2,798円
- 実支出:28万23円
- 家計収支:▲2万7225円(赤字)
- 黒字率:▲12.3%
- 平均消費性向(※1)112.3%
- エンゲル係数(※2):32.2%
家計調査の結果を見ると、75歳以上の後期高齢シニア夫婦の家計は、平均すると毎月およそ2万7000円の赤字となっています。
つまり、年金収入のみでは生活費を完全に賄えず、貯蓄を取り崩すことでバランスを保っている状況です。
この赤字が長期にわたって続けば資産の減少を加速させるため、どのように補填するかが重要な課題となります。
また、平均消費性向やエンゲル係数は、家計の余裕度や支出構造を把握するうえで有効な指標となります。
- ※1 平均消費性向(可処分所得に対する消費支出の割合)
- ※2 エンゲル係数(消費支出に占める食料費の割合)
1.2 【75歳以上 後期高齢シニア夫婦】支出の特徴
後期高齢期の家計は、現役世代とは異なる特徴を持ち、とくに「住居費の低さ」と「将来支出の不透明さ」が挙げられます。
支出の特徴1:住居費が比較的低い
住居費については、持ち家率96.0%という高さからも分かる通り、住宅ローン返済中の世帯は1.3%と少なく、多くの世帯で住居関連の固定費は抑えられています。
これにより、年金中心の収入でも生活が維持できている側面がありますが、逆に支出増加時の調整余地が限られている点には注意が必要です。
支出の特徴2:介護費用が含まれていない
また、家計調査に含まれる支出は日常的な生活費が中心であり、介護費用や突発的な医療費は十分に反映されていません。
そのため、実際には介護が始まると支出は増加し、赤字幅が拡大する可能性があります。
1.3 ゆとり生活との差額に注意
生命保険文化センターの調査によると、夫婦2人世帯の老後生活費は最低限で月23万9000円、ゆとりある生活では39万1000円とされています。
- 最低日常生活費:月平均23万9000円
- ゆとりある老後生活費:月平均39万1000円
これに対し、後期高齢シニア夫婦の平均収入は約25万円であり、最低限の生活水準は満たすものの、ゆとりある生活とは約13万円の差があります。
この差をどう評価するかによって、老後の生活満足度は大きく変わります。最終的には、年金収入と保有資産のバランスを踏まえた判断が重要となります。
