3. 物価高時代の勝者へ。客数主導で成長する「サイゼリヤ型」モデル
では、しまむらはどのようにして本業でそれほどの現金を稼ぎ出しているのでしょうか。泉田氏は、小売業の成長ポテンシャルを測る上で最も重要な「既存店売上高(オープンから一定期間が経過した店舗の売上)」のデータに注目します。
しまむら事業の既存店KPI(重要業績評価指標)を見ると、売上高は前年比104.4%と好調に推移しています。
その内訳を分解すると、成長の本当の理由が見えてきます。客数は104.1%、客単価は100.3%、1点単価はほぼ横ばい(+1.2%)、買上点数は99.1%となっています。
小売業の売上は「客数×客単価」で決まり、さらに客単価は「1点あたりの単価×買上点数」で計算されます。
インタビュワーが「1点あたりの単価が少し上がっているのに、客単価がほとんど変わらないのはなぜか」と問うと、泉田氏は消費者のリアルな行動を次のように読み解きます。
「買う側のお財布がものすごくシビアなんだろうなっていう。金額は決まってるから」
世の中が物価高で様々な商品の値段が上がる中、しまむらは1点あたりの単価をほぼ横ばい(+1.2%)に抑えています。それでも消費者は、単価がわずかに上がった分だけ「買う点数を減らす(買上点数99.1%)」ことで、自分が支払う総額(客単価100.3%)を一定に保とうとしているのです。
このシビアな消費環境において、多くの小売店は利益を確保するために商品の値上げ(客単価アップ)に踏み切り、結果として客離れを招くことがあります。しかし、しまむらの戦略は全く異なります。
「大体の小売店は、客単を上げてお客さんも減るというパターンと、値段据え置きでお客さんがいっぱい来るパターンがある。後者はサイゼリヤのモデルで見てきたけども、どっちかというとサイゼリヤモデルだよね」
泉田氏は、しまむらのビジネスモデルを、以前の動画で解説した外食チェーン「サイゼリヤ」に例えます。
値上げに頼るのではなく、価格を据え置くことで「客数を増やす」ことによって売上を伸ばす構造です。実際、しまむらの既存店売上の成長(104.4%)は、ほぼすべて「客数増(104.1%)」によってもたらされています。
今後の成長性について、泉田氏は次のように結論づけます。
「どこにしまむらのポテンシャルあるんですかって聞かれたら、インフレが続いていく中で、値段をほぼ据え置きで日用品というかアパレルを満たしたいっていう人がここのポテンシャルだよね」
物価高による生活防衛意識が高まる中、価格を維持しながら品質を提供するしまむらは、まさにアパレル版の「国民の食堂」とも言える独自のポジションを確立しています。
この景気に左右されにくい、むしろインフレ下で強みを発揮する事業構造こそが、しまむらが安定して稼ぎ続けられる最大の理由なのです。
【動画で解説】一目瞭然!しまむらの驚異的なバランスシート構造
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日