2. 自己資本比率88.1%!知られざる「実質無借金・キャッシュリッチ」体質
インタビュワーから「しまむらの店舗はシンプルな装飾で、少し地味な印象がある」という素朴な疑問が投げかけられると、泉田氏は消費者から見える姿とは全く異なる、しまむらの驚くべき「財務体質」の裏側を解説し始めます。
企業の財政状態を表す「貸借対照表(バランスシート)」を見ると、しまむらの総資産は5546億円あります。そのうち、返済の必要がない自分たちのお金である「純資産」は約4800億円にのぼります。
これを割合で示した「自己資本比率」は、なんと88.1%に達しています。
一般的に、企業の自己資本比率は30〜50%あれば安全とされる中で、9割近い数字は極めて異例の高さです。
さらに驚くべきは、その資産の内訳です。現金同等物が900億円、有価証券が1531億円、投資有価証券が500億円と、合計で約3000億円もの「キャッシュ(現金および換金性の高い資産)」を保有しているのです。
一方で、右側の負債の部を見渡しても、銀行からの借り入れなどの有利子負債が見当たりません。
全国に多数の店舗を展開する小売業は、通常であれば土地代や内装工事費などの設備投資のために多額の借金をするのが一般的です。
インタビュワーから「借金ゼロで、手出しの現金だけで店舗を作っているのか」と驚きの声が上がると、泉田氏もそれに同意します。
一体なぜ、これほどまでにお金が貯まるのでしょうか。その秘密は「キャッシュフロー計算書」に隠されています。
企業が1年間にどれだけの現金を稼ぎ、使ったかを示すこの表を見ると、しまむらは本業の営業活動で年間約480億円(前期は約528億円)もの現金を稼ぎ出しています。
つまり、本業で圧倒的な現金を稼ぎ出し、その範囲内で手堅く店舗投資を行い、余ったお金を金融資産として蓄積していく。
この堅実極まりないサイクルを長年繰り返してきた結果が、現在の「無借金・キャッシュリッチ」という盤石な財務体質を作り上げているのです。
【動画で解説】一目瞭然!しまむらの驚異的なバランスシート構造
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日