5. ラピダス出資から考える「最終製品」の重要性
動画の後半では、富士通を取り巻くもう一つの重要なトピックとして、次世代半導体の国産化を目指す「ラピダス」への出資について議論が交わされました。
ラピダスは、台湾のTSMCなどに依存している最先端半導体の製造を、日本国内で行うことを目指す「国策」とも言えるプロジェクトです。
富士通が半導体を設計し、ラピダスが製造するというサプライチェーンの構築が期待されています。
しかし、泉田氏はこのニュースに対して、機関投資家ならではの冷静な視点を提供します。
「やっぱり国内の最終製品で強いものをちゃんと選んで実装していかないと、国内で弱くて世界に持ってっても全然見向きもされない」
泉田氏が強調するのは、「チップを作るだけでは意味がない」ということです。どんなに高性能なAIチップを作っても、それを搭載して世界中で売れる「最終製品」や「サービス」がなければ、ビジネスとしては成り立ちません。
泉田氏は過去の失敗例として、日本の電機メーカー(ソニー、東芝など)とIBMが共同開発した「Cell(セル)」というチップを挙げました。
Cellはゲーム機(プレイステーション)に搭載されましたが、パソコン向けの汎用チップとして圧倒的なシェアと単価を誇ったIntel(インテル)のCPUには勝てませんでした。
ゲーム機はパソコンに比べて本体価格を高く設定しづらく、チップにかけられるコスト(利益率)に限界があったためです。
この教訓から、泉田氏は富士通がラピダスのチップを使って「どのような最終製品を生み出すのか」が重要だと指摘します。
富士通や日立製作所、NECといった国内SIerは、公共機関や自治体、防衛関連といった、海外メーカーが入り込みにくい領域で強みを持っています。
そうした国内の確固たる需要に対して、安全性の高い国産チップをどのように組み込んでいくのかが、今後の評価の分かれ目になりそうです。
【動画で解説】富士通の営業利益が「ほぼ倍」になった理由とは?
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日