日本には、妊娠・出産から子どもの高校卒業まで、子育て家庭を経済的に支えるための公的制度が数多く存在します。
近年は少子化対策として拡充が続き、児童手当の高校生年代への延長や育児休業給付の引き上げなど、受け取れる給付は大きく変わっています。この記事では、子育て世帯とひとり親家庭が活用できる主要な支援制度を、最新情報とともにわかりやすく解説します。
1. 子育て世帯向けの支援制度
少子化対策は国全体における喫緊の課題です。公的医療保険や雇用保険、税財源をもとに、妊娠・出産から子どもの高校卒業まで切れ目なく経済的支援を提供する複数の制度が設けられています。
1.1 出産育児一時金
公的医療保険の加入者が出産したとき、子ども1人につき原則50万円が加入している保険者から支給される制度です。出産費用の一部または全額を助成することで、経済的な不安を抑えながら出産に臨める環境を整えることが目的です。
受給対象は妊娠4カ月(85日)以上の出産で、直接支払制度を利用する場合、保険者から出産施設に直接支払われます。そのため、医療機関の窓口で高額な出産費用を支払う必要がありません。
支払い方法は直接支払制度・受取代理制度・償還払いの3種類があります。利用できる方式は医療機関によって異なるため、事前に分娩予定の施設に確認が必要です。
1.2 出産手当金
出産手当金とは、女性労働者が出産のために会社を休み、その間に給料の支払いを受けなかった場合に健康保険から支給されるものです。産休中の収入減少を補い、安心して出産・休養できるようにするための制度です。
出産の日以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として支給されます。支給額は1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額です。
1.3 育児休業等給付
育児休業等給付として、子の年齢や養育の状況に応じて、要件を満たす場合に出生時育児休業給付金、育児休業給付金、出生後休業支援給付金、育児時短就業給付金が支給されます。これらは雇用保険を財源とする給付であり、育児休業の取得促進と労働者の職業生活の継続支援を目的としています。
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が原則1歳未満の子を養育するために育児休業を取得し、一定の要件を満たした場合に支給されます。
支給額は賃金額面の67%(※育児休業開始から180日目まで。181日目以降の給付率は50%)(手取りで8割相当)で、2025年4月からは新たに出生後休業支援給付金が創設され、育児休業給付金と合わせて受給すると最大28日間は賃金額面の80%(手取りで10割相当)の給付金を受給できるようになりました。
また、育児時短就業給付金も2025年4月から施行されています。なお、育児休業給付金については、保育所に入所できないなど一定の条件を満たせば、最長2歳まで受給期間を延長することが可能です。
1.4 児童手当
児童手当は、0歳から18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある子を養育している方に支給されます。2024年10月から大幅に拡充され、所得にかかわらず全額支給となり、高校生年代も支給対象となりました。また、多子世帯にさらに手厚い支援を実施し、2カ月分ずつ偶数月年6回に変更されました。
支給額は3歳未満が月額1万5000円、3歳以上高校生年代までが月額1万円、第3子以降は3万円となっています。受給には市区町村への申請が必要で(公務員の場合は勤務先に申請する必要があります)、原則として申請した翌月分から支給が開始されます。
1.5 高等学校等就学支援金(および高校生等臨時支援金)
「高等学校等就学支援金」は、国公私立の高等学校等に通う生徒の授業料を支援する制度です。令和8(2026)年度からは所得制限が撤廃され、多くの世帯で授業料支援を受けられるようになりました。
なお、前年の令和7年度は、保護者の所得に応じて高等学校等就学支援金または高校生等臨時支援金のいずれかが支給されることにより、高校の授業料が実質無償化されていました。
支援を受けるには申請が必要で、手続きは学校や都道府県を通じて案内されます。支援額は学校種別などで異なるため、最新の案内を確認することが重要です。
2. ひとり親世帯向けの支援制度
経済的に困難な状況に置かれやすいひとり親家庭に対し、生活の安定と自立を支援するため、手当の支給や医療費の助成、職業訓練支援など多岐にわたる制度が整備されています。
2.1 児童扶養手当
児童扶養手当とは、父母の離婚などで、父または母と生計を同じくしていない児童が育成される家庭(ひとり親等)の生活の安定と自立の促進に寄与し、児童の福祉の増進を図ることを目的として支給される手当です。
支給月は1月・3月・5月・7月・9月・11月の年6回で、それぞれの支払月の前月までの2カ月分が支払われます。2026年度の支給額は、子ども1人目で全部支給の場合は月額4万8050円で、2人目以降は加算があります。
2.2 ひとり親家庭等医療費助成制度
ひとり親家庭等に対し医療費の一部を助成することにより、ひとり親家庭等の保健の向上に寄与し、福祉の増進を図ることを目的とした制度です。国全体の統一制度ではなく、各都道府県・市区町村が条例等に基づいて実施しているため、助成内容や自己負担額は自治体によって異なります。
対象者は以下のとおりです。
- 児童を監護しているひとり親家庭等の母または父
- 両親がいない児童などを養育している養育者
- ひとり親家庭等の児童で18歳に達した日の属する年度の末日(障害がある場合は20歳未満)までの方
認定を受けるには申請が必要で、「ひとり親家庭等医療証」の交付を受けた後、医療機関の窓口でマイナ保険証等と医療証を提示することで、保険診療の自己負担が軽減されます。助成の対象は保険診療が適用された医療費・薬剤費等であり、差額ベッド代や予防接種など保険適用外の費用は対象外です。
2.3 高等職業訓練促進給付金
高等職業訓練促進給付金は、ひとり親の方が就職の際に有利となる資格の取得を目指して養成機関で修業する期間の生活費を支援する制度です。看護師・介護福祉士・保育士をはじめ、理学療法士、歯科衛生士、社会福祉士など幅広い国家資格が対象となっており、資格取得に専念できる環境づくりを目的としています。
受給要件は、児童扶養手当の支給を受けているか同等の所得水準にある方で「養成機関において6カ月以上のカリキュラムを修業し、対象資格の取得等が見込まれ、仕事または育児と修業の両立が困難であると認められる方」です。
支給額は訓練期間中に月額10万円(住民税課税世帯は月額7万500円)で、訓練を受けている期間の最後の1年間は支給額を4万円増額します。また、訓練修了後に5万円(住民税課税世帯は2万5000円)が支給されます。
支給期間は最長4年間で、修業開始前に都道府県または市区町村での事前相談と申請が必要です。また、資格を活かして5年間就労を継続することで、入学準備金・就職準備金の貸付の償還が免除される制度も利用できます。
3. おわりに
出産育児一時金・育児休業給付金・児童手当など、子育て世帯が使える支援制度は近年大きく拡充されています。ひとり親家庭向けにも、児童扶養手当や医療費助成、資格取得支援など手厚い制度が整っているため、「自分はどのような制度を活用できるのか」を確認しましょう。
ただし、多くの制度は申請しなければ受け取れません。まずはお住まいの市区町村の窓口や公式サイトで自分が対象かどうかを確認し、受け取れる給付を漏れなく活用しましょう。
参考資料
- 厚生労働省「出産育児一時金等について」
- 協会けんぽ「出産育児一時金・出産手当金」
- 厚生労働省「育児休業等給付について」
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
- 文部科学省「高等学校等就学支援金・高校生等臨時支援金リーフレット」
- こども家庭庁「児童扶養手当について」
- 東京都福祉局「ひとり親家庭等医療費助成制度(マル親)」
- こども家庭庁「高等職業訓練促進給付金のご案内」
柴田 充輝