インターネット広告から始まり、ブログ、ゲーム、そして動画配信サービスへと事業領域を拡大し続けてきたサイバーエージェント。

直近の決算では大幅な増益を発表し、株式市場でも大きな注目を集めました。

そんなサイバーエージェントの最新決算を読み解き、同社が抱える3つの主要事業の構造変化について詳しく解説したのが、YouTubeチャンネル「イズミダイズム」に出演する元機関投資家の泉田良輔氏です。

本記事では、動画内で語られた泉田氏のプロならではの視点を交えながら、サイバーエージェントの「今」と「これから」を初心者にもわかりやすく紐解いていきます。

ココがポイント
  • ゲーム事業が爆発的な利益を生む一方、業績の変動率(ボラティリティ)を高める要因にもなっている
  • 20年越しの悲願であるメディア事業(ABEMA)の黒字化が、全社業績の安定化に大きく寄与する
  • 祖業であり売上最大のインターネット広告事業は、AIの進化によってビジネスモデルの転換を迫られている
  • 経営陣は、広告の安定成長、メディアの柱化、ゲームの拡大という3本柱の確立を目指している

1. 【サイバーエージェント】3本柱で成り立つ事業構造と足元の好決算

動画の冒頭で泉田氏は、サイバーエージェントが2026年2月に発表した最新の決算(2026年9月期 第1四半期)の数字に注目しました。

売上高は2323億円で、前年同期比14.0%の増加となっています。

さらに驚くべきは利益の伸びで、営業利益は233億円と前年同期比で181.8%増(約2.8倍)、最終的な儲けを示す純利益も124億円で、同145.7%増という好成績を叩き出しています。

サイバーエージェントの営業利益に驚く泉田氏1/5

サイバーエージェントの営業利益に驚く泉田氏

出所:イズミダイズム

「売上が14%の伸びなのに、利益が約3倍になることなんてあり得るのでしょうか?」という疑問が投げかけられると、泉田氏は「利益率の高い事業が大きく伸びたり、これまで赤字だった事業が黒字に転換したりすることで、売上の伸びをはるかに上回る利益の急拡大が起こり得る」と解説します。

その謎を解き明かすために、サイバーエージェントの事業構造を見ていきましょう。同社は現在、大きく分けて以下の3つの事業を展開しています。

  1. メディア&IP事業(ABEMAやAmebaブログなど)
  2. インターネット広告事業(祖業である広告代理店ビジネス)
  3. ゲーム事業(「ウマ娘 プリティーダービー」などのスマートフォン向けゲーム)

この3つの事業が、それぞれ全く異なる顔を持ちながらサイバーエージェントという会社を形作っているのです。

2. 収益を牽引するゲーム事業、「ボラティリティ」のジレンマ

現在のサイバーエージェントにおいて、最も利益を稼ぎ出しているのは「ゲーム事業」です。

第1四半期の決算を見ると、ゲーム事業の売上高は647億円(前年同期比69.2%増)、営業利益はなんと176億円(同427.2%増、約5.3倍)という驚異的な数字を記録しています。

「ウマ娘 プリティーダービー」をはじめとするヒットタイトルが絶好調であることが、全社の大幅増益を牽引している最大の要因です。

セグメント別の営業利益を比較する泉田氏2/5

セグメント別の営業利益を比較する泉田氏

出所:イズミダイズム

「ウマ娘」は巷でも人気が高く、ゲームをきっかけに実際の競馬場へ足を運ぶファンが増えるという「逆輸入」の現象が起きていると紹介されると、泉田氏もその社会的影響力の大きさに感心していました。

しかし、機関投資家として長年市場を見てきた泉田氏は、ゲーム事業が主力の収益源となっている現状に対して、株式市場特有のシビアな見方を提示します。

ゲームというビジネスは「ヒットすれば莫大な利益を生む一方で、外れれば一気に業績が落ち込む」という性質を持っています。

「ゲーム事業は博打のような要素もあるから、ボラティリティが高いっていうのは大前提になる。ボラティリティが高いのは、短期のトレードをする上ではすごくいいんだけど、長期で投資をする人からするとあまり好きじゃないんだよね」

ボラティリティとは、価格や業績の変動率のことです。

長期的に資産を増やしたい投資家は、毎年コツコツと利益を積み上げる安定した企業を好みます。

そのため、いつ業績が急降下するかわからないゲーム事業中心の企業には、高い評価(バリュエーション)がつきにくいというジレンマがあるのです。

【元機関投資家が動画で解説】サイバーエージェント、20年越しの悲願であるメディア事業(ABEMA)の黒字化

3. 20年越しの悲願。ABEMA黒字化がもたらす意味

ゲーム事業が利益の大半を稼ぐ一方で、サイバーエージェントの経営陣が長年こだわり続けてきたのが「メディア事業」です。

泉田氏は2002年頃から同社を担当していた経験を振り返り、当時の状況を語りました。

サイバーエージェントの祖業はインターネット広告の代理店事業であり、現在でも売上高(1146億円)としては社内最大規模を誇ります。

しかし広告代理業は利益率が低いため、藤田晋前社長は20年以上前から「利益率の高いメディア事業を育てたい」と公言し、Amebaブログなどの立ち上げに注力してきました。

「メディアにどう取り組むかっていうのがこの会社の長期的な経営のテーマ。そこに急にゲームが出てきたんだよね」

泉田氏は、経営陣の想定を超えてゲーム事業が巨大化してしまったものの、会社としての本丸はあくまでメディア事業の育成にあると分析します。

決算説明会資料でも、利益が最大のゲーム事業や売上が最大の広告事業ではなく、メディア&IP事業が常に一番上に記載されている点に、経営陣の強い「こだわり」と投資家へのメッセージが込められていると指摘しました。

そして今回の決算で最も注目すべきトピックが、動画配信サービス「ABEMA」の四半期黒字化です。

2018年の開局以来、長年にわたって数十億円規模の赤字を出しながらも投資を続けてきたABEMAが、ついに利益を生み出すフェーズに入ったのです。

ABEMAの業績推移を解説する泉田氏3/5

ABEMAの業績推移を解説する泉田氏

出所:イズミダイズム

「売上が159億円もあるのに、利益が5000万円というのは収益性が低いのではないか?」という鋭い質問が出ると、泉田氏は社会の構造変化を交えてその意義を解説しました。

「課金して好きな時に好きなコンテンツ見るっていうカルチャーが当たり前になってきたので、ここの採算の黒字化も成立してきてるのかなとは思います」

NetflixやDAZNのように、良質なコンテンツにお金を払うサブスクリプションの文化が日本でも定着したことで、ABEMAのビジネスモデルが浸透しつつあります。

「メディア事業がしっかり黒字化してきたっていうのはすごいポジティブだと思ってて、それって構造的なものだからゲームのようなブレもない」

ゲーム事業のような激しいボラティリティを持たず、毎月安定して収益が積み上がるストック型のメディア事業が黒字化したことは、サイバーエージェントの全社業績の安定化に向けて非常に大きな一歩だと泉田氏は評価しています。

【元機関投資家が動画で解説】サイバーエージェント、20年越しの悲願であるメディア事業(ABEMA)の黒字化

4. 祖業である広告事業に迫る「AIの脅威」

一方で、手放しで喜べない事業もあります。それが祖業である「インターネット広告事業」です。

第1四半期の広告事業は、大型顧客1社の離脱という影響もあり、売上高が前年同期比2.7%減、営業利益が27.2%減と苦戦を強いられました。

ネット上の掲示板などでもこの減収減益を心配する声が多いとインタビュワーが伝えると、泉田氏はより根本的な「事業構造のリスク」について言及しました。

「例えばもう自分たちでAIでワークを設計して、運用も社内でできる時代になってくると、広告代理店に発注して運用するっていうことでもなくなってくると思う」

これまでインターネット広告の運用は、専門知識を持った人材が細かく調整を行う必要があり、そこに広告代理店の存在意義がありました。

サイバーエージェント社内でも、広告事業にはゲーム事業の次に多くの人員が配置されています。

しかし生成AIの急速な進化により、自社内でも簡単にAIを使って広告運用を自動化できる時代が近づいています。

「人の手が多く必要なビジネスモデル」という労働集約型である広告代理事業において、AIによる自動化が進めば進むほど、多くの人員の固定費が経営の重荷になる可能性があると泉田氏は警鐘を鳴らします。

サイバーエージェントの3事業の構造と展望を解説する泉田氏4/5

サイバーエージェントの3事業の構造と展望を解説する泉田氏

出所:イズミダイズム

「世の中の構造変化がもうぎゅっと寄せ集まってる感じ」と泉田氏が表現するように、サイバーエージェントの現在の姿は、AIの台頭、テレビからネットへの移行、エンタメの力といった現代のビジネストレンドがすべて詰め込まれた縮図と言えるでしょう。

【元機関投資家が動画で解説】サイバーエージェント、20年越しの悲願であるメディア事業(ABEMA)の黒字化

5. まとめ:サイバーエージェントが描く中長期ビジョン

サイバーエージェントが描く、中長期的な利益構成のイメージについて解説しました。

会社が目指しているのは、

  • インターネット広告事業が手堅く安定成長を続けること
  • 長年投資してきたメディア&IP事業が新たな収益の柱として大きく貢献すること
  • そこにゲーム事業がボラティリティを伴いながらも上乗せしていくこと

という「3本柱」の姿です。

泉田氏は、「AIに仕事を奪われるリスクを抱える」広告事業の動向には注意が必要だ」としつつも、メディア事業(ABEMA)の黒字化によって、会社が描く中長期ビジョンの実現性が大きく高まったと評価しています。

藤田前社長から新社長へのトップ交代も、この「メディア事業の黒字化という素地ができたタイミング」だからこそ実現したのではないかと推測していました。

サイバーエージェントが今後、AIの波をどう乗りこなし、メディア企業としての確固たる地位を築いていくのか。投資家のみならず、ビジネスパーソンにとっても目が離せない企業と言えそうです。

6. イズミダイズムとは

イズミダイズムは、元機関投資家である泉田良輔の個人YouTubeチャンネルです。プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。

新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。

教科書的な知識だけでなく、プロの実体験に基づいた分析を通じて、ビジネスパーソンや個人投資家に役立てていただけるコンテンツをお届けしています。

元機関投資家 泉田良輔のシテンで語る金融と経済の今5/5

出所:Youtubeチャンネル「イズミダイズム」

参考資料

※リンクは記事作成時点のものです。