新年度になり、4月からは退職して年金生活を始めている人もいるのではないでしょうか。年金収入は現役時代の給与に比べて金額が少ない傾向にあるため、より一層家計の管理の仕方が重要になります。

一方、年金収入は給与に比べて少ない分、住民税が非課税になる可能性も高まります。住民税が非課税になると、税負担がなくなり、社会保険料の軽減や医療費の自己負担限度額の低下といった恩恵が受けられます。

住民税の課税状況を判定する際は「控除」や「扶養」の概念が重要です。この記事では、住民税が非課税になる年金収入額や、控除・扶養の仕組みを解説します。

1. 【65歳以上】住民税が非課税になる年金収入はいくら?

住民税が非課税になる年金収入は、住んでいる自治体や世帯構成によって変わります。東京23区の場合、住民税が非課税になる年金収入は以下のとおりです。

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住民税が非課税になる年金収入について

出所:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」東京都主税局「個人住民税」をもとに筆者作成

単身世帯:155万円まで(月額約12万9000円まで)

  • 公的年金等控除:110万円(65歳以上)
  • 東京23区の住民税非課税基準:45万円

夫婦世帯:211万円まで(月額約17万5000円まで、配偶者は月額約12万9000円まで)

  • 公的年金等控除:110万円(65歳以上)
  • 東京23区の住民税非課税基準:(35万円×2)+31万円=101万円

※配偶者の年金収入は155万円以下であること

中核市のような地方都市や、その他の地域に住む人は、基準額がさらに低くなります。

単身世帯の場合、年間で155万円、月額約12万9000円までの年金収入であれば、住民税はかかりません。夫婦世帯はさらに基準額が上がり、年間で211万円、月額約17万5000円までの年金収入であれば、住民税は非課税です。

上記の金額が基準となる理由のひとつが、年金に対する所得控除です。控除については、次章で解説します。

2. 知っておきたい「控除」の基本

住民税を計算する際は、控除についての理解が欠かせません。住民税は、前年の所得をもとに算出します。この所得を計算する際に用いるのが、控除という仕組みです。

所得は、収入金額から各種控除額を差し引いて計算します。年金収入に対して適用されるのは「公的年金等控除」です。65歳以上の場合、公的年金等控除として最低でも110万円の控除が適用されます。給与所得に対する控除(給与所得控除)の最低額が65万円ですから、年金収入に対する控除額は比較的大きいといえるでしょう。

公的年金等に係る雑所得の速算表2/2

公的年金等に係る雑所得の速算表

出所:国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」

単身世帯は所得45万円、夫婦世帯は所得101万円以下でなければ、住民税が非課税になりません。しかし、上記のような控除があるおかげで、実質的に年収155万円または211万円までは、住民税がかからなくなるのです。

次章では、住民税の課税状況を判断する際の扶養の考え方について解説します。

3. 非課税の判断基準に影響する「扶養」の基本

単身世帯の住民税が非課税になる年金収入は155万円ですが、夫婦世帯の場合は211万円です。金額に差が出る要因が「同一生計配偶者や扶養親族の存在」です。養うべき家族がいる人は、生活により多くのお金が必要になるため、税制上一定の配慮がされます。

東京23区の場合、同一生計配偶者が1人いると、個人の住民税が非課税になる合計所得金額の限度額は「35万円×2+31万円」で、101万円になります。養う家族が増えれば、非課税になる基準はさらに上昇する仕組みです。つまり、親族を扶養に入れることで、住民税が非課税になる可能性は高まるのです。

ただし、同一生計配偶者や扶養親族として認められるには、生計をともにしていることや、家族自身の収入が一定額以下であることなど、所定の要件を満たす必要があります。年金収入の場合、155万円以下であれば、本人・配偶者ともに個人の住民税が非課税になります。本人の年金収入が211万円以下でも、配偶者の収入が155万円を超えてしまうと、世帯全員が非課税となる「住民税非課税世帯」の条件からは外れてしまうため、注意しましょう。

次章では、本人の年金が少なくても非課税世帯にならないケースについて解説します。

4. 本人の年金が少なくても「住民税非課税世帯」にならないケースとは?

本人の年金収入が上記の要件を満たしており、個人の住民税が非課税(0円)であっても、同居している家族に住民税が課税されている場合、世帯としては「住民税課税世帯」と判断されます。

たとえば、働いている子どもと同居しており、子どもに住民税が課税されている場合などです。この場合、本人の住民税はかかりませんが、「住民税非課税世帯」を対象とした医療費の自己負担限度額の軽減や社会保険料の軽減・減免などは受けられません。

世帯を自身と子どもの2つに分ける(世帯分離)ことで非課税世帯となることもありますが、子どもが会社で家族手当などをもらっている際は打ち切られるなどのデメリットも生じます。

また、年金以外の収入がある場合は、たとえ年金収入が上記の要件を満たしていても、住民税が課税される可能性があります。働きながら年金を受け取っている人や、不動産を貸して家賃収入を得ている人は、非課税世帯になるのは難しいと考えておきましょう。

5. まとめ

東京23区のような都市部で、65歳以上の人の住民税が0円になる基準は、単身世帯が年金収入155万円、夫婦世帯が年金収入211万円です。最低でも110万円が収入から差し引かれる「公的年金等控除」や、同一生計配偶者や扶養親族の存在による優遇により、上記の金額となります。ただし、本人の住民税が0円でも、世帯に住民税の課税者がいる場合などは「住民税非課税世帯」の扱いにはならず、多くの優遇措置が受けられなくなるため、注意が必要です。

65歳から始まる年金生活に向けて、ねんきん定期便やマイナポータルなどで、今一度自分の年金受給額や想定受給額を確かめておきましょう。

参考資料

石上 ユウキ