3. 業績を直撃した「米国追加関税」の脅威
アメリカ市場での成功により成長を遂げてきたスバルですが、直近の決算ではその「アメリカ偏重」のビジネスモデルが大きな仇となってしまいました。
2026年3月期 第3四半期累計の決算短信を見ると、売上高は3兆5190億円(前期比0.5%減)と、ほぼ前年並みを維持しています。しかし、本業の儲けを示す「営業利益」は663億円となり、前期の3692億円からなんと82.0%も激減してしまったのです。
売上が落ちていないのに、なぜ利益だけが吹き飛んでしまったのでしょうか。
泉田氏は、決算説明会資料の「ウォーターフォールチャート(利益の増減要因を滝のように階段状で示したグラフ)」を用いて、その理由を明確に解説しました。
泉田氏の解説によれば、前期から利益が約3000億円減少した最大の理由は「事業環境変化」によるマイナス2607億円です。
そして、その事業環境変化の内訳を見ると、「米国追加関税影響」だけで2166億円ものマイナスを生み出していることが分かります。つまり、アメリカ政府による関税の引き上げが、スバルの利益を丸ごと飲み込んでしまったのです。
なぜスバルは、これほどまでに関税の影響を強く受けてしまうのでしょうか。その背景には、スバルの「生産体制の構造的課題」があります。
スバルの通期見通しを見ると、海外での販売台数は72.7万台を見込んでいます。
しかし、アメリカ現地での生産台数は34.5万台にとどまっており、全体の生産台数94.6万台のうち、過半数の60万台は日本国内で生産しています。
つまり、スバルはアメリカで売るための車を日本で大量に作り、海を渡って輸出しているのです。
現地で作って現地で売る分には関税はかかりませんが、日本から輸出する半分以上の車に対して重い追加関税が課せられたため、これほどの致命傷を負ってしまいました。
泉田氏はこの厳しい現状について、次のように指摘します。
「グローバルで展開してると、一国の国や地域にベットして事業してることのリスク、特に消費大国として一番大きなアメリカで商売してることのリスクっていう風にはなっちゃったよね」
特定の大規模市場に依存することは、調子が良い時は莫大な利益をもたらしますが、政治的要因や制度変更が起きた際には、企業の屋台骨を揺るがす強烈なリスクに豹変するということを、今回の決算は如実に物語っています。
【動画で解説】【図で解説】スバルの主戦場、実は「アメリカ」だった
著者
金融・経済YouTubeチャンネル「イズミダイズム」
「イズミダイズム」は、株式会社モニクルリサーチが運営する金融・経済YouTubeチャンネルです。フィデリティ投信や日本生命でポートフォリオマネージャーや証券アナリストとしての勤務経験のある元機関投資家の泉田良輔が、プロの視点で金融や経済に関する様々なニュースの解説や、資産形成に役立つトピックをお届けします。新NISAの開始やインフレを背景に、個人の資産運用への関心が高まる中、機関投資家と個人投資家の「視点の違い」や、経済ニュースの裏側にある「構造」をロジカルに解説します。(最新更新日:2026年1月30日)
監修者
株式会社モニクルリサーチ
代表取締役/日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)
株式会社モニクルリサーチ代表取締役。その他に株式会社モニクル取締役COO、株式会社モニクルフィナンシャル取締役COOも務める。LIMO&ファイナンス編集長。東京科学大学大学院非常勤講師。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(同研究科最優秀賞受賞)
1. 経歴
2013年に株式会社ナビゲータープラットフォーム(現:株式会社モニクルリサーチ)を原田慎司(現同社取締役)らとともに共同創業。2013年に個人投資家向け金融経済メディア「Longine(ロンジン)」を立ち上げ、編集長に就任。Longineの立ち上げの経緯はBloombergにおいて「体力勝負アナリスト辞めます、元外資マン個人に長期投資指南」として掲載され大きな反響を呼ぶ。投資情報のサブスクモデルを確立する。その後、株初心者向けネットメディア「株1」、2015年にはくらしとお金の経済メディア「LIMO」の前身となる「投信1」を立ち上げる。2026年6月に専門家と実務家が情報発信をする金融経済ニュースサイト「LIMO&ファイナンス」を立ち上げ編集長に就任。
それ以前は、日本生命・国際投資部で外国株式ファンドマネージャー、フィデリティ投信・調査部や運用部にて10年に渡ってインターネット、電機(半導体・民生・産業エレクトロニクス)、機械(ロボットやセンサー企業中心)といったテクノロジーセクターの証券アナリストや中小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー(最年少で就任)として従事。
2. 専門・研究領域
慶応義塾大学商学部卒業。国際金融及びコーポレート・ガバナンスを専攻。アジア通貨危機、昭和金融恐慌などの金融パニックのメカニズムを金融政策や金融機関への規制の観点から研究。それらの内容は「昭和金融恐慌からの教訓 平成恐慌になにをどう生かすべきか」(三田商学研究学生論文集)として発表。
3. 著書
・『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資』(ダイヤモンド社)
・『テクノロジーがすべてを塗り変える産業地図』(クロスメディア・パブリッシング)
・『銀行はこれからどうなるのか』(クロスメディア・パブリッシング)
・『Google vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない』(KADOKAWA)
・『日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか』(日本経済新聞出版社)
4. 寄稿や講演他
「日経BizGate」での連載「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」や「現代ビジネス」、「東洋経済オンライン」、「プレジデント」などへの寄稿や対談も多数。対談記事例としては「【未来予想】ブロックチェーン革命が、「半沢直樹」の世界に終わりを告げる」や「【未来予想】アマゾンとビットコインが、次世代の「銀行」になる理由」(いずれもNewsPicks)、「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?」(週刊ダイヤモンド)。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、Financial TimesやThe Economist、Bloombergにおいて自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。
講演会や動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATE、日経ビジネススクール、慶應丸の内キャンパス、慶應義塾SDM、アカデミーヒルズなどでも講義を行う。またNewsPicksのNewSchoolではプロジェクトリーダーとして「本当に初心者のための資産運用」を開催。
最終更新日:2026年6月26日